第26話 告知ポスター
1986年 5月
良と
初デートにきていた。
桜木美香が洋服を買いきたいとのことだった。
京成バスに乗り千葉駅まで行く
そごう、三越、パルコとはしごして美香の好みの服を探した。
結局美香は、パルコで、薄手のパーカーを買った。
美香は、背が170cmあり、良は160cmだった。
美香「良先輩こっちだよ」と終始リードされていた。
良は、先輩として、彼氏として、いいところを見せたかったが、なかなかその出番はなかった。
美香の買い物がひと段落したので良は、
「美香ちゃん、楽器屋行ってもいいかな?
そろそろ新しいベース欲しくて」
そう言って近くの新生堂へ付き合ってもらった。
美香は、「え〜ベース変えるんですか?私ピンクのベース センスいいなって思ってたんですよ」
良はその一言でピンクのベースに対しての印象が
変わった。
良は、「いや、今日は、買わないよ、1万円しかもってきてないから、下調べ、あとレコード買うかもしれないけど」
美香は「良先輩 1万円も、持ってるんですか〜
おっ金持ち〜」とからかわれたが悪い気はしなかった。
新生堂にて
良と美香は楽器コーナーへ行った。
良は、スタインバーガーの小さな未来的なベースが憧れであった。
それは、自分の身体が小さかった為ベースがアンバランスにみえたからである。
ヤマハのBX1がかろうじて買える範囲であった。
良は、店員に頼みBX1を試し弾きさせてもらった。
美香は「ベース弾くんですか?」と目がハートマークになっている
良は、軽く音を出し、鏡で姿を見てみた。
いいなこれ、欲しいな!とは思ったものの、
元来 節約家の良は買おうとは、思わなかった。
美香は、ミュージシャンの彼女という憧れの
ポジションを堪能していた。
良は、ベースの弦とピックを買うことにして、
レジに向かった。
店員さんが、「3300円になります」
良がポケットから財布をだそうとすると
「財布がない!」美香「え!財布ないんですか?」
「財布がない!財布がない!」と探すが
お茶の水の時と違って出てこなかった。
代わりに美香に払ってもらう事となる。
良は、恥ずかしく惨めな思いをすることになる。
トボトボと新生堂の2階から降りると、
美香が「しっかりしてください!良先輩
私 お金あるとか、成績いいとか関係ありませんから!確かにベース弾くとこ見て好きになったんですけど、私知ってるんですよ!風先輩と咲先輩を仲直りさせ、バンドも支えてきたって、そんな おおらかな良先輩が好きなんです!」
良は、その言葉が胸に響いた。
うつむいていた顔を上げると一枚のポスターがあった。
〝バンド エクスポ〟よく見るとコンテストの
告知ポスターだった。
美香もそれに気づき「これいいじゃないですか!
出たらどうですか⁉︎」
良は、「そうだな!いいな!」
決勝は、中野サンプラザであった。その前に予選が
2回ある。
美香が「私メモします!」
そう言って詳細をメモしてくれた。
二人は、バンドの皆んなに伝えようと言って
新生堂をあとにした。
蛇足ではあるが、良はこのあとラーメン代も帰りのバス賃も美香にだしてもらった。
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