第3話 一人でも賑やかな食卓・・でも?

「この季節になると 本当に綺麗よね

6月には 梅の実を取って、梅干しに梅の甘味 うふふ」

「お酢と氷砂糖か砂糖を使って 甘酢の梅も 

炭酸水で割るとこちらもビネガーで美味しいのよ」


「梅の甘味は氷砂糖と梅を瓶に詰めて甘味を作って炭酸水か水で・・ 

あ、梅のお酒も」

「氷砂糖の代わりに砂糖でもいいけど 本当に氷砂糖の方がいいけれど」


「ああ、

どちらにしても梅の実はヘタをちゃんと取らないと・・変な苦みが出るわ」


庭の方 梅の木の傍、小さな女の子が一人 立ってこちらを見るが

女の子は軽く微笑み、ふわりと姿が透けて消え去ってしまう


「親戚の叔父さんが また自宅の庭のビワ、

ビワの実を送ってくれるかな」笑みが浮かぶ 

三月始めにはひなまつり ちらし寿司も美味 当然、甘酒に桃のデザート


ピ―とご飯が炊けた音

では、早速ご飯では・・なく 

「ご飯と緑茶をお仏壇に持って行かないと」準備して隣の部屋にパタパタと移動


祖父母の微笑む写真が傍にある仏壇に 近くには祖母の形見の仏像も一つ

小さな器に盛ったご飯やお茶に水を捧げて 小さなロウソクの炎と白檀の香りの線香

手を合わせて 祈りの言葉を口ずさみ 小さな音を鳴らす ついでにユーチューブで音楽として短い『お経』をみつけたので それを小型PCで鳴らす 


当然ながら、お腹が空いているので 御経などを読む程の余裕はない

という事にした。


「海外のSNSのお友達に聞かれたけど 小さな金属性の器に 棒で軽く叩くって

表現してネットで書いたけど あれでいいよね」


ふんわりとお線香の香り、白檀の香りが部屋に広がる 


最近は特別性のお花の香りとかの線香も通販で購入予定

無事にいつもの役割も済み いよいよお食事タイム


「いただきます」

コポコポと日本茶を入れる 

ご飯を茶碗に盛り 好きな納豆を冷蔵庫から出して追加

おかずに箸をつける

もぐもぐと美味しそうに食べ もう一度、温めたポトフをお皿に盛って

食べだす


モグモグ、ごっくん


「林檎入りのホットケーキを作るかしら

ネットで新しいお菓子料理とか 料理法があるかも」

食べ盛りという年齢でもある 多少は身体のスタイルも気にかかる


「弟の林太にメールっと・・今度 美味しい差し入れ持ってゆくからって」

「沙耶お姉ちゃんの差し入れを楽しみしてなさい」


「あ、ネットに日記を書かないと・・」


スマホを取り出して 彼女の指先が文字や画面を弾き出す


「ん、ふふっ」

スマホにいつもの日常の日記

夜のおかずに 道の階段から落ちた事を

記録しながら ネットの日記に対して 友達がくれたイイねを見て また微笑む


「コンビニの近くで髪が長い 異国のハンサムな人を見かけたわね

学校の原田君も素敵だけど」 

「うふふ 異国のハンサムさん これも日記に書く 書ちゃお」


心地良い可愛い音がした メールの到着音 

父や母からのメールが届き

指先が踊る様に動いて、文字を打ってメールの返信を返した


一人きりの食卓でも 一人じゃない 彼女の場合だが 賑やかだった


「さあ、お気にいりの番組を見ようと 今日はフランスのプロバンスの特集!」

「プロバンスのお菓子のカリソンってどんな味かしら?」

先に別の番組 コマーシャルが流れた

「へええ、フランスで欧州中の人達が集まるアニメやゲーム、漫画のエキスポか」 


「先週見た アラブのお菓子も美味しそうだった

日本の特集では佐賀に長崎、金沢のお菓子もいいよね 勿論、京都のお菓子


「福岡、博多のひよこ饅頭 もうないか・・」


「黒田の殿様の銘菓・・

あ、こちらもない! 千鳥屋のチロリアン残ってないか やれやれ」


「ああ、長崎のカステラがまだ残っていたかも」

ガサガサと戸棚を荒らして探し出す


「貰った佐賀の松露饅頭は・・ない!」


「奈良の友達からのおせんべい・・一枚あった!」

「奈良か・・古都で鹿とかお寺、神社が良いよね 茶粥!」


「頂きものの和菓子なかったかしら? 前に太宰府で梅のキャンデイをもらったけど」


「洋菓子、南区のサイラーのクッキー、マヌカン・ピスとか・・」


「やはり無かった 仕方ない 後でホットケーキ作ろう」


テレビのリモコンに手を伸ばして それから・・

「あ・・」パタリと倒れ込む 


「え・・?」ずるずると気が遠くなり それから 大きく音をたてて倒れこんだ

見開いた瞳がゆっくりと閉じてゆく


数時間後 家は大騒ぎとなっていた

「死因は 階段落下による事故によるものです」

涙を流す母に父 「沙耶・・可哀そうに」「あの子の弟の林太にどう伝えれば」


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