世界樹感染
雨紅
第1話〈狂い神の樹〉ユグドラシルにて〜悲懐の戦士〜
「おい、ジークムンド。」
目の前の長官に名前を呼ばれる。
長官はその綺麗な緑の目に懐疑の色をにじませながら、先程提出した書類を手に俺に聞く。
「はい、何でしょうか。」
「お前、本気でこの数字を出してるのか?もしかして私をおちょくっているのか?」
凄むような口調で言われ、ひしひしと長官の機嫌の悪さが伝わってくる。
長官の言葉に俺は慌て―――ることもなく、その言葉を予想して考えていた台詞を返した。
「いえ、異界人討伐率78%、軍内序列34位の長官に誰がそんなことを。私はただ事実を記したまでです。」
飄々と答えた俺に長官は呆れた目をしながら、手に持った書類を机において指で指し示す。
「ふむ、確かに私は異界人討伐率が78%を超える。しかし貴様はこの報告書によると、異界人討伐率が89%を超えるそうじゃないか。」
長官は眉間にシワを寄せながら机を指で叩く。
部屋にはコツコツと音が響く。
「別に私は貴様の実力を疑っているわけではないが、流石にこの報告書を嘘と認めざるを得ない。」
長官はため息を付きながら言う。
「お前は一ヶ月で3982人を殺したのか?」
「はい」
流石にその言葉には頷くしかなく、俺は単調に答える。
そんな俺を見て、長官は両手で目を覆いながら空を仰ぐ。
俺の態度から、悟ってしまったのだろう。
そして振り絞るように声に困惑と呆れと……絶望を浮かべながら言う。
「お前、‥‥‥‥‥‥また
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