第2話 「哲」

 私はスーパー公務員。窓口のエキスパート。


 昼休み。愛妻弁当を食べた後、今日はブラックの缶コーヒーを飲む。

 さぁ気を取り直して午後の窓口当番だ。


 午後の一発目は男性。40代で名前は「哲」さん。

 読み方は……ズバリ「サトシ」だ!

 見事正解!やっぱり私はスゴいのだ。


 金曜日の午後は3時前後が特に混む。

 その時間帯にも「哲」さんがやってきた。若く見えるが、還暦を越えている。

 ならば今度は……「テツ」だ!

 これも見事正解!やはり私は窓口のエキスパートだ!


 今日最後のお客様だ。終了間際に駆け込んできた二十代前半の金髪男性「哲」さん。

 気分よく今日を締めくくろう。読み方は……「サトシ」だ!

 ち、違った……。猿も木から落ちた。

 「失礼しました。テツさんでしたか」

 「え??それも違います!?」

 その若者は「アキラ」だった。改めて名前の読み方の奥深さを思い知ったのだった……。


 私はスーパー公務員。窓口のエキスパート。

 私は来週も窓口に立ち続ける。

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