第十八話 利益
「はっはっはっは!! 残念だったな! どうやら運はこちらに味方したようだな!」
高らかに笑いこちらを馬鹿にするジーマ。
悔しいが奴の言う通りだ。
もう何の手も思いつかない。
「キクチさん、ちょっといいっすか」
そんな中ロバートが小声で話しかけてくる。
「なんだ?」
「ブルムさんがここに来た理由、それが面白そうだったからだけとは到底思えないっす。きっとブルムさんは俺たちを試しているんすよ」
「試す? いったい何を」
「商人にとって最も重要なのはその人物が『利益になるか』っす。今の俺たちは残念ながらブルムさんにとって『利益の無い』存在っす。だから何とかしてジーマ達ガラン商会の連中より『利益のある』存在になれば守ってくれるはずっす」
利益になる、ねえ。
ようするに俺が爺さんにとってあいつらより役に立つと思わせれば良いんだな。
「おい! 何こそこそ話してやがる!」
しまった、俺とロバートが話してる事に気づいたジーマが騒ぎ出しやがった。
俺はあいつらに何されようと痛くも痒くもないがロバートは別だ。どうにかして突破口を開く時間を稼がなくては。俺がそう考えていると、なぜかブルムの爺さんが俺たちを庇うようにジーマの前に出てくる。
「何の真似だ? あんたには関係ないだろうが」
「ほほ、もう少しで面白いものが見れるかもしれなくてな。少し待ってもらおうか」
「なにわけわかんねえ事言ってやがる! とっととそこを退け!」
怒鳴り散らすジーマだが、手を出す様子は無い。
それほどまでに目の前にいる人物は絶対的な力を持っているんだろう。
それにしても爺さんの態度が気になるな。
俺たちを助けたいのか助けたくないのかよく分からん。
「キクチさんはブルムさんと何を話したんすか? 若しかしたらそこにヒントがあるかもしれないっす」
「えーと確か……」
俺は少し前の事を思い出す。
そうだ、人の見方を教わったんだ。あれがヒントになっているのか?
俺は試しに『鷹の目』でジーマ達をよく観察してみる。
彼らをよく観察していると、あることに気づいた。
威勢良く凄んでいる彼らだが少し頬がこけ、足元もおぼつかない感じだ。
もしかして、ロクに食べれてないのか?
事情に詳しそうな奴に聞いてみるか。
「ミギマさん、ガレオ商会は儲かってないのですか?」
「……そういえば最近ガレオ商会は大口の取引先を失くしたという噂を聞きました。そのせいで下っ端達は他の商会に怒鳴り散らすちょっかいをかけて小遣い稼ぎをしていると」
そらはいい情報だ。
つまりガレオ商会は今それほど商国にとって価値のある商会ではないということだ。
ならばここで何か一つ、俺の持っているもので商国が喜びそうな物があれば状況は変わるはず。
考えろ。そして思い出すんだ。
今商国が欲しい物、そして俺の切れるカードを。
そして長い思考の末、俺はついに一つの答えにたどり着く。
これなら……これならこの状況を打破出来るかもしれない!
俺は手のひらに四角いスライム『
「その顔、どうやら何か思いついたようじゃの」
爺さんは俺の顔を見るやそう言う。
まるで心の中を見透かされているみたいだ。さすが凄腕の商人だな。
「ああ。これが俺の切れる最強のカードだ!」
俺はそう叫びストレージスライムに体内から物を出させる。
スライムからにゅぷりと出てきたのは巨大な緑色の鎧のような物。緑色の鎧は次々とスライムから出てきて最終的に小さな山くらいの大きさに積み重なる。
「な、何だこれは!?」
「ほう……これらて……!」
ジーマは何だこれと驚いているが、爺さんはコレの正体に思い当たる節があるようだ。
さすがだな。
「こ、これは何すかキクチさん!?」
ロバートが驚き尋ねてくる。
そういえばロバートにコレの事言ってなかったな。ならば教えてやろう。
「これはA級モンスター、ギガマンティスの甲殻と鎌だ。ギガマンティスの甲殻は最高級の鎧の素材になり、鎌は鉄より鋭い剣になる。つまりコレは最高品質の武具素材の山ということだ!」
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