その羽で飛ばない
中山史花
dramatic
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平凡な人生がよかった。
ドラマチックな出来事はいらない、恋愛というものに、憧れたこともあったけれどそんなのはまだ善悪の区別もつかない少女だったころのことだ。だれかに好意を寄せてもらうなんて、そんなこと、とんでもない贅沢品のもののようでおそろしい。
だれからも嫌われることなく、平和に、暮らしていければそれでいい。
だれにも必要とされていなくても。
多くを求めたつもりではなかった。だけど、平凡、というのは存外、とても難しいことのようだった。そもそもうまれた時点で間違っていたのかもしれない。私が憧れつづけていた平凡は、私が懸命に生きているあいだにどんどん遠ざかって、私を置き去りにする。浸かっていたはずの日常はいつしか干上がって、平凡、がどんなものだったのか、それもやがてわからなくなる。
「やっと会えた。もう離さない」
——人生最悪の日に出会った男は、前世で恋人だった相手らしい。
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