配信冒険者、貴族の家を追放される


 ~~~~~~~~~


『リュートさん、

 今日は本当にありがとうございました!

 一緒にクエストに参加して頂いて。』


 ダンジョンの前で別れる時、

 パーティーのリーダーがお礼を言ってきた。


『とんでもない。

 こちらこそお世話になりました。

 おかげで良い動画が撮れましたし。』

 と、俺も彼らにお礼を返す。


 俺はリュート。

 彼ら三人と同じ冒険者だ。


 ランクは俺と彼らのうち二人がB級、

 リーダーの戦士がA級だ。


 お互い面識はない。


 それが今日一日、

 臨時で組んでみたというわけだ。


 それが大成功。


 緊張感のあるダンジョン探索から、

 フロアボスとの死闘・・・、勝利!


 クリアアイテムとして出現したレアアイテムの獲得ゲット


 それが今回の成果であり、

 俺が配信している動画の内容だ。


 俺は冒険中、常にその内容を録画セーブし、

 全世界に向けて配信しているのだ。


 世界の配信技術が進歩してから、

 そういう冒険者はかなり増えた。


 動画を観てくれた人たちから、

 応援メッセージが届くのが嬉しい。


 中には、お金をくれたりするファンもいて、

 それで食っていけている人気冒険者もいるほどだ。


 そう、今日組んだ彼らのように・・・。


 彼らのおかげで、

 俺の今日の動画はいつもより反響がすごかった。


『リュートさん、

 またギルドで!』


『はい、ではまた。

 おやすみなさい!』


 そう言って俺たちは別れた。


(俺も、負けていられないな・・・)



 ――そう決意を新たにした日の朝、

 俺は家を追放された・・・。



 ~~~~~~~~~


「出ていけ」

 父は書斎で、俺にそう言った。


「冒険者などという下らんものにうつつを抜かしているお前を、

 これ以上この家に置いておくわけにはいかん」


「そんな・・・、よく知りもしないのに下らないなんて・・・」

 と、俺は抗議するが、

 父は無視して続けた。


「お前が、ハルトと同じ学院に行けなかった事は仕方ない。

 二年かけて勉強して、それでも合格できなかったのだから、

 これはもう諦めるしかない・・・。

 だが、その後お前は何をしていた?

 何をするでもなく、自室で無駄に日々を過ごし、

 ある日急にやる気になったと思ったら、

 冒険者という訳のわからんものになるなどと・・・」


 俺の家は、それなりの富豪かねもちだ。


 その当主あるじであり、貴族かちぐみの父から見れば、

 冒険者など烏合の衆にしか見えないのだろうが・・・。


「でも父さん、冒険者は今や世界中で認知されているんだよ。

 この国だけでなく、様々な国の冒険者が日々クエストに明け暮れているんだ。

 魔物の討伐に、遺跡の探索、アイテムの錬成など未知の探求がいっぱいで、

 本当にやりがいがあるんだよ。

 それと冒険者にはランクがあって、B級以上の冒険者はまだ、たった数百人しかいないんだ。

 俺はその中の一人で、近々A級にランクアップ確実とも言われているんだよ!」


 俺はただ父に、冒険者のすばらしさと自分の頑張りを知ってもらいたかった。


 だから必死で説得した。


 だが、父は一言、


「もういい」

 と、言った後、


「この恥さらしが・・・、出ていけ」

 そう言って、俺を書斎から追い出した。


「・・・くそっ!」

 扉の前で悪態をついた俺は、

 部屋に戻り、家を出る準備をした。


 もう、父には何を言っても無駄だろう。


(だったら、望み通りにしてやるさ・・・!)


 必要なものをカバンに詰めると、

 俺は自室を後にした。


 玄関に母と、兄のハルトがいた。


「待ちなさい、リュート。

 もう一度よく、自分の間違いを考えなおしてみなさい。

 ちゃんと反省して謝れば、きっと許してくれるはずよ」

 母はそう言って、俺に父へ謝罪するよう説得してきた。


 もちろん俺は拒否した。


「悪いけど、冒険者を馬鹿にするあの人とは、

 話す事はないよ・・・」

 そう言うと、母は信じられないといった顔になった。


 そばにいた兄のハルトが馬鹿にしたように言った。


「冒険者なんて・・・、本気で言っているのかリュート?

 このまま家を出たら、お前なんか野垂れ死にするのがオチだぞ」


 「・・・」

 俺は返事をする気も起きず、

 無視してそのまま家を出た。



 ――これで、俺は自由だ。


 この先、どうなるかは分からない。


 ハルトが言ったように、

 野垂れ死にするかもしれない。


 だけど最後まで、

 冒険者らしく生きよう・・・!


 ――はるか先の山から昇る朝日を浴びながら、

 俺はそう誓った・・・。



【次回の配信に続く】



 _________________________


『君』は読み進める……。


(思った通り、まずは主人公の追放か。


『富豪』と書いて『かねもち』と読ませたり、

『貴族』と書いて『かちぐみ』と読ませるあたり、

 作者の妙なセンスを感じるな。


 下手すると滑稽にも見えるが……。


 

 ――さて、こういう追放系では、

 主人公の追放理由や、追放側の理不尽っぷりに無理があるケースがよくあるが……。


 これはどうだろう。


 主人公からすれば、

 親は彼を自分たちの枠組みにはめて評価し、

 それで無能の烙印を押す敵だが……。


 追放する側である親からすれば、

 主人公は道楽に興ずるごくつぶしに見えるわけで……。


 ちょっと、追放側へのヘイトが弱いかな。


 ま、主人公の兄は嫌な奴だけど……。


 ――とりあえず、続きを読もう。


 そして、読むならばこのまま画面をスクロールして、

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