第9話 おばんです。


「外で食事するなんていつぶりだろう。どうしよう。俺、なんだか緊張して胸がどきどきしてきた。破裂しそうだ。ああ、ルーチェ、もう駄目。ぎゅってして。絶対俺を離さないで」


 箒を操るミランダ様とその腰に掴まるあたしの隙間にセーレムが入り込み、あたしの服の中に入ってきた。あたしのお腹がセーレムで膨らむ。セーレムの気持ちはわかる。あたしも行先がわからなくて少し緊張している。一体どこに行くんだろう。それに、ミランダ様にお気に入りの飲食店があるなんて驚きだ。この人、いつも家に帰って来るからそういう所に行かないものだと思ってた。


(……あたしがご飯作って待ってるから……とかじゃ……ないよね?)


 ミランダ様の肩に頭を乗せる。


(別にそうじゃなくてもいい。……ミランダ様のお側にいられるなら、もう何でも良い)


 街の上を通る。ビルの明かりや、車のライトや、公園の街灯が光り輝いて見える。町は光に包まれている。だから夜は好き。光がより美しく見えるから。箒がどんどん地面に近付いていく。


(あ、到着かな?)


 ミランダ様が大きな公園の草むらの上に着地した。あたしの足が地面にくっつく。


「下りな」

 セーレム、出ておいで。

「何? ついたの? 俺そろそろ寝ようと思ってたのに」


 セーレムがあたしの服から出て来て、あたしの肩に乗っかり、夜風の匂いを嗅ぐ。


「ああ、綺麗な夜空。ミランダ、流石にこのまま病院行ったりしないよな?」

「残念ながらこの時間に病院は閉まってるんでね」

 離れちゃ駄目だよ。セーレム。


 ミランダ様が箒から下りて、箒を手から消した。いつものヒールで草の上を歩き出し、あたしはその後ろについて歩く。


 ミランダ様、何屋さんですか?

「……居酒屋になるのかね。魚をメインに出しててね。これがまた美味いんだよ」

 そうなんですね。

「お前も気に入るよ。多分ね」


 駅を通り、道路を歩き、そこから線路沿いで五分くらい歩いた先に魚の看板のお店があった。『おばんです。』と書かれている。ドアに貼られた硝子から中がチラッと見える。


(あ、空いてそう)


 あたしは率先してミランダ様の前に出てドアを開けた。中を覗くと、カウンター席が六席分。テーブル席が三つ設置されている小さな店だった。


「いらっしゃいませー! 何名様ですかー?」

「あ、二人と一匹……」


 あたしは黙った。カウンターから身を乗り出して覗いた――アンジェも黙った。


(え?)

「え」


 アンジェがあたしを見た。肩にいるセーレムを見た。その後ろにいる――ミランダ様を見た。


「っ」


 アンジェの目がくわっと見開かれ、杖を取り出し、カウンターから飛び込んできた。


(うわっ!)

「何しに来たの!?」


 背中に『おばんです』と書かれたTシャツを着て、腰にエプロンを巻くアンジェが杖を構えた。


「よくもその顔見せれたね!」

 ア、アンジェちゃん!

「よお。アンジェ。久しぶりぃー!」

「相変わらず能天気な猫ね! セーレム! ルーチェ、悪いけどそこ退いてくれる!? その女、今日こそ決着つけてや……」


 言いかけたアンジェが、あたしの顔を見てはっとした。


「その顔……どうしたの?」

 あ、その……。

「なんか、目腫れてる? どうしたの?」

 あの、あたし……。

「……泣いた?」


 あたしがおどおどしていると、アンジェがまた怒りをあらわにして、ミランダ様を睨みつけた。


「お前、ルーチェに何したの……!?」

 ア、アンジェちゃん!

「ミランダ・ドロレス! 私の友達に何したのよ!」

 アンジェちゃん! あの、だから!

