羅刹に道化

三宮優美

第1話 


 昨晩は嵐だった。路端の雑草は水と土の匂いを漂わせている。それは汗と混ざって、夏の薫香になった。チクリと胸の痛みを伴って、あの頃の記憶が弾けた。

 それは、多分、小学生の頃、スクール水着姿の女の子達が、目玉焼きが焼けそうに熱したプールの縁に並んで座った時の弾むような笑い声。駄菓子屋の前で自転車に跨り、キラカードを見せびらかせた時のタカシ君の笑顔。汗臭い体を公園のベンチに寄せ合って、ゲームボーイで通信バトルに明け暮れたあの無敵の日々。老眼鏡をかけて新聞を読むお祖父ちゃんの隣で、扇風機の風を浴びながら麦茶を飲み干した時、滑る氷の音。騒がしい休み時間、教室の隅で頬杖を付いてジッと窓の外を眺めていた時の入道雲。雨の日、独りぼっちの靴箱の、へたった箒と耳を劈くような中学生の叫び声。学校をサボった日の夜、コンビニへと向かう自転車とすれ違う女子の嘲笑。「え、え、ヤバいんやけど、マジ?」「きっしょい」「ありえへん」「死ね」


 蝉達の大合唱が熱蒸した僕のバグった脳味噌をぐちゃぐちゃに掻き混ぜている。


 うっとおしく汗が滴る額を拳で拭い、細めた目で太陽を睨み付ける。そして凶悪な放射熱線のビームに、僕は一秒足らずで敗北する。


 「お前なんか焼け死んじまえ」って太陽に言われて、ならばとっとと殺してほしいとかそんな事を考える。うるさい、クソが。僕もお前が大嫌いや。


 僕はこんなに夏が嫌いだ。だと言うのに、僕は今日、三十歳になった。 

 炎天下、火曜日午後二時過ぎ、三十歳の僕は中古で買ったボロのチャリンコで、市役所に向かっている途中である。僕は一万三千円分の重さのペダルを必死に漕ぐ。


 家賃の滞納が積もって、僕は十二年暮した八王子の四畳一間を追い出された。それは、多分、四ヶ月前のことだったと思う。

 僕は東京から逃げ出して、奈良の実家に帰って来た。二年前にお祖父ちゃんが死んで、お婆ちゃんは、がらんどうになった一軒家に一人ぼっちで暮らしているから、事情も特に詮索せずに「アキちゃん来てくれたら助かるわ」と言ってくれた。変わらず優しいお婆ちゃんは、僕が小学生の頃より二回りほど小さくなっていた。身内に甘やかされた僕にとって目下の問題は、半分になったお婆ちゃんの年金では、二人で暮らすには足りないという事だけだった。

 だから、僕は日々市役所に通って、助けて下さいと国にお願いしている。

 これから、僕はこの日本中全ての人に乞食行為をして生きていくのだ。ほんとは土下座して、どうかこの負け犬をお許しくださいなんて街中で叫んで回りたい気分だ。苦しく藻掻いていた頃、何より見下していた奴らに僕は成り下った。


 東京に居た頃、鬱が悪化して働けなくなった僕は、何とか社会復帰を目指そうと就労支援作業所に通っていた。そこで会った歯のない生活保護受給者のオッサンが「時代は俺らを負け犬と言うとるが、歴史は俺らを勝ち組呼ぶようなるんや」なんて言っていたっけな。その人は僕と同じ関西出身で、妙に僕に話しかけて来ようとするから、僕は苦笑いを顔に貼り付けて逃げ回った。けれども僕は結局その恐ろしいモンスターに捕まり、同じ場所へと引きずり込まれてしまった。いや、僕は極めて平凡な人間社会に敗北して、自らその虫たちが住まう薄ら暗い岩の下へと逃げ隠れたのだ。   


 信号待ちのサラリーマンの視線から逃避する為に、僕は「時代」と「歴史」の違いについて考えてみた。

 そうして、ペダルを踏み込んで、十字路を曲がったら、通い慣れ始めた市役所が見えてきた。


 灰色にくすんだコンクリート建築の、ありふれた普通の市役所だ。駐車場と駐輪場に、歩行者用歩道、シンメトリーに並んだ植え込み木々。セミの鳴き声は相変わらず喧しいし、どこに居たって同じ音色だ。たぶん、僕の子供の頃からずっとそれは変わっていない。蝉の歌交響楽団の構成員は全て去年のものと入れ替わっているはずなのに、毎年同じ音色を奏でいるのは不思議だ。もしかして、蝉たちが儚く貴重な時間を浪費して狂信的に奏でているのは、死んでいった同胞への、それから同じ運命を辿る自分への、諦念のレクイエムなのかもしれない。そんな事を一瞬考えてみたものの、すぐにそれを否定する。彼らが必死で歌っているのは、雌に好かれる為のラブソングであり、彼らは湧き出る本能に従って、発情しているだけである。きっと蝉のラブソングは、陳腐で俗っぽくて蝉世界のみんなが好きなものに違いない。『この世界で唯一、貴方は私の特別で、私も貴方の特別で。貴方には私が必要で、私にも貴方が必要で』

 

 正面入口の前には、鉱山夫の様に真っ黒に日焼けした、警備員のお爺さんが立っている。お婆ちゃんと一緒くらいの年齢だろうか。僕が住んでいた八王子のアパートの隣の部屋の住人は、足の悪いお爺さんだった。お爺さんは一人暮らしをしていて、パチンコが趣味だった。話し相手が恋しいのか、挨拶のついでに捕まると長い話が始まるので、朝のごみ捨ての時や、出勤前に偶然鉢合わせしないよう僕は何年も緊張させられた。五年ほど前だっただろうか、仕事帰りに、隣の部屋のドアが半分空いていて、制服を着た清掃員の人が掃除している事に気が付いた。隣のお爺さんが亡くなったと大家さんから聞いたのは、それからしばらく後だった。その時の、清掃員の人が随分と年配だった事がやけに記憶に残っている。黙々と、家主に置き去りにされた遺品を片付けていた。白髪頭で、曲がった腰。深く刻まれた皺。一体どういう人生を歩んできて、孤独死した老人の部屋を片付けながら、今は何思っているのだろうか。そんな事を僕は一瞬考えた。僕はその人に、勝手な妄想とシンパシーを重ねた。寂しいだの不安だのなんて、安っぽいポップソングの歌詞みたいな言葉で自分を例えたくなかった僕の、そんな下らないプライドから漏れ出た、一方的な親愛だった。

 年嵩の警備員を見て、僕はあの日の清掃員のお爺さんを思い出した。僕は目を伏せたままその前を通り過ぎて、自動ドアの中に飛び込む。

 肌に冷たい心地良さ。キンと冷えた市役所の中はエアコンと古い紙の臭いがした。


 赤ちゃんを抱いて、五歳ほど男の子の手を引いた金髪にジャージ姿の若い母親、首にかけた名札を腕まくりしたワイシャツのポケットにしまった若い男性、ホールにある自動販売機の前で立ち話する中年の女性達。その他有象無象の他人たち。

 目を伏せたまま、太ったおじさんが職員に怒鳴っている市民課の前を通り過ぎる。障害福祉課は一番奥、衝立の向こう側だ。ケースワーカーの女性は中川さんという中年の女性だ。優しくて、いつも微笑んで穏やかに頷く人だ。早く彼女に会いたい、あの柔らかな人に会えばこの喉に突っかかる息苦しさが少しは解れそうだ。僕は少し早足になる。


