スルメゲーム!
スヒロン
第1話
「みなさん! お静かに! これ以上は、ペナルティでちょっと死んでもらいますよ!」
東堂冬美は壇上で叫んでいた。
「じゃあ、説明しろ、このファッキュー女が!」
「そうだ、そうだっ!」
このデスゲーム、『スルメゲーム』に集まった群集は怒鳴り散らしていた。
「し、静かにしてください! 撃ちますよ!? ほんとのほんとに撃ちますよ!?」
冬美は目に涙を浮かべていた。
「殺れるもんなら、やってみろ!」
「どうせ皆殺しにはできねえんだろ!? なんせ、このスルメゲームに500億も賭けてるって、自分で言ってたもんナア!?」
「あんたのパンツも、俺たちの負債で買えてるんだろ!? クッヒャハハハ!!」
集まったのは、多額の負債を抱えてもパチンコ、競馬三昧の社会のクズたち。
壇上にいるのは、このデスゲーム会社、”スルメゲーム株式会社”に入社したばかりの新人。
彼らが冬美を痛めつけるのは造作ないことだった。
「そ、その線を越えないでください! 撃ちますよ!?」
「きっへへへ! 撃ってみろヨオ!?」
酒臭い顔を近づけてくるのは、アドリアン・金田である。
スルメゲームが始まった瞬間から、周りの債務者を殴りつけては笑っていた。
「俺らゲーマーは、全部で500人! そっちは、武器こそ持ってるが、せいぜい二十人ってトコだろ!? 撃ったら、暴動が起きて終わりだ! そこの金は生き残ったヤツで山分けで家に帰るだけだゼエ!?」
「な、なんてことを・・・! 神聖なるデスゲームを!」
「なあにが、神聖なるデスゲームだア!? てめえら、スルメゲームの社員のパンツも飯も、俺らが稼いでやってるんだろうが!」
「きっへへへ、冬美い。パンツくらい見せろヨオ」
冬美は屈辱と羞恥のあまり、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
大手会社、スルメゲームに入れたというのに、初回から学級崩壊である。
「いい加減にしないか、お前ら!」
長身の男が怒鳴っていた。
端正なルックス。
スーツを着こなし、堂々としている。
「しっかり殺し合わないと、賞金は貰えない・・・!」
「んだあ!? 武藤、いい子ぶるんじゃねえ! バカヤロウが!」
「馬鹿なのはお前らの方だ・・・いいか、あの賞金の箱を見ろ!」
そこには、総額500億もの大金。
札束が50キログラムも積まれており、半透明なケースで中身が見えている。
「完全防弾式、ちゃんとクリアしないと絶対に開かないんだ・・・! そんなことも知らず、暴動でいい気になってるのはお前の方だ」
「・・・ちっ、クソがあ!」
「ルールを守って、デスゲームをしろ! この馬鹿ども!」
「そ、そうです!」
冬美は元気を取り戻していた。
「みなさん! きちんと殺し合った結果でないと、お金なんて貰えません! 社会はそんなに甘くないんです! 社会は、みなさんのお母さんじゃないんです。エヘン!」
「ちっ、冬美よお。お前、武藤がいる時だけ調子いいなあ。ぺっ」
金田は唾を吐いた。
「さあさ、列に並んで! まずは第一回目、『イカタコウニウニゲーム』の開始ですっ! さあさあ、みなさん! この、イカ、ウニ、タコのワッペンから好きなものを選んでくださいっ! さあさあ、楽しい楽しいデスゲームですよおっ?」
暴れていた金田たちも、しぶしぶワッペンを手に取っていった。
「・・・いつもすいません、武藤さん」
冬美はそう言った。
「・・・いいんですよ。僕はスルメゲームの社員さんを尊敬していますので」
「いつもありがとうございます!」
武藤は、がしっと冬美の肩を掴んだ。
「あ、武藤さん・・・?」
どきり、と冬美は頬を赤く染めた。
「あの日、誓った通りです。必ず、スルメゲームを成功させましょう」
「はい・・・武藤さんだけが頼りです・・・」
しかし、武藤はその裏で冷酷に考えていた。
(そうだ・・・・500億のためには、お前には潰れられると困るからな、冬美・・・)
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