歴代最強の勇者、復讐の悪鬼と化す

ハーーナ殿下@コミカライズ連載中

第1話異世界を救った勇者

 地球から召喚された青年レイジは、四人の仲間と共に数々の強敵を突破。


 異世界を破滅に導こうとした魔王ハザールと最終決戦。


 最後のターンに突入していた。


 ◇


 ボロボロの俺、勇者レイジは叫ぶ。


「みんな、諦めるな……俺に最後の力を貸してくれぇえ!」


「「「ぉおお!」」」


 ――――ヴォオオオオ!


 四人の仲間、剣聖、聖女、賢者、拳王の最後の力が、俺の手の中の聖剣に集約。

 今までにない強力が溢れ出してきた。


「いくぞぉお、魔王ハザール!」


 俺は強大な力と斬撃を、そのまま魔王に発射する。


 ――――ズッ、ザァ――――!


 勇者の閃光は魔王の核を貫く。


『グッ……ば、馬鹿な……このハザール様が……下等種族ごときに破れるなど……』


 核を貫かれて魔王は唖然としていた。

 まさか見下していた人族に敗れるとは、夢にも思っていなかったのだ。


「俺たち一人ひとりの力はたしかに小さい。だが仲間の力があったから、俺たちは越えたんだ」


『な、なんだと……ぐふっ――――』


 こうして異世界を滅亡の危機へと陥れていた魔王ハザールを、俺たち五人は討伐。

 数年に及んだ勇者パーティーの旅は終わるのであった。


 ◇


 魔王ハザールを討伐した後も、俺たちは大忙しだった。


 王都に帰還して、国王を重鎮に討伐の報告。


「な、なんと、あの魔王ハザールを⁉」

「さすがは歴代最強と名高い勇者レイジ殿だ!」

「よし、勝利を祝いじゃ!」


 国王は大喜び。

 魔王討伐を市民に通達して、王都は大歓喜の嵐に包まれる。


「「「うぁああ!」」」


 まだ魔王の配下や魔族は、大陸の各地に隠れ住んでいる。

 だが最大の脅威である魔王を倒した今、人類は勝利したといっても過言ではないのだ。


「よし、勝利を祝いじゃ!」

「勇者パーティーの五人を王都のパレードじゃ!」


「「「うぉおお!」」」


 長年の脅威であった魔王をついに討伐できた。

 国民の誰もが歓喜し、勝利に酔いしれていた。


 こうして王都での市民の祝い会は、三日三晩続いていく。


 ◇


 そんな歓喜も落ち着いたある日。

 王城で今後についての話し合いがされていく。


「さて、これからのことじゃが、お前たち五人には報奨を与えよう!」

「爵位、領地、財宝。褒美は何でも取らせるぞ!」


 魔王城を占領した財宝は、かなりの量になる。

 国王は大盤振る舞いで、俺たちに褒美を与えてくる。


 俺以外の仲間は、数日前では考えられないほどの地位と財宝を受けていく。


 だが俺だけは別の願いを、国王に依頼した。


 ――――“故郷である地球に帰還”


 そして俺の願いは無事に叶えることになった。


 ◇


 魔王討伐から二週間が経つ。

 俺は地球に帰還する日がやってくる。


「さて、もうすぐか……」


 王都から離れた“時空の神殿”で、俺は転移の準備をしていた。

 感慨深くなってくる。


 ざわ……ざわ……ざわ……


“時空の神殿”には俺以外にも、多くの人がいる。

 4人の仲間と国王。あと王国の重鎮たちが最後まで見送りにきてくれたのだ。


 俺は4人の仲間と、最後の別れの言葉を交わす。


「レイジ、本当に“全て”を捨てて、行くのか?」

「爵位も神具も全て置いて、本当にいくのか?」


 四人の仲間は再フォ訊ねてくる。

 俺はこの世界を旅する中で、数々の宝や地位を得ていた。


「ああ。向こうではいらないからね。みんなに託すよ」


 だがそれらの全てを、俺は仲間に託すことにした。

 かなり強大で危険な力と財力だが、志高い仲間たちなら有効に使ってくれるからだ。


「レイジ。本当に、彼女を……マリエルを置いていくのか?」

「マリエルの気持ちに答えてやったら、お前は次の国王の候補になれるんだぞ?」


 見送る重鎮の中に、第一王女マリエルもいた。

 彼女が異性として慕ってくれることは、鈍感な俺も気が付いた。


「ああ……俺は異世界人だ。これがベストな選択だ」


 マリエル王女のことは俺も意識していた。後ろ髪を引かれる思いはたしかにある。


 だが俺には地球に残してきた大事な家族がいた。

 だから今回は全てを捨てて、地球に帰還することを選択したのだ。


「それに地球での用事を全部、済ませたら、また戻ってくるよ。コレでさ」


 魔王城で《次元石》を手に入れていた。

 これさえあれば、一度だけ地球から異世界への往来が可能。

 だから今回は永遠の別れではないのだ。


「その時は、お前たちが美しく復興してくれた、この世界を観光にくるさ」


 魔王軍の戦いで、この世界は戦火の跡がある。


 だが4人の仲間たちは賢く、正義感が溢れて者ばかり。


 これから彼らが先頭に立って復興していく異世界ファザールは、間違いなく美しい世界になるだろう。

 多くの国民や亜人が幸せになる世界が、待っている。


 だから俺は全てを託して地球に帰還ができるのだ。


「ああ……俺たちに任せておけ、レイジ!」

「レイジも、お達者で……」

「レイジ……お前との一対一タイマン勝負の勝ち逃げは許さないから、絶対に戻ってこいよ!」

「レイジ……また」


 四人の仲間と最後の言葉を交わし、挨拶をしていく。

 個性的なコイツらとは何度もぶつかり合い、今では親友を越えた仲間だ。


「「勇者レイジ! 勇者レイジ! 勇者レイジ! 勇者レイジ!」」


 帰還に向かう俺の名を、集まった者たちが連呼してくる。

 今まで俺が救ってきた住人たちが、涙目で叫んでいた。


「みんな、この5年間……本当にありがとう……ありがとう……異世界ファザールの全てよ……」


 こうして多くの熱い言葉に見送られながら、俺は地球に帰還。


 大事な家族待つ我が家に戻るのであった。

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