番外編IFその2~もしも、セヴランのウソが大公の耳に入っていたら~ セヴラン視点(3)

「ぁ、は、はぃい! こうえにっ! 光栄に、ございます‼」


 今。俺はかつてない程に、緊張をしていた。

 なぜならば――。目の前にいる――いらっしゃるのは、あのアラン・ダフェリアル様だからだ。


 功績、勲章は数知れず。『アランがいなければ国の発展は20年以上遅れていた』と陛下が仰られた、唯一無二の盟友。文句なしの重鎮。

 500年以上もの歴史を持つこの国で、歴代最良最高の大公と称される人物。


 高い身分を持つ俺でさえも、滅多にお近づきになれない御方。同じ貴族でありながら、雲の上のような御方。

 そんな方に俺は今、《声をおかけられているのだ》》!


「名誉なことでございます! どっ、どいった、ご用件、でございましょうっ?」


 背骨に痛みを感じるほどにピンと伸ばし、直立不動で伺う。

 こ、こんなことは、初めてだ。どうしてこの場に、大公閣下がいらっしゃるんだ? どうして、俺はお声をかけられているんだ!?


「……ふむ。思い当たる節は、ないのじゃな?」

「え? ふ、ふしですか……? え……?」


 声をかけられる、理由?

 そ、そんなもの、あるはずがない。だって大公閣下とは、面識がほぼないんだ。会話をさせていただいたことが、ほぼないんだ。

 思い当たるものが、あるはずがない。


「い、いえ。ございません。……も、もうしわけございません。そちらを、わたくしめにお教えくださいませ」


 勿論、背筋はピンとさせたまま。表情と声音に最大級の謝意を込め、失礼がないよう細心の注意を払って口を動かした。

 そうすれば、


「……なるほどな。大よそ見当がついたわい」

「か、閣下?」

「まあよい。まずはお望み通り、理由を教えるとしよう」


 閣下は、白いお髭を3回撫でられたあと――…………。一瞬にして血の気が引いてしまうことを、仰られたのだった。


「『セヴラン殿と会えば、ワシは背筋を正す』。『セヴラン殿が本気になれば敗れてしまう、とワシが発言した』。そういったものが現在、広まっておってな。噂の発生源であるお主に、色々と確認を行いにきたのだよ」


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