第6話 戻ってこられたら エリザベット視点
「……………………。…………………………」
俯いたまま戻ってこられた、ミレネア様。ですがいつまで経ってもそのお口が動くことはなく、すでに1分半以上経過しました。
……ミレネア様が切り出されるまでお待ちしようと考えていましたが、そうしていたらあと何分かかるか分かりません。そのため代わりに、こちらから切り出すことにします。
「ミレネア様。アンナ様との会話によって、納得していただけた。そう解釈してもよろしいでしょうか?」
「……………………。…………………………」
駄目、なようです。お伺いしても、下を向いたお顔が上がることはありませんでした。
「ミレネア様。私は大事な所用がございまして、そろそろ行かねばまいりません。失礼ではありますが、無言は肯定だと解釈させていただきます。失礼いたしま――」
「認め、ますわ……。エリザベット様の言い分を、認めますわ……!」
お辞儀を済ませて去ろうとしていたら、ポツリと呟かれました。
「リーベルト様が、あったと、学院に証拠もあると仰られていたんですもの……。受け入れざるを、得ませんわ……っ」
「信じていただけて、安心いたしました。……ミレネア様。今回の件は、なかったことに致しましょう。私は全てのやり取りを忘れますので、貴方様もどうぞそうなさってください」
この方の言動は多々問題があり、思うところはありました。ですが――今は肩を落とされ、身体はプルプルと震えています。
そんな状態で責めるのは酷ですし、この様子ですとすでに、良い薬となっていると思います。ですので、すべてを水に流すと決めました。
「ミレネア様。楽しいお喋りができて、よいお時間となりました。失礼いたしま――」
「お待ちくださいまし。……まだ、終わりではありませんわ。まだ……っ、わたくしの負けではありませんわ……!!」
一歩踏み出そうとしていたらドレスを掴まれ、しおれていた口元が再び意地悪く吊り上がりました。
……困りました。まだ、なにかあるようです。この方は今度は、何を言い出すおつもりなのでしょう……?
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