第3話 俺の、俺達の、大切な日~likeがloveに変わったから~ ドニ視点(2)

「あ、あははははは。酷い聞き間違いをしてしまったようだ。すまない、もう一度返事をして欲しい」

「……ごめんなさい。ドニの気持ちには、応えられませんわ」


 ………………。聞き間違えでは、なかった……。

 ハンカチで両耳の穴を拭い、しっかりと耳を傾けていたら……。さっきと同じ台詞が返ってきて、目の前では深々と頭が下がった。


「え……? ちょ……。あ、あれ……? ちょっと待ってくれっ。もしかして、俺だと分かっていないのかい? 俺は、俺だよ? リートアル伯爵家のドニだよ? 君の幼馴染だよ?」

「ええ。貴方は、幼馴染のドニ。知っていますわ」


 知って、いる?

 え……。え……!?


「じゃっ、じゃあなぜなんだ!? 俺の内外をよく知っているのにっ、なぜ――あっ、そうかっ! すまないっ、そうだった! いきなり結婚を前提にでエンゲージリングは早すぎたな!」


 いけないいけない、つい先走ってしまっていた。

 シルヴィにとって俺は、幼馴染だ。すぐに、『男』として見るのは難しいよな!


「自分のことばかり考えていて、置いてけぼりにしてしまっていたよ。そうだな、まずは普通に友達以上で恋人未満の関係から始めないといけないよなっ。だから、結婚を前提とかは忘れて欲しい!」


 おもわず立ち上がっていた俺は両腕を交差させて×印を作り、リングを仕舞って再び片膝をつく。そうして改めてシルヴィを見上げて、改めて告げることにした。


「俺は貴方に恋をしており、いずれは夫婦になりたいと強く思っています。ゆっくりとで構いませんので、どうか俺を今までとは違う角度からも見ていってください」


 これなら、大丈夫。そう確信して、再びブルーの瞳を見つめ――


「ごめんなさい、ドニ。違いますの。わたしはそういった理由で、あのように返事をしてはいませんの」


 ――……。シルヴィは再び、腰を折り曲げた……。


「そういった理由、じゃない……? じゃっ、じゃあなんなんだっ!? どうして君は俺を受け入れようとしないんだ!?」


 理由が分からない! 見当がつかない! なので俺はまたも立ち上がって、更に至近距離で見つめる。

 そうすれば――そう、すれば……。信じられない言葉が、返ってきたのだった……。


「あのね、ドニ。わたしには、好きな人が居るんですの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る