問、クラスのギャルに「勉強おしえてっ」と言われたときの最適解を求めよ。なお、見返りに〝いいこと〟を教えてもらえるものとする。

秋来一年

第1問

問1.クラスのギャルに「勉強おしえてっ」と言われた時の、最適解を答えよ。

 この世は学力が全てである。

 かの偉人、福沢諭吉はこう言った。


 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。


 人々はみな平等である。なるほど良い言葉だ。

 ……とでもどこかの阿呆が思ったから、この一文だけが一人歩きして広まったんだろう。馬鹿め。

 この言葉には続きがある。そして、こちらの方が本題だ。


 人は生まれながらにして貴賤・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。


 平等であるはずの人々。では、何によって貴賤・貧富の差が生まれているのか。


 その答えを、福沢諭吉は〝学問〟に見いだした。


 つまるところ、福沢諭吉は「身分の高い金持ちになりたいなら勉強しろ」と言っているのである。考えてみればこの文が書かれてる本の題名は『学問のすすめ』だしな。

 学問のすすめが発行されたのは今からおよそ百五十年ほど前。だが、これは現代にも言えることだと僕は思う。


 この世は、学力が全てなのだ。


 いい大学に入ったからといって、いい就職先に恵まれるわけではない世知辛い世の中だが、いい大学に入れなければそもそも大企業は就職の面接すら受けさせてくれない。スタート地点にすら立たせてもらえないのだ。

 知識がなければ騙されて搾取され、学も金もないような人間にはろくな人間が寄ってこない。当然結婚も出来ない。


 ……何? 学力も金もなくたって、人脈があればなんとかなる? 学校生活の内に豊かな人間関係を築いておけば、勉強なんて必要ない?


 確かに人生において、コミュニケーション能力は必要だろう。だが、考えてもみてほしい。君が全財産を失ったとき、友人で居続けてくれそうな人はどれだけいる? 


 対等な相手とでないと友人関係を維持することは難しい。どちらかが施す側になってしまったら、それはもう友達ではない別の何かだろう。


 もちろん、一部の職人やスポーツ選手、芸能人などはこの限りではない。一流の技術、類い希なる才能、人を惹きつける魅力。そういったものがある限られた人間は、学力がなかったとしても恵まれた人生をおくれる可能性がある。だが、それはあくまでほんの一握りの例外だけ。大半の人間は、真面目にコツコツ勉強を続けていくしかないのである。


 故に、僕は思う。

 この世は学力が全てだ、と。


 そんな考えのもと、僕はこの二年間、勉強に全てを捧げてきた。

 その甲斐あって、都内でも有数の進学校に見事合格。高校二年生となった今でも学年で一桁の順位をキープし続けている。全国模試でも順位は当然上の方で、分からない問題は数少ない。


 だからこそ、頭上から投げかけられた問いに、僕は咄嗟に言葉を失う。 おい、そんな問題はこれまでの予習範囲に含まれてなかったぞ。


「ねえ、勉強おしえてっ」


問、クラスのギャルに「勉強おしえてっ」と言われた時の、最適解を答えよ。

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