有名陰陽師の末裔の俺が学校の怪談に対峙した時、メチャヤバ女子と運命的な出会いをしました。

東雲 葵

第1話 学校の怪談? 七不思議?

 俺が今どこにいるかって? 女子トイレだよ!

 いや、犯罪者扱いするなって! 学園長に頼まれたんだな、これが。

 俺の名前は安倍武彦あべたけひこ。四ツ谷学園高校の2年生だ。俺の名前から少なからず気づいてくれたかもしれないが、俺は安倍晴明という陰陽師の末裔だ。で、その大昔のじっちゃんの血が色濃く受け継がれてしまったのか、俺も生まれつき、霊媒体質とやらで霊的なものには敏感に反応できるし、その除霊なるものも低レベルなものであれば、小遣い稼ぎにやってきた。

 とはいえ、何で学校の怪談なんていうものが世の中にあるかは知らねぇが、ウチの学校の学園長が夜な夜な旧校舎の3階の女子トイレからすすりながら泣き呻くような声がするのを、旧校舎に備品を片付けに来ていた国語の犬神小夜子いぬがみさよこ先生が聞いたらしく、他の日に男性教諭も聞いたらしいが、誰も怖くてトイレを開けなかったらしい。

 いや、大の大人が怖がってるんじゃなくて、そこは開けて確認しろよ!

 先生たちはちゃんと仕事をしてほしいものだ…。

 時間はちょうど、犬神先生が音を聞いた時間帯だ。

 俺は女子トイレの入り口で周囲を見渡すようにしつつ、耳を澄ます。


「………………………」


 何も聞こえない。

 実際の音として聞こえないだけではない。

 俺が持っている聴覚は普通に音を聞くだけの人間が共通して持っている能力だけではなく、霊体が発する特殊な音域の音すら聞ける。

 しかし、その力を使っても何も聞こえない。


「うーん。何も聞こえないな…」


 俺は腰に備えた霊的な存在に攻撃可能な特殊な伸縮式警棒を手に取り、一つずつ個室を確認していく。

 手前のドアを開ける。

 中は空っぽだ。何も存在しない。敢えて、便器の中も確認する。

 トイレの花子さんと言えば、便器から這い出てくるのが王道じゃないか。

 一応、その辺の危機感を察知しながら確認していかなければ、隙をついて、霊体が攻めてくることだってあり得る。

 2つ、3つと開けていくが、どの個室にも誰も、そして何もいなかった。


「収穫なしか…」


 俺は何だか違和感を感じつつも、今日は引き上げることにした。

 それにしても、なぜいない。

 今日だけいないのか? それとも————。




 翌日、朝から学園長室に呼び出されるのはいい気分ではない。

 そもそも、俺が問題児ではないのに、放送で呼び出されてしまうと、まるで俺が問題を起こしたかのように勘違いをされるだろうが!


「で、昨日はどうでしたか?」


 学園長である山村貞子は、険しい顔をしながら、俺を睨みつけた。

 いや、俺が悪いことをしたわけではない。


「旧校舎のトイレの個室なども確認しましたけど、何もいませんでした」

「そうですか…。まあ、これから1週間は安倍くんには帰宅せずに旧校舎に泊まっていただきますので、よろしくお願いしますね」

「いや、泊まるのはちょっと話が違うような…」

「そもそも、何もなければ昨日で解決しているはずだったのに、こうなってしまったので仕方ないではありませんか…」


 いや、まあ、そりゃそうだけど…。ちょっと霊体に関して舐めてんの?

 そんな簡単に出現するわけないじゃん。

 いつでもその場にいてたら、それはそれで問題だと思うんだけれど。


「じゃあ、1週間頑張りたいと思います」


 もう、俺はこれに関して、やけくそに言ったのだった。

 だって、そりゃそうだろう。何で、一週間も旧校舎でご宿泊なんだよ!

 そもそもマジで何かでそうな雰囲気を醸し出しているボロ校舎なのに、何でそんな場所に俺が寝泊まりしなきゃなんねーんだよ。

 間違いなく、何かいるだろう。しかも、一体だけでなく複数体いそうじゃねーか。

 俺は抗議の視線を送るが、山村学園長はツイッと視線を逸らすのだった。

 このババァ…………。



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