私、高校に行きたい
蝶子ママに東北書店によく連れて行ってもらった。
「小論文?」
「そう」
参考書を何冊か棚から取ってくれた。
「無理だよ。中学校全然行ってないんだよ。高校なんて行ける訳ないよ。それに私、読み書きが苦手だもの。簡単な計算問題すら出来ないんだよ」
「女子大学の付属高校があるじゃない。今からでも間に合うわ」
うすい通りは華やかなクリスマスのイルミネーション一色に染まっていた。
クリスマスまであと九日。
藍色に染まりはじめた空を見上げると、一番星がキラキラと瞬いていた。
中学校に電話をすると、たらい回しにされて、担任だという男性教諭に繋がるまで三分以上待たされた。
「えぇ~~高校行くの?聞いてないよ」
開口一番。予想した通り迷惑そうな声が返ってきた。
「私、付属高校に行きたいです」
「親御さんからは就職させるって聞いてるけど」
「自分の進路くらい自分で決められます。内申書もなにも書かなくていいです。どうせ書くことないでしょう。イジメで不登校になったって正直に書かないでしょう。どうせまた嘘付くでしょう。みんな大事なのは自分だもの。生徒なんてどうでもいいんでしょう」
一方的に電話を切った。言いたいことが言えてスッキリした。
「よく言えたわね。偉いわね」
蝶子ママが頭をぐりぐりと撫でてくれた。
「ありがとう蝶子ママ」
「さぁーて、何か甘いもの食べて帰ろう」
「はい」
デートらしく腕を組んで蝶子ママ行き付けのうすいデパートのなかにある喫茶店へと向かった。
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