「絶対許さない!」


 アンジェの魔力が足元から沸き起こるのを感じる。あたしの髪の毛が、アンジェの髪の毛が風で揺れた。


「水よ、忌まわしき魔女に制裁を、罪の裁きをおこしたま……!」


 アンジェの頭に大きな手が手刀打ちで降ってきた。あたしは驚いて目を飛び出し、アンジェは悲鳴を上げた。


「痛い!」

「夜は魔法禁止だって言ってるだろうが!」


 アンジェの頭を手刀打ちした男があたしとミランダ様を見て、怖い顔から笑顔になった。


「おー! ミランダちゃんじゃないか!」

「お久しぶりです」

「なんだよ。最近全然顔見せてくれなかったから寂しかったよ」

「アンジェのことがあったので、来たくても来れなかったんですよ」

「なんでえ。そんなの気にすんなよ。アンジェが勝手に騒いでるだけなんだから。さあ、入って入って。今夜は全然客来なくて暇してたんだ。丁度良かったよ」

「父さん! こんな女、店に入れなくていい……」


 再びアンジェの頭に手刀打ちが降ってきた。


「いだいっ!!」

「世話になったお師匠さんに向かってなんて態度なんだ! てめえは!」

「だ、だって、ミランダ……痛いっ!」

「先生をつけろって言ってんだよ! 先生をよぉ!! ミランダ先生様だろうがよお!!」

「……っ……!」


 アンジェが頭を押さえ、俯き、肩を震わせる。


(……あれは痛そう……)


 あたしは身を屈め、アンジェの顔を覗き込む。


 アンジェちゃん、あのね、今日あたし、ちょっと悲しい事があって、ミランダ様が美味しいもの食べようって、連れてきてくれたの。

「……」

 ここでご飯食べてもいい?

「……」

 大丈夫?


 アンジェが押さえてる頭の個所を撫でると、アンジェがあたしに寄りかかってきた。その目は涙目になっている。


「……父さんは……っ、ミランダに……甘いんだよ……!」

 さっきのは痛かったね。

「チョップしてくることないじゃん……! あれ、すごく痛いのに……!」

 よしよし。

「最悪。もう。今日に限って店の手伝いとか……もう最悪……」

 よしよし。よしよし。

「ぐすん、ぐすん……!」

「ミランダちゃん、座ってくれや」

「ええ。ありがとうございます」

「よお、セーレム。元気だったか!」

「おっちゃん久しぶりじゃん。相変わらずのハゲ頭だな」

「いいだろう? 光も反射するお天頭様御天道様(おてんとうさま)ってな! がははは! ……で、新顔だな」


 体を震わせるアンジェをなだめるあたしを見て、アンジェの父親が笑みを浮かべた。


「サイモン・ワイズだ。娘の友達かい?」

 初めまして。ルーチェ・ストピドと申します。

「ルーチェちゃん、よろしくな。ミランダちゃんに連れてこられたのか?」

 はい。

「どういう関係?」

「……弟子、です」


 ミランダ様が口角を上げ、アンジェがぱっと顔を上げた。


「ミランダ様の元で、魔法の勉強をさ、させてもらってます」

「……ルーチェ……」


 アンジェが青ざめた顔であたしの顔を見た。


「弟子に『降格』しちゃったの!?」


 あたしの肩をぐらんぐらん揺らす。


「駄目よ! あんな女! 絶対側にいたって良い事ない! すぐ辞めな! 今すぐ辞めな! あんな女から学ぶくらいなら死んだ方がまし……」


 サイモンが怖い顔で拳を鳴らした。アンジェがあたしの背中に隠れた。


「本当のことじゃん!!」

「すまねえな。ミランダちゃん。今夜はサービスするから許してやってくれや」

「ああ、大丈夫ですよ。私は全然気にしてないんで。それより前に食べた魚のフライを食べたいんですがね」

「ああ、もう、ミランダちゃんなら新鮮なやつ出してやるよ。ちょっくら待っててくれや。……アンジェ!! さっさと手拭い取ってこい!」

「嫌い……! 父さんもあの女も大嫌い……!」

(……思ったより事情が複雑そうだな……)


