読了後の『君』の夜2
🌙 🏠 📱
「なめんな……」
読了後、『君』はつぶやいた。
あとがきを見てはっきりと分かった。
作者のジョセフィーネ・剛田……、
こいつは男だ……。
それもおそらく中年の!
でなければ、こんな寒いあとがきなんか書くわけがない。
何が『感謝感激雨あられ』だ。
何が『ばっはは~い』だ!
何が『ジョセフィーネ・剛田』だ!!
P・Nから勝手に、作者は女の子(しかも可愛い!)と妄想していた『君』は激しく憤った。
ふざけんな、こっちは貴重な睡眠時間を削って、最後まで読んでやったんだぞ。
明日だって……いや、今日だって仕事に行かなきゃだというのに……、
自分は中年オヤジの駄文に夜通し付き合わされたのか!
『君』の作者に対する激しい怒り……、
それはここまでの妄想に対する恥ずかしさからくるものだった。
作者が女の子だと妄想する『君』……。
各話ごとに、自分の年も考えずくだけた文体のコメントを送る『君』……。
そのうち、作者(女の子)から可愛らしい返信コメントをもらえるのでは……と、
ひそかに期待した『君』……。
そのうち作者(女の子)から、
「一度お会いできませんか?」
なんていう連絡が来て、待ち合わせ場所にはちょっと気弱な感じの文学系少女が……。
何度か会っている内に、
「親と喧嘩してしまったんです……。
だから、帰りづらくて……」
「う~ん、じゃあ今夜はウチに泊まってく?」
「いいんですか?」
「ああ、一応来客用の布団もあるし」
「わたしは……、一緒の布団でもいいですけど……」
「そう?(下心など全くないふりをしつつ)
じゃあ、とりあえず二つ敷いて、寒かったら一緒に寝ようか」
「はい……、お世話になります」
なんて展開に……、
などと閲覧そっちのけで妄想たくましくし続ける『君』……。
あとがきを見て目が覚めた『君』は、
あまりの恥ずかしさに
もはやその意識を、別の方向に向けてやり過ごすしかなかったのだ……。
(だが……、
このオチはなかなかだな。
まさか主人公たちが全員児童や成人前だったとは……。
婚約破棄してきた王子の身勝手さや、主人公の大人げなさや口の悪さも、その伏線だったというわけか。
子供ゆえの感情まかせの行動……。
てっきり、こういう作品にありがちなノリやご都合主義かと思ったら……やられたな。
文章でキャラの年齢を錯覚させる叙述トリックか。
うん、なかなかなかなか……)
と、怒りがしぼんできてしまった後は、
作品の考察をする事で必死に妄想から逃れようとする『君』……。
だが、君は逃げられない。
いいトシこいて、まるで中学生のような恥ずかしい妄想をしてしまった事実からは。
そして、そんな妄想をしてしまうほどの空虚な現実から逃避するため、
再びスマホを片手に心地よい物語を求めるであろう事実からは。
そう、
『君』はまだ……、
この沼から抜け出せない……。
【昔日の婚約破棄編 完】
________________
そして『君』は逃げられない。
最後まで読み切った作品には、
応援ボタンとスターを押して作品を評価するものだ、という自分の中にあるルールからも。
心優しい『君』は、作者のためにもそのルールから逃げられない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます