#17

 2025年9月27日土曜日、武蔵小杉駅にて


 午前10時過ぎ。



 数分間、あづさと改札口で待っていると、ひかりが姿を見せた。

 手を上げて場所を示す。

 彼女もこちらに気付いたみたいだ。

 キャリーケースをゴロゴロ転がして近づいてくる。


「お姉ちゃーん! やっほー☆彡 おかえりー!」

「よう、ひかり。久し振りだな」

「あんたに『久し振り』って言われたの、初めてだわ。でもまあ、半年ぶりくらいね。夏も帰って来なかったし。……あ、お誕生日おめでとう」

「ああ。お前ももうすぐだな」

「そう、だね」


 俺たちは家に向かって歩き始める。


「お姉ちゃん、そのキャリーケース、おっきいねえ」

「確かに。ひかり、その中には何が入ってるんだ?」

「普通さ、女子の持ち物訊く?」

「まさかお前は俺に、女の子扱いしてほしいのか?」

「そんなわけなかろうが」

「だったら別にいいではないか」

「よくないよー、しゅんちゃん。お姉ちゃんはツンデレさんなので、ほんとは女の子扱いしてほしいんだよ」

「ふむ、そうなのか。だったら自重しておこう」

「……それにしても、あんたまだそのメガネつけてんのね」

「ああ、まだまだ使えるからなあ」

「いっぱい使ってくれて、あづさは嬉しいのです」

「……あずさももうちょっとマシなデザインなやつ買って来ればよかったのにね」

「それについては同感だ、ひかりよ」

「だからあづさ、何度も謝ってるじゃん」

「フフッ、そうだな」


 こんな風に3人でくだらない会話をするのも、とても久々な気がする。

 まだ半年しか経っていないはずなのにな。



 ピンポン、という音がした。


「あ、あたしだ」


 どうやら、ひかりに誰かから連絡が入ったみたいだ。

 メッセージを開くと、彼女は途端に難しい顔になった。


「どうかしたのか?」

「……う、ううん。あたし、高校のときの友だちにこっち帰るって連絡しててさ、そしたら『今から遊べない?』って誘われたんだよね」

「せっかくの機会なんだ。行ってくればいい」

「うん、そうする」

「えー、あづさはお姉ちゃんとゆっくりしたかったよー」

「……パーティーは5時からでよかった?」

「ああ、その通りだ」

「そういや、誰が来んの?」

「俺らとのぞみ、エス、あとたぶんのんのんもいる。エスってのは、俺の大学の友だちだ」

「おっけ、じゃあ直接『フリーダム』行くわ。荷物、頼んだ」

「分かった。じゃあまた後でな」




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