『童話・動物』 それぞれの翼

「いっしょに行こう、ぼくたちはなかまなんだ」

 うさぎは2つの耳をゆらして、ふり返った。


「うん、つらいけどがんばるよ」

 ペンギンは両手を広げて、よちよちとあるく。


「ごめんよ、おそくて……」

 小鳥はあやまりながら、ピョンピョンとはねる。

 

 3羽はとおくに見える大きな木を目ざしていた。そこにはまっ赤な実がついていて、いつもみんな気になっていた。


「じゃぁ、たべにいこうよ」

 

 うさぎのさそいに2羽はムリだとこぼす。


「ボクじゃ、キミの足手まといになっちゃうよ」

「うん、僕はキミみたいに早く歩けないんだ」

 

 だけど、うさぎは気にしないよと笑った。


「ぼくはみんなといっしょがいいんだ」

 

 そうして、3羽は道を進んでいた。

 でこぼこな地面をうさぎはかんたんにとんでいくも、ペンギンと小鳥にはたいへんだ。

 そんな2羽をうさぎは先に行かずに待っている。

 うさぎのもとにペンギンがやってきて、こんどは2羽で小鳥をまつ。


「がんばれ」

「あと、ちょっとだよ」

 

 ごめんよと、あやまりながら小鳥は地面をける。


「それじゃぁ、少し休もうか」

 3羽がそろうと、うさぎはそう言った。


「ううん、へいきだよ」

 だけど、2羽はだいじょうぶだと言う。

「キミはぜんぜん、疲れてないだろ?」

 

 うさぎは困ったように笑う。

 その顔を見て、ペンギンと小鳥も笑う。


「さぁ、先をいそごう」

 

 足のおそい、小鳥がさいしょにふみ出す。

 続いてペンギン。

 さいごにうさぎがスタートするも、あっという間に先頭だ。


「あ……」

 

 うさぎがかなしげにこぼした。

 なにかあったのだろうかと、ペンギンと小鳥はいそぐ。


「行き止まり……?」

 

 道はそこでなくなっていた。

 うさぎとペンギンはしょんぼりとうしろを向くも、


「僕はここから行くよ」

 小鳥は前を向いていた。


「え? いっしょに行こうよ……」

 

 うさぎは泣きそうな声で引きとめようとするも、小鳥は羽を広げる。


「僕なんかといっしょにいたら、日がくれてしまう。だから、これでいいんだ」

 

 うさぎとペンギンはなにも言えずに見送り、小鳥はそのままゆっくりと地面についた。


「先に行っているから」

 小さな声が、下から聞こえてきた。


「ボクたちも行こう」

 

 さっきとちがう道を2羽は今までよりも早いスピードで抜けていく。


「あ……」

 

 また、行き止まり。

 こんどは水の流れが道のジャマをしている。

 うさぎはわたれる道を探すも、ペンギンは川を見ていた。


「ボクはここから行くよ」

「え? いやだよ。いっしょに行こうよ」

 

 うさぎはそう言うも、ペンギンは水にとび込んで向こう岸へと泳いでいった。


「このほうがいいんだ。キミはずっと、ボクたちをまっていてくれた。それはうれしいけど、やっぱりそんなのはダメだよ」

 

 ペンギンはうさぎになげかける。


「ボクはキミにめいわくをかけたくない」

「めいわくなんかじゃないよ!」

「ありがとう、キミはほんとうにやさしいね。だけど、ボクがつらいんだ。キミだけなら、とっくにたどりついていると思うと……」

「そんなこと、そんなことないよ!」

 

 泣きさけぶうさぎに、ペンギンは手をふる。


「またすぐにあえるさ。ただ、それぞれの道ですすんでいるだけで、ボクたちは同じ場所を目ざしているんだから」

 

 ひとりになったうさぎはしばらく泣いていたが、すぐに走り出した。

 今までとはくらべものにならない速さでとんで行く。


「早くみんなに会いたいよ……なかまはずれはいやだ。いっしょがいいんだ……」

 

 うさぎはかける。

 気づけば、大きな木はすぐ近くにあった。

 みんなといっしょの時はいつになったらつくのだろうかと思っていたのに……。

 

 ひとりだと、こんなにも早かった。


「やっぱりキミは早いな」

「ほんと、すごいよ」

 

 木の下には2羽がいた。

 おいしそうな実をかかえて、うさぎをまっていた。


「さぁ、いっしょにたべよう」

 

 ペンギンと小鳥はうさぎに赤い実をさしだす。


「まっていて……くれたの?」

 

 うさぎはおずおずと手をのばす。


「「あたりまえじゃないか!!」」

 

 そのことばをきいてうさぎは泣そうになるも、がまんしてかわりにこう言った。


「うんっ、いっしょにたべよう!」

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