亮介とオータムの昼寝
オータムは黒のダウンコートを着た亮介を背中に座らせ、新雪に足跡をつけながらリッチと『赤ワイン』、ミーンがいるライブハウスの裏口へと向かう。目隠しをされた美月に向かって、『赤ワイン』が「日本に帰れ‼」とバールを振り上げながら絶叫する。
ホホジロザメのヘレナが尾で3人の腰を強打すると、2階の階段にたたきつけられ失神した。
亮介は通りから入ってくる冷たい風で体温の低い美月に駆け寄り、ダウンコートを着せる。タカユキと一緒にライブハウス内に入って来たベイリーと母のエミリー、シベリアンハスキーのポピーが美月の首元と腹、足元にくっついた。
「睦月さん!美月をカフェ&バーの2階で休ませます‼」睦月が駆け寄って来て亮介と一緒に両腕で美月を抱え上げ、店内に入った。
―――午後4時。美月がカフェ&バーの2階で体を起こすと、木でできた椅子に座って児童書を読んでいた亮介が「美月」と小声で言い抱きしめてきた。1階でシャワーを浴び、チーズとレタスのサンドウィッチを食べていたらしい。
「タカユキさんが抹茶淹れてった」「ありがとう」美月は渡された抹茶を飲み終え、机の上に置かれていたベストを着て1階へと下りる。
「歌姫‼」肩までの黒髪を持つ日本人中学生の冬山美花が美月に駆け寄り、「ポピーとエミリー、ベイリーが歌姫を温めてたんです」と笑みを見せる。美月は亮介と一緒にハンガーにかけられていたダウンコートを着てカフェ&バーの入り口でしっぽを回している3匹の前に座り、「ありがとう」と言って耳をなでた。
亮介の肩にオータムがあごを乗せ、寝息を立て始める。亮介はオータムの腹をなでながらソファーの上で寝た。
「ライブハウスで失神していたリッチが、賢哉さんに逮捕されたそうだ」睦月が言い、通りの雪かきをする。
燈子がウィンザー城で衛兵たちに「不審者を逃がさないで‼」と怒鳴っているのが聞こえ、フレッドとジェイクに近づこうとする不審者二人を女性衛兵が失神させた。
―――午後6時。亮介は美月と一緒にロールキャベツを食べ終え、雪の積もったウィンザー城の写真を撮る。ダウンコートを着たエドワードが「亮介、美月。エドワード・ビーキーパー・ホーニッヒだ」と言い、『ウィンザー城衛兵・養蜂家』と書かれた名刺を渡してきた。
「こんにちは」二人はエリザベス女王の墓に花を置いてから、エドワードと湯気の立つレモネードを飲む。
「毎朝、衛兵たちと『エリザベス女王陛下に!』と銅像に向かって敬礼し、通りの見回りをする。行方不明だった4歳女児を広場で見つけ、保護した」とエドワード。ベージュのベストと水色のコートを着た4歳の女の子が駆け寄る。エドワードに抱き上げられた女の子は亮介と美月に手を振りながら笑みを見せた。
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