願ったり、叶わなかったり。

たなばた

初めまして

第1話 入学式

「よし、今日は準備万端だわ!」

 木吉裕柊きよしゆうひは初々しい気持ちと共に私立笠原高校しりつかさはらこうこうの制服に袖を通した。


最近の量産型男子高校生のようなマッシュヘアの寝癖をしっかりと直し、いつもは付けないであろうちょっと高めのヘアオイルを付ける。鬱陶しそうにスカートの裾を2折りし、いってきます、と親とウチのデブ猫に向かってさけんだ。


 裕柊がここ、笠原高校を選んだ理由はただ1つ。陸上競技の名門校である笠原で、レベルの高い仲間を持ち、タイムを上げることだ。さすが名門校だけあって、入学前も何度か練習があり、参加させてもらったりしていた。


今年の1年生はすごい奴らばかり集めたらしい。練習に行く度、何度か顔を合わせていたので、何となくは新入生の顔ぶれは分かっていた。

 

笠原高校の、いかにも私立高校っぽい大きな門を、こんな大きくしてお金かけるとこ違うだろと裕柊は苦笑しながらくぐった。ふと、後ろから


「あ、ねえねえ、あなた陸上部でしょ!」


 と肩を叩かれた。振り向くと、茶髪ボブでまつ毛バサバサな大きい目が裕柊を見ていた。間違いなくその体つきと、立ち姿は陸上部である。しかも大会で見たことあるし、この子。裕柊は持ち前のフレンドリーさで


「そう!陸上部だよね?名前なんて言うの?」


 と聞いた。茶髪おめめくりくりボブちゃんは


「私は田代仁那たしろにな、になって呼んで!」

 

と裕柊に負けない明るい声で返事が返ってきた。直感的にこの子私と同じようなタイプだ、と感じとった。


 同じ、2組になった仁那と裕柊は明るい性格のおかげですぐにクラスの友達が増えた。


髪の毛が短いせいか、(いや絶対そう)裕柊は「男子かと思った〜」とすぐ言われる。もう小さい頃からこれだから、慣れたもんなんだけど。


 帰りのホームルームが終わり、待ちに待った部活の時間が来た。


正直、何人かとLINEも交換し入学初日のノルマは達成かなとニヤニヤしていた裕柊だが、いやいや、私は部活をするためにここに入ってきたんだ、と自分に喝を入れ、仁那と一緒に陸上部の活動場所、総合グラウンドに向かった。

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