 障害福祉課に着く。窓口に立って、見渡したが中川さんは見当たらない。

 すぐ若い女性の職員が僕に気が付いて、向かってくる。僕は反射的にそれを嫌だなと思う。


「どうかされましたか?」


「あの、生活保護の件で、あの、担当の、中川さんに……」


 情けないくらい、声が小さく震える。


「お名前、よろしいですか?」


「あっ、鴨居です……」


 絞った喉から、嫌になるくらい掠れた声が出た。


「はい?」


「えっ、あっ、鴨居、明ですっ」


 聞き返されて、今度は予定より大きな声が出てしまう。


「鴨居さんですね。おかけになって、お待ちください」


 女性はニコリと微笑んで、奥へと下がった。

 その小さな背中を眺める。若い女性と話した後の、いつもの僕の悪癖が始まる。何度も何度も女性職員とのやり取りが脳内でリフレインする。


『お名前よろしいですか』『鴨居 明です』『はい?』『鴨居、明ですっ』『おかけになって』『お名前よろしいですか』(この人)『鴨居 明』『お名前』『はい?』『はい?』『はい?』(三十歳で無職)『はい?』『はい?』『明』『はい?』『おかけになって』『はい?』『はい?』『はい?』(無職)『はい?』『お名前』『はい?』『よろしい』『はい?』(無職)『はい?』『はい?』『はい?』『鴨居』『お名前』『お名前』(好みの)『お名前』『お名前』(好き)『お名前』『はい?』(運命)『はい?』(何、期待してんの?)『はい?』『はい?』(キモい)キモいキモいキモい、気持ち悪いよ、お前。


 いつもみたいに、そんな風に、反省と後悔と期待を繰り返していたから。

 だから、僕は窓口に向かってきた男性職員に注意を向けていなかった。


「申し訳ありません、本日、中川はお休みでして……あれ、カモやんやないか?」


 久しく聞いていなかったあだ名を呼ばれ、反射的に顔を上げる。


「俺や、金田や。覚えてるか?」


 人懐っこく微笑む日焼けした肌の恰幅の良い男性は、それでも典型的な市役所職員の男というベールを纏っていた。その中に残る、懐かしい幼馴染の面影を、いつも兄貴のお下がりのジャイアンツ帽子を被っていた、繋がった眉毛で痩せっぽちの、前歯の無かった金田少年の顔を浮かび上がらせるのに時間を要した。


「あっ、」


 気付いた途端に、全身からサッと血の気が引いた。

 僕はもうパニックになりかけて、走って今すぐ逃げ出したい、逃げてトラックにでも轢かれたいと思った。


「ああ、うん。覚え、てる……」


 歯切れの悪い僕の返しに、金田はハッとして、バツが悪そうにぎこちなく微笑んだ。


「久しぶりやんか」


「うん、久しぶりや。金ちゃん、役所で働いてたんや。凄いな」


 僕は旧友と再会する時に浮かべるべき正しい表情も分からずに、そう口にしてから、「凄いな」なんて言葉は変だったかもしれないと後悔する。


「うん。鴨居は、……今は、調子でも悪いんか?」


「あ、うん。ちょっと、ね。東京に行って!……ちゃんとっ、働いてたんやけど、い、今は、休んでるんや……体悪して、こっち帰ってきてな。いや、体いうか、鬱やねんけど。ハハ、情けないよな、まさか金ちゃんに会うとは思ってなかったから、恥ずかしいわ、ハハハ」


 金田と目も合わせられずに、早口で、途切れ途切れになりながら、僕は何とかそう言葉を紡いだ。


「いや、そんなん、なんも恥ずかしいことあらへんわ。そうか。カモやん、大変やったんやな。困ったことあったら何でも言うてや、俺は生活保護の担当や無いけど、育児休暇取らはった人の代わりにちょうど障害福祉担当になったとこやから、何か手伝う方法分かるかもしれんわ」


「そうなんや、ありがとう、助かるわ」


「いや、しっかし、カモやん若いな。羨ましいわ。俺なんかもう禿げてきとんのに」


 言葉の通り、金田は随分年より老けて見えた。僕より五つ以上は上に見える。髪が薄くなって、デコが広くなり始めている。職員証が下げられたシャツの下の腹は前に出て目立ち始めている。ふと気になって、グローブの様に分厚い手の左側を見る。その薬指に僕には縁のない銀色が光っていた。