 カウンター席に座ってメニュー表をセーレムと眺める。魚の料理がいっぱいある。ミランダ様は煙管を吸い、サイモンは派手に魚を捌き出す。あたしはメニューを目で追う。パスタもあればラーメンもある。お茶漬けもある。トーストもある。何でもある。でも魚がメインなんだ。


「父さんが釣り好きなの。漁師仲間とかいて、そこから魚貰ったり、自分で釣って来たりして、それを捌いて料理に出してる」

 すごいね。

「毎月黒字ぎりぎりだけどね」

「アンジェ、俺にも何かくれよ。お腹空いて死にそうなんだ」

「今捌いてるから待ってて」

「ミランダちゃん、なんか飲むかい?」

「『シャイニング』頂いていいですか?」

「ミランダちゃん用に取ってあるよ。アンジェ! 入れて差し上げろ!」

「は? 魔法使って自分で入れればいいじゃん」


 サイモンが包丁をまな板の真ん中に刺して立て、静かな殺気のオーラを出した。


「わかったってば……。いちいち睨まないでよ……。うるさいなぁ……」


 アンジェが裏に回り、アイスペールに氷を詰めてやってきて、水と一緒にミランダ様の前に置き、次に氷を入れてあるグラスとシャイニングと書かれたボトルを持って戻って来る。ミランダ様の前にグラスを置き……水割りって一言も言ってないのに水割りのお酒を作っていく。ミランダ様が煙管の煙を吐いた。


「元気かい?」

「まあまあです」


 氷が音を鳴らす。


「デビューしたんだってね」

「ええ。当然の結果ですが」

「一年もかかったんだって?」

「……入学して一日でデビューできるとお思いで? 査定は一年に一回ですよ」

「入学試験があるだろう? その時に行く子は行くと思うがね。お前は行かなかったんだね」

「人数が多くて行けなかったんです。専攻したい魔法だって曖昧だったし。……いちいちうるさいな」

「大変なのはデビューしてからさ。せいぜい足元すくわれないようにね」

「貴女に言われなくてもわかってます」


 アンジェがボトルの蓋を閉めて、カウンターに置いた。


「人の心配よりも自分の心配したらどうです? 近い将来、私が貴女よりもすごい魔法使いとなってこの世界に君臨することになるので」

「はっ! 寝言は寝てから言うんだね。クソガキ」

「うるせえ。クソババア。呪われろ」

「アンジェ!」

「はいはい! 黙りますよ! 黙ればいいんでしょ!」


 アンジェがぽこぽこ怒りながらあたしの側に戻ってきた。


「ルーチェ、分からず屋の大人はほっといて私達だけで喋ろう」

 お店の手伝い良いの?

「あ、ルーチェは何か飲む?」

 ……。


 あたしはミランダ様を見た。ミランダ様が頷いた。あたしはメニュー表を見る。


 ……コーヒー牛乳……。

「持ってくるよ。氷要る?」

 ほしい。

「俺も飲みたい」

「セーレムは牛乳でしょ?」

「え、なんでわかったの!? ……はー……。やっぱり魔法使いにデビューしたら違うんだな……。アンジェ、俺は嬉しいよ。……成長したな」

「いや、セーレム、牛乳しか飲めないじゃん」


 アンジェがあたし達の飲み物を持って来た。


「はい、どうぞー」

 ありがとう。アンジェちゃん。

「セーレムはこっちね。はい」

「はあ、久しぶりの飲み物だ。俺、お腹好きすぎてストレスでこの黒い毛が白くなって白猫になるところだったよ。どれどれ。ぺろ。ああ、牛乳だ! ぺろぺろぺろぺろ!」

「いちいち大袈裟なんだから」


 あたしはグラスを持ってミランダ様に体を向けた。


 ミランダ様、頂きます。

「お疲れ。ルーチェ」


 ミランダ様がグラスを近付かせ、カチンと当てた。


(はっ! ミランダ様と乾杯しちゃった!)


 あたしはじっとグラスを見つめる。


(ミランダ様と乾杯したグラス……。これ、このまま飲んでいいのかな……? なんかすごく勿体ないな。これ、買い取って保存した方が良いかな。お守りになりそう……)

「ん? ルーチェちゃん、グラスになんか入ってるかい?」

 あ、いえ。あの、いいえ。大丈夫です。

「もうちょっとで料理出来るからな。飲みながら待っててくれや」

 あ、はい。待ってます。


 あたしは勿体ないと思いながら一口飲んだ。普通のコーヒー牛乳が口の中に広がる。美味しい。アンジェちゃんが裏から自分の分の飲み物を持って、あたしの隣に座ってきた。


「お疲れー。ルーチェ」

 あ、かんぱーい。


 アンジェとグラスを合わせた。カチン。


 アンジェちゃん、今日もお仕事あったの?

「うん。有難い事に最近毎日貰ってる」

 そっか。すごいね。……この間テレビ見たよ。

「……テレビって、あの魔法使いの特集のやつ?」


 アンジェがものすごく嫌そうな顔をした。


 うん。ミランダ様の弟子だって公表されてたやつ。

「……あれ、アーニーが口滑らせたんだよ」

 ……アーニーちゃん?

「マネジメント部の人達には言ってあったんだけど、それでも絶対口外しないでくださいってお願いしてたの。過去の話だし、今じゃ関係ないでしょ? だから黙っててくださいって。それをアーニーがししょ……あー……ミランダのファンだって言ってた依頼人がいた時に言ったの。ぽろっと。そこからマスコミに広がったみたい」

 ……悪気はなかったんだよ……。

「見てたんだ。あれ。……なんかさ、ああいうの嬉しいけど、あんまり好きじゃないのよね」

 ……。

「だって、デビューしたばっかりだよ? これからどうなるかもわからないのに注目の魔法使いなんて呼ばれるのも特集されるのも早くない? 潰れたらどうするの? 消えたらどうするの? 誰も責任取れないくせに、ああいうのしないでほしい」

 ……でも、すごいことだよ。一年でデビューしたのだって、あたしからしたら天才の何者でもない。

「私は天才じゃないよ。天才ならマネジメント部の人達に頼らなくたって仕事貰ってフリーでやってる」

 ……そうかな?

「私はミランダを三年も見てたから、デビュー出来るくらいの知識も魔法力もあるってだけ。問題はそこから。これからは自分の魔法を自分で開発しないといけない。授業もないから自分で学ばないといけない。そこら辺は、……やっぱりアーニーの方が上だよ」

 ……アーニーちゃん、滑舌綺麗だよね。早口言葉上手なんだ。

「ただのお喋りよ」

 良い子だよ。……あたしの喋り方がおかしくても、普通に会話してくれてたし、手も繋いでくれたの。

「……手繋ぐくらいなら私だって出来るし」


 アンジェがあたしの手を握った。あははは。仲良しに見えるね。


「そういえば、ルーチェ、学校祭の選抜オーディション近かったよね? いつなの?」

 ……今日だった。

「えっ、あ、……そうなんだ。どうだっ……」

 ……。

「……だからそんなに目腫れてるんだ」


 あたしが肩をすくませると、アンジェがあたしの背中を撫でた。


「ルーチェ、学校祭なんてまた来年もあるから」

 アンジェちゃんとやりたかったから。

「……私もルーチェとやりたかった。残念」

 ……去年、アーニーちゃんとイベントやって、動物の狂暴化事件で潰された話、アーニーちゃんから聞いたでしょう?

