わたくし、婚約破棄されましたわ。(202308加筆)



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「フローレス!

 ぼくは君との婚約を破棄する!」


 わたくしに向かってそう怒鳴られたのは、

 婚約者のエスイクス王子でした。


 それもパーティー会場の一番目立つ場所で。

 

 せっかくの宴席ですのに、

 皆さま大騒ぎですわ。


 何のパーティーなのかは、

 わたくしも存じ上げませんが・・・。


「君は『聖女』にふさわしくない!

 だから、ぼくの婚約者にもふさわしくない!」


 どういう理屈ですの・・・。


「だからぼくは、

 真の『聖女』であるこのヒルルと結婚する!」

 そう言って王子は、隣にいた少女の肩を抱かれました。


「ああ、エスイクスさま・・・」

 と、相手のはかなげなシナを作っておりますし。


 ヒルル・・・、

 わたくしや王子の通う学院に同じく席を置いている子・・・。


 そして、確か先日大聖堂で、

 『聖女』としての『力』の内包を認められたとか。


(あら、そういえばいつでしたかこの子・・・)

 などと考えていると、

 またもや王子は声を荒げ始めました。


「先日の事もヒルルから聞いたぞ、フローレス!

 君に学院で階段から突き落とされたあげく、

 倒れて動けないところを乱暴に踏みつけられたとな!

 何てひどい奴なんだ君は‼」


「は?」


 わたくし唖然としてしまいました。


 あまりに事実・・・いえ、

 真実と違うものですから。


 ですが、この大ホールでのしかも王子さま(一応)のお言葉。


 周りの貴族の方々もわたくしに、

 疑惑や非難の眼を向け始めやがっていますわ・・・。



 ヒルルさんは自分より身分が下のわたくしが、

 王子の婚約者となった事が気に入らないのか、

 事あるごとに学院で嫌がらせをしてきました。


 わたくしの筆記用具をどこかに隠したり、

 食堂でわざと手に持った食事をわたくしにかけたり、

 わたくしが『聖女』という立場を利用して、

 自分を奴隷のように扱っているなどとデマを流したり・・・。


 あ、思い出したら少々ムカついてきましたわ・・・。



 ですが、もちろんわたくしは、

 ヒルルさんを階段から突き落としたりなどしていません。


 あれはヒルルさんが、

 わたくしを後ろから突飛ばそうとして起きた事。


 気配を察したわたくしは身をかわし、

 よけられたあの子が勝手に階段を転げ落ちた、

 というのが真実ですわ。


 ヒルルさんがそのまま動かないので、

 わたくしも急いで階段を降り、

 そばに駆け寄ったのです。


(息を・・・していませんわ!)


 わたくし急いで靴を脱ぐと、

 横たわるヒルルさんの背中に足をつけ、

 そのまま全ての『力』を使って彼女を回復させたのです。


 そう、わたくしは、


 



【つづく、ですわ】



 _________________________________


『君』は読み進める……。


(ほう、聖女の婚約破棄ものか。


 こういう場合、聖女を国から追放して、

 その結果、追放サイドに災いがふりかかる、

 というのが定石だが……。


 それにしても、足から聖なる力とは斬新だな。


 女視点の物語という事は、作者は女子か?


 PNもジョセフィーネだし、きっとそうだろう。


 そうか、女子か……。


 

 ――とりあえず、

『応援ボタン』や『コメント』で評価してやろう。


 それが、読み手の礼儀というものだ……)















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る