第二十三話 犯人

「お勤めご苦労様でございます旦那様。ささ、荷物はこちらに」


 俺がフリーズしていると桃がやってきてテキパキと俺の荷物を受け取ってくれる。

 いやそれはいいのだが誰か説明を……。


「疲れてるかキクチィー! あたしが肩揉んでやるよー!」


 間髪入れず雷子が凝り固まった俺の肩を揉んでくれる。

 あっ、そこそこ、気持ちいい、ああ~疲れが取れる~。


「じゃねえよ! いったい何なんだこれは!」


「おっ、やっと突っ込んだっすね」


 危うく流されるとこだったがそうはいかねえ!


「なんだこの城壁は! いったい誰が作ったんだ!?」


 俺がそうたずねると紅蓮、氷雨、緑の3人がスッと出てくる。3人とも何故か得意げだ。いや褒めねえよ?


「城壁を担当した氷雨です。マスターのご要望通り最強の防衛設備を作りました。城壁に用いた石は最高品質のものを使い、竜の突進にも耐えうる防御能力を有しています」


 有しています(キリッ)じゃねえよ。

 完全にやりすぎだろこれ。


「防衛兵器を担当した紅蓮だ。この城壁には様々な防衛兵器が内蔵されている。いつ戦争が起きても直ぐに戦えるぜ!」


 は? 戦争? そんなことするわけねえだろ!

 兵器なんてぶっそうなもん作ってんじゃねえ!


「最後にこの僕、緑が総設計を担当しました。この城壁はスライムが最大限の力を発揮できるよう設計されています。こと防衛能力だけで言ったら王国にも引けを取らないと言えるでしょう」


 なんかもう聞いてるだけで疲れた……。

 こいつらはなんてものを作ったんだ。


 確かに防衛設備を作れとは頼んだ。

 しかし誰がこんな要塞のような物を作れと言った? こいつらに自重という言葉はないのだろうか……。


 しかし今更叱りつけても仕方ない。

 ここまで作った物を壊すわけにもいかないしな。


 ……何より、こいつらが『褒めて褒めて!』と目で訴えて来ているので叱りつける気にもならない。

 はあ、後でやんわりこんな厳重にしなくてもいいと教えてやろう。子育ては難しいな。


「……よく、やってくれたな。俺は、嬉しい、ぞ」


 しどろもどろになりながらも俺が礼を言うと、『ウオオオォォッ!!』とスライム達から歓声が上がる。

 中には達成感からか泣き出す者までいる始末。泣きたいのは俺だよ……。


 俺は心の中で涙を流しながら今後どう彼らを教育していくか思い悩むのだった。

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