「うん」

 あの時、本当はそのイベントでこの道を諦めるつもりだったの。あたし、あの学校11年もいて、全然芽が出ないから。

「11年?」

 そう。8歳からいるの。

「……まじ?」

 うん。もう同期はいない。多分、あの学校であたし一番長い生徒なんじゃないかな? だから……才能もないし、実力も無いし、……色々揉め事とかあって、疲れちゃって、そのイベントで最後にしようと思ってた。でも、結局イベントは中途半端に終わっちゃって、辞めるにも辞められなくて、それで……マリア先生が紹介状を書いてくれたの。ちょっと気難しいけど、凄腕の魔法使いが知り合いにいるから、本気で弟子入り交渉して来なさいって。行くか行かないかは自分で決めていい。その代わり、行くなら覚悟を決めなさいって。

「……それがあれ?」


 アンジェがお酒を飲むミランダ様に指を差した。あたしはクスクス笑いながら頷く。


 本当はね、今日のオーディション受かってたら、アンジェちゃんに物申すつもりだったの。あたしはミランダ様の弟子で、悪口聞きたくないからやめてほしいって。

「いや、言うよ。嫌いだもん」

 ……そんなこと言わないで?

「言うよ。ルーチェの事は好きだけど、あいつは嫌いだもん」

 ……少しだけ聞いた。事情。

「……私はルーチェと違って魔法とは無縁の世界で生きてきて、ただ特技として使える程度だった。魔法使いになりたいって思ったから弟子入りしたのに、勉強もさせてもらえないんじゃ意味ないじゃん」

 ……でも、魔法使いになれたんだね。本当にすごい。

「当然だよ。あのままじゃ終われなかったし、この先だってそう。私、弟子の勉強を妨害するような魔女に負けるつもりなんかないもん」


 アンジェが頬を膨らませた。


「アーニーにだって負けない。誰にも負けない。すごい魔法使いになって、天下取ってやるんだから」

 ……アンジェちゃんはやりそうだね。

「やるなら徹底的にやらないと」

 ……学校祭のパフォーマンス、やっぱり参加したかったな。

「……私も、ルーチェの魔法見たかった」


 手を握り締め合う。


「ルーチェ、早くデビューしちゃいなよ。最近アーニーと二人でいるの結構きつくなってきてさ。ルーチェが間にいるなら何とか堪えれそう」

 悪い子じゃないんだよ。ちょっと明るすぎるだけで。

「あのキンキン声だけでもどうにかならないかな」

 あたしは好きだけどな。アーニーちゃんの声聞いてると落ち着くんだ。

「アーニーにそんなこと言ったらすぐ調子乗るよ」

 うふふ。

「あ、ルーチェ、この間白猫の写真撮ったの。見る?」

 あ、見たい。……わあー。可愛い。

「セーレムも良いけど白猫もなかなかでしょう?」

 アンジェちゃん、白猫好きだよね。

「うん。白猫好き。可愛いじゃん」



「……ミランダちゃん、うちの娘が悪い事したな」

「デビュー出来たのはあの子の実力です」

「いや、あんたのお陰だよ。弟子辞めてから随分とふさぎ込んでたけど、馬鹿みたいに自分で色んな事調べ始めるようになったからさ」

「……そうですか」

「今度はあの子かい?」

「……アンジェとは違う意味で厄介な子ですよ。脳に障害を持ってましてね」

「へえ、そうかい。……そんな風には見えないけどな」

「ADHDと吃音症だそうです」

「……苦労するな」

「他の子よりもだいぶ大変だと思います。ですけど、度胸だけはあるみたいなんで」

「へっ! 度胸があれば大丈夫だな」

「私もそう思います」

「ま、なんかあったらまた食べに来てくれや。サービスするよ」

「ありがとうございます。ぜひ来させて頂きますよ。ここの料理は本当に美味しいのでね」

「へへっ。ありがとうな」

「ビビさんと……ダニエル君にもよろしくお伝えください」

「あんたが来たって聞いたら喜ぶぜ。……さあ! お待たせ! 魚フライ上がり! ルーチェちゃん、食べねえ!」

 ひゃっ、大きい! 何これ!

「父さん、でかすぎない?」

「サービスだよ! ぐいっと食べてくれや! ……セーレム! これはお前のな!」

「わあ! すげぇー! サンキュー! おっちゃん!」


 セーレムが綺麗に揃えられた刺身を豪勢に噛みついた。 


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