第9話 都落ち
風は、夏休みの責務を終え2万3千円ばかりの
お金を手に入れた。
親父からは「よく耐えたな!ギター頑張れよ」
と人生で初めて褒められた。
夏休み最後の日
風は、良と連れ立って〝ひまわり〟にむかった。
〝ひまわり〟につくと俊は、グレコのレスポール
を磨いていてくれていた。
俊は2人に気づくと
「いっらっしゃい!グレイトグレイト!」
と嬉しそうにむかえいれた。
風は、「俊さんこれ」と茶封筒に入った
2万円を差し出した。
俊は「バイトよく頑張ったな!2万円だな
確かに」と中身も確認せずに、両手で丁寧に
受け取った。
「みろよ!みろよ!ピッカピカだろ、弦もな
新しいの張っといたぞ ただな ライトゲージだ
1.0から4.6これだけは俺に
細い弦のほうが楽なんだ、チョーキングにしても
只、それになれちまうと太い弦にするときに
苦労する、最初からライトゲージに慣れちまえば
それが、当たり前になる。だから、この弦から
スタートしてみてくれ!」
風が「何故、敢えて太い弦にするんですか?」
と聞いた。
俊は、「鳴りがちがう!抜けが違う!迫力違う!ハートが違う〜」
と山口百恵のイミテーションゴールドの替え歌を歌い出した。
風と良は笑い出した。
風は俊さんがライトゲージを薦めるならそれで弾きますと伝え続けて質問した。
「俊さんてプロだったんですか?」
と敢えていままで聞かなかった質問をぶつけてみた。
俊は、「まあ、プロちゃプロだな、歌手のバックバンドとかだよ」と言うと目を逸らしてしまった。
良は、「なんで辞めちゃったんですか?」
と核心に迫った。
俊は、横を向きながら、
「干されたんだよ、ある時な〝少年座〟のあるタレントのバックバンドやってたんだよ、アイツらバックバンドやスタッフなんで〝ゴミ〟扱いなんだよ
俺のローディまあ、ボウヤっていうか弟子だな
金もろくすっぽ払わね〜くせに、ある時なステージの
舞台監督が引っ叩いてんだよ!
頭きてマイクスタンドぶん投げて暴れたんだよ
当然コンサートは中止
〝少年座〟が手をまわしたんだろう
仕事が一切なくなってな、バックバンドもハコの 仕事も‥まあ、それで実家に帰ってきたんだよ
都落ちってやつだ。」
俊は、肩で息をして フーッと大きく息を吐いた。
俊は、「それより、これもってけよ!」と
奥からフェンダーの小さなアンプとシールドを持ってきた。
「俺が高校生んとき使ってたアンプだ!ガリがあるけどな、音はちゃんと鳴る。無期限で貸してやるよ」
風は、「ありがとうございます アンプどうしようかと思ってたんです ありがとうございます」
と喜んだ。
風は、俊がここにいる理由がわかり、いっそう
俊が身近に感じられた。
ギタリスト風 誕生であった。
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