密猟者『ストールン』と亮介の激闘


 「亮介さん!密猟者『ストールン』がアレックスとリズ、直美を人質に取った‼」サムと元薬物常習犯で27歳の男性『ガラス割り』が睦月のカフェ&バーに駆け込んできた。

 マグロの握りを食べ終えた亮介と美月が広場に向かうと、号泣し続けているアレックスやリズと手をつないでいる直美に『ストールン』がナイフを持って背後から近づくのが見えた。

 『ストールン』を雪の上にたたきつけ、片手に持ったハンマーでナイフを粉砕するとひたいから血を流しながら「小説を盗まれた‼」と絶叫し倉庫へと向かって行った。



 直美とアレックス、リズが亮介に駆け寄って嬉しそうな笑みを見せる。「パパ!」「直美」愛娘の黒髪をなで、おもちゃ店前の階段に座ってベーグルを食べ終えた。

 「『ストールン』はアレックスとリズにバールを振り下ろそうとし、ヘレナさんが激怒した」フランクが小声で亮介に言い、階段の上に座ってバグパイプを吹く。ローズに抱っこされていたリズとアレックスが、嬉しそうな笑い声を上げた。


 美月の悲鳴が聞こえ、ベージュのコートを着た密猟者が走っていくのが見えた。雪の上に倒れた妻に駆け寄り、オータムが首に結んでいる『ゆ』と書かれた手ぬぐいから出るお湯で両手を温めていると「『リッチ』に金属の板で腰をたたかれた」と言い、体を起こして太い木のベンチに座った。

 睦月が湯気の立つレモネードと抹茶を二人に渡し、「サムさんやドーンたちと、屋根や道路に積もった雪をお湯で溶かすんだ」と言いながら弥生と足踏みをした。


  

 

 昼12時にホテルに戻ると、机の上に置かれた小型ラジオから『密猟者『ストールン』はバールを持ち、倉庫内に立てこもっています』とローズの声が流れた。『Young Flowers』の新聞作りで、事件現場に行くこともあるのだ。

 美月が厚手のシャツと冬用ジーンズに着替えてソファーに座ると、一枚の地図とイチゴ、ブルーベリー入りのビニール袋が机の上に置かれていた。水色のメモには『元温泉小3年1組 池中要一』と書かれている。

 

 「ロンドンに来た後パソコンを使わなくなり、陽太さんや空音たちと地図を暗記しているらしい」亮介は地図を見ながらブルーベリーを口に入れ、洗い終えたイチゴを美月と直美に渡す。

 地図には『凍って滑りやすい道路が多いので、歩く時は気を付けてください』とボールペンで書かれ、青い丸がついていた。


 睦月は凍った道路の雪にバケツに入れたお湯をかけ、梅田四人衆やサムたちと一緒に車を押していた。要一は6歳と3歳の娘を連れた男性に地図と児童書4冊を渡し、「ラジオ局『young flowers』で抹茶が飲めますよ」と青いドアの建物を指す。男性は「ありがとう」と言って娘二人と手をつなぎ、ラジオ局へと入っていった。


 



 

 



 

 

 

 



 



 


 


 

 


 



       



 

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