プロローグ
プロローグ
どうも初めまして。
僕は特待生として迎えられたので高校・大学・大学院迄は無試験で入学出来ました。受験戦争とは無縁だったので杏果ちゃんと数え切れない程の思い出を作ることが出来ました。
ついこの前なんて、映画館に行ったら、大柄な小学生と間違えられ、本来は中学生以下の子だけが対象の入場者プレゼントを貰いました。その際“従業員に恥をかかせない様にするのも武士道”と本人は言っていました。しかし僕は見てしまったんです。あの後、客席で途轍もなく悪い顔をしている杏果ちゃんを。だけど僕は何も言えませんでした。どうしてかって? 自分から小学生と言ったのなら勿論僕だって叱りますとも。ですが、あの時は、従業員が勝手に勘違いしたんです。一応“今回は従業員が間違えたから仕方ないけど、もし騙し取ったらお尻ペンペンするよ”と言ったんですが杏果ちゃんはこれを本気にしたのか冗談と解釈したのか……。後何年かしたら、これも笑い話になる時が来るんでしょうね。
あぁ、忘れるところだった。1つ、洒落にならない事案が有ります。数年前、僕と杏果ちゃんは二人で遊園地に行きました。そこで、杏果ちゃんから、ライドマシンに乗るタイプの和風のお化け屋敷に入ろうと誘われました。凄まじく嫌な予感を覚えながらも僕は従いました。しかし案の定、最初に現れたのっぺら坊を見ただけで小さい子の様に大泣きしました。苦笑しながらも、杏果ちゃんは僕から離れずに居てくれました。今思い返してみても、全く以て情けないやら醜いやら……。僕は昔から筋金入りのお化け恐怖症で、絵本を読んでも酷く大泣きした程でした。杏果ちゃんは反対にそう云うのが三度の飯より大好きで、ちっとも怖がりません。唯一、この点に限っては正反対です。何でなんでしょうね。僕には到底理解も真似も出来ません。尊重はしますが。
僕と出会う少し前、杏果ちゃんは寛司さん・英子さんと沖縄へ何度か旅行して、心の傷が痛まない様にしたそうです。所々にウチナーグチが出る理由はこれだったんですね。僕と出会って以降も何度か家族ぐるみで沖縄へ旅行に行きましたが、現地の人達は、小さい女の子がウチナーグチ話しているのを聞いてほっこりしています。
まぁ、過程は如何あれ、僕にとって杏果ちゃんは救い主です。御蔭で自分に自信が持てたし、人前で歌うのが無性に楽しくて楽しくて堪りません。寧ろ、オーディエンスが少ないと張り合いが無いです。剰え、受験戦争を免れたんですから人生イージーモードですよ。尤も、女性と間違えられる程高い声は今もそのままなんですが。
今だから気楽に話せるんですが、僕が杏果ちゃんと初めて出会った日、こんな事が有りましてね……
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