第20話 突き抜ける
1985年 12月21日 土曜日
風は、学校終わりに由美の家を訪れた。
由美は、まだ帰ってきたばかりで、制服をきていた。
由美「咲ちゃん、大丈夫だった?」と聞いたが、
風の深妙な面持ちから、これから起こることを察した。
風が「あのさ‥」と喋りはじめると、
由美は遮った。
「横山くん 私 横山くん嫌いになった。
いっつもさ、なんか考え事してるみたいでさ!
私の事見てないからさ、昨日さ私 告白されたんだよね、他の男の子に、だからさ!別れる。」
そう言うと、由美の頬を一筋の涙が流れた。
「じゃあね!バイバイ」そう言って振り返り
家の中に入ってしまった。
風は、由美の家の門の前に立ち尽くしていたが
玄関の扉越しに由美の泣き声が聞こえる。
風は
翌週
学校では咲が補導されたニュースは、飛び交った。
咲は、登校していなかった。
風のところに、事情を聞きに 玄先輩がやってきた。
1986年 1月末
風、咲、良、サギは、工場にいた。
風は、良とサギにレベッカの〝フレンズ〟をやる。
咲が歌う事を告げていた。
その時の喜びようといったら、なかった。
良は、ドラムの椅子に座っている。
咲もベースの用意をしている。
そんな時 けたたましいバイクの音が聞こえた。
工場の前で停まる。
やや暫くして、ヘルメットとスティックをもった
玄先輩が登場した!
咲は、ビックリしている。
「どうしたんですか?玄先輩?」
良は、玄をこちらへどうぞと言う仕草をしている。
玄は、軽く良に挨拶をし、ドラムの席に座った。
玄は、セッティングしながら
「風に、俺に叩かせろ!っていったんだよ
一ヶ月前 俺の死んだ親父はドラマーだった。
子供の頃からドラムがおもちゃ替わりさ
キャバレーでたまに、〝トラ〟ピンチヒッターで叩いてんだ 心配すんな!」
そう言うとビートを刻み始めた。
ドン タン ドド タン!
凄い!
疾走感がハンパではない。
風、良、サギは、驚く咲をにこやかに見ている。
すると、ベースを持つ咲のところに、良がちかよる。
チッチッチッて指をふり、良が咲からベースをとった。
良は、玄のビートに合わせベースを弾く!
上手い!
身体を前後に揺らしながらベースラインをうねらせる。
咲は、「良、どうして⁈」
良は、「俺のお年玉で買ったベースだぞ!勿体ないから家で練習してたの!」
そこに、サギのグリッサンドが入る!
鍵盤を下から上まで駆け上がる!
凄い上手くなってる!
サギは、「咲 マリーゴールドさ!」
驚く咲に、風のカッティングが追い討ちかける!
凄い!1年前とは、段違いである
熱い気持ちが吐き出で来て風は、〝速弾き〟をする!
レスポールが唸る!
玄のシンバルが始まりを予告する
「いくぞ!ワン、ツー、スリー、フォー!」
〝フレンズ〟のイントロが始まる!
咲は、たまらくなり黒く染め縛っていた髪をふりほどく!
「はぁーーーーーー」
天に突き抜ける声を叫ぶ!
4人は顔を驚き見合わせる!
とんでもないハイトーンである
1コーラス目にはいる。
口づけをかわした〜日は〜
甘い、甘い声である。
玄のビート、良のベース サギのメロディ
風のカッティング
時間は、止まっているのか?100年先に飛んでいるのか?
工場はモノクロに染まる
〝フレンズ〟それは。バンド〝キャンディ〟が次に進む瞬間
ドミナントコードのようであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます