扉だけの理想
Hetima
第1話
雪で一面真っ白な校庭を横目に、物音しない静かな廊下を抜け、教室の扉を前に東涼太は白い息を吐いた。
すでにあの子がいるのは下駄箱で確認済みだった。誤解しないでいただきたいが、下駄箱は扉がついていないタイプだ。通りがけにチラッと見えただけである。決して開いて確認などはしていない。
意を決して扉を開けると教卓近くのストーブで丸くなって暖をとっている女子がいた。
「おはよう、遅かったね。先にストーブつけといたよ」
東涼太は学級委員である。彼の仕事はいろいろあるが朝に教室の諸々の準備をするのが学級委員の仕事の一つであり、ストーブはその準備の一環であった。
彼は西岡澄子に挨拶を返し、黒板に日付を書き込みながら
「教室が最初から温いっても乙なもんだな」
と言い、右ポケットからおもむろに取り出した拳銃で彼女の眉間を撃ち抜いた。
東涼太はストーブに背中から勢いよく倒れた西岡澄子に近づき、彼女の顔を覗き込むと口をパクパクさせ、何か言っているのがわかった。耳を口元に近づけると、
「ニシオカァー スミコダヨオー」と言っていた。数秒後、彼女は爆発した。
西岡澄子はどこにいるのか? 東涼太は明日も扉を開く。
扉だけの理想 Hetima @aPaoq
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