童話・詞

『童話・ファンタジー』 〝かたよく〟のちえら

 星までとどく、おおきな木がありました。

 そのとちゅうには枝があり、葉っぱにかくれてたくさんのいきものがくらしています。

 トリはもちろんねこにイヌ。ウマにねずみ。サカナにカエル。

 そして、にんげん。

 そこではみんな、せなかにしろいはねをはやしているのです。

 

 そんななか、にんげんのおんなのこ〝ちえら〟は〝かたよく〟でうまれました。

 つまり、みんなとちがってはねが1まいしかありません。

 

 それでも、ちえらはへっちゃらでした。

 なぜなら、じぶんのはねがだいすきだったからです。1まいしかないけれど、おおきくてきれいでまっしろなはね。

 

 だけど、みんなはみとめてくれません。

 だいすきなママでさえも、なぜかちえらにあやまるのです。

 

 それがくやしくて、ちえらは星をめざすことにきめました。

 そこまでいくのは2まいのはねでもたいへんだから、きっとみんなもみとめてくれるはずです。

 1まいしかないけれど、ちえらのはねはすごいのだと。

 

 そうして、ちえらはとびたちました。

 そのとちゅう、なかまたちがちえらをみておどろきます。〝かたよく〟がどうしてこんなところにいるのかと。

 それでも、ちえらは1まいしかないはねでぐんぐんぐんぐんのぼっていきます。


「ふぅ、つかれた」

 

 だけど、そろそろげんかいです。

 だから、ちえらは葉っぱがある枝でやすもうとかんがえました。

 するとせんきゃくがいました。せなかに2つ、くろいぶちがあるしろねこです。 


「ねぇ、いっしょにやすんでいい?」

「おや? 〝かたよく〟とはめずらしい」

 

 しろねこはいいましたが、ちえらのほうがもっとおどろきです。


「え? しろねこさん、はねは?」

 

 そう、しろねこのせなかにははねが1まいもなかったのです。


「……むかし、なくしちゃった」

「うそっ! じゃぁずっとおりられないの?」

「まさか。ただ、いまでもそらをわすれられないんだ。それとも、はねがなければここにいちゃだめかい?」

「ううん、そんなことない」

「そう。で、きみは?」

「みんなにみとめてもらうため。あと、ママをあんしんさせるために星をめざしてるの」

「なら、もうじゅうぶんだろう」

「ううん、まだだめだよ」

「〝はねなし〟の〝おるる〟にあったっていえば、ママはみとめてくれるとおもうけどね」

「おるる? それがなまえなの?」

「そう、きみは?」

「ちえらだよ」

「ちえら、きょうはもうおかえり」

「やだ! ちえらのはねはまだとべるもん」

「しってる。ここまでとんできた、りっぱなはねだもんね」

 

 おるるにそういわれて、ちえらはうれしくなりました。はじめて、だれかにほめてもらえたからです。


「だけど、ちえらのもくてきはママをあんしんさせることだろう?」

「うん」 

「だったら、そろそろかえらないと」

 

 もうすぐ、ごはんのじかんでした。


「それに星をめざすのはいつだってできる。あきらめさえしなければね。そう、はねのないわたしにだって」

「星までいける?」

「なんだったら、やくそくしようか? いつか木のてっぺんにある星であおうって」

「ほんと?」

「あぁ。だけど、わたしにはじかんがかかるだろうね。ちえらよりも、もっともっと」

「それでも、おるるはあきらめない?」

「もちろんさ。ヒトよりじかんがかかるからって、あきらめるりゆうにはならない。はねがなくても、わたしはそらがすきだし星だってめざせる。ちえらもそうじゃない?」

「うん! ちえらはじぶんのはねがだいすきだもん。〝かたよく〟でも、どこまでもいけるってしんじてる!」

 

 そういって、ちえらとおるるはほほえみあいました。


「それじゃ、ちえら。またいつか」

「うん、おるる。ぜったい、またあおうね」

 

 そうして、ちえらはおうちにかえります。


「あれ?」

 

 そのかえりみち、つかれていたはずなのにちえらはげんきでした。

 それはきっと、じぶんのはねにじしんがもてたからでしょう。


「ま、いっか。はやくかえらないと。ママにはなしたいことがい~っぱいあるんだもん!」

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