 それから金田と何を喋ったのか僕は覚えていない。

 気がつくと、燃え上がる羞恥心と悔しさを吹き飛ばす様に必死で自転車を漕いで、自宅へと続く田んぼ道を走っていた。大声を上げたかった。何もかも全部忘れたかった。


「アキちゃん、帰ってきたん?市役所の人何て言うてはったん?」


 お婆ちゃんの声に答える余裕もなく、僕は二階の自室へと駆け込むと、勢いよく扉を閉めて、ベッドに寝転がった。


 体が汗臭い。蛍光灯の下、乱れた僕の息遣いと、時計の秒針の音。中学二年生の誕生日、母が買ってきたピカチュウの時計だ。本当は幼稚なその時計が気に入らなかった。だから、母にありがとうも言わなかった。

 それからポケモンの映画を母と二人で見に行った日のことを思い出した。それは小学三年生の時で、女手一つで僕を育てる為に、朝も夜も忙しなく働いていた母にとって、僕はその小学生の頃のままだったのだろう。


 涙が溢れ落ちた。情けなくて、情けなくて、声を殺して僕は泣いた。


 どうして、こうなった?


 どこで、僕は間違えた?


 そんな言葉は「アーアー」と意味のない叫び声になった。

 馬鹿みたいに声を上げる僕を置き去りにして、秒針は静かに時を刻んでいる。


『どしん、どしん』と一つづつ重々しい足音が聞こえてくる。「アキちゃーん、どないしたん?」


 足の悪いお婆ちゃんが大きな声を上げながら階段を登ってきていた。僕はハッとして口を噤んだ。


「何もないよ、大丈夫や!」


 しかし、お婆ちゃんの耳は遠いので、しばらくして引き戸がガラリと開けられた。

 途方に暮れた表情でお婆ちゃんが立っている。


「どないしたん?」


「ごめんやで、何もないよ。ちょっと歌を歌ってただけやで、びっくりした?」


 今はもうお婆ちゃんの前でしか作れない道化の笑みを、僕はぐにゃりと浮かべた。


「ほんまか、びっくりしたわ」


 そしたら、お婆ちゃんもやっと張り詰めた表情を緩めてくれた。

 それが鏡みたいに似ているので、しっかりとした遺伝子を感じる。母さんもこういう風に笑う人だった。


「今日の晩御飯は、アキちゃん好きなオムライスにするでな」


「ほんまに、うれしいわ!」


 わざとらしく拙い僕の歓声に、うんうん、と頷いた後、『どしん、どしん』とお婆ちゃんは階段を降りていく。 

 それを見届けて、慎重に扉を締めた後、もう一度ベッドに寝転がると、溜息を吐いた。


 蛍光灯が眩しくて、頭が痛い。

 僕は鼻水を啜った。ピカチュウは所々色あせて、楽しそうな真ん丸の目で僕を見ていた。チクタクと僕を追いつめながら。



金田は僕の家の近くの団地に住んでいた。

 お婆ちゃんと金田のお母さんが同じ宗教の会員だった。僕たちは保護者の集会に付き添って一緒になる事が多かったので、自然と仲良くなった。

 お婆ちゃんは放課後や学校が休みの日に僕を集会に連れて行った。それを、母さんが知るといつも怒ったが、僕にとっては布教活動に付いていくのは面倒くさいものの、最後にはおばさん達から必ずお菓子ももらえるし、金田とも会えるので少学校以外の楽しい事の一つだった。


 その頃の僕は、クラスのムードメーカー的存在だった。授業中にしょうもないギャグを言ってはクラスを沸かし、ヒステリックな女性担任を発狂させていた。どこのクラスにも一人は居る『いちびり』という奴だった。

対して金田は早生まれのせいか、クラスメート達より体も小さく成績も悪かったので、目立たない子供だった。

 放課後、僕は金田と他の友達と一緒に子供用マウンテンバイクに乗って公園へ走った。勾配の多い道を僕は両手を離して見せたりした。小さな金田は必死に自転車を漕いで僕らの背中を追いかけていた。


 中学生になって、僕はイジメられ始めた。

 そして、金田はサッカー部に入り、僕たちが話すことは無くなった。


 高校生の頃、母が他界した。

 僕は不登校だった底辺高校中退して、東京に行った。その頃の僕は世界中の皆んな殺してやりたいと思っていた。渋谷の交差点で機関銃をぶっ放してやりたかった。

 僕はそんなありきたりな社会への憎しみを、自分だけが持つ特別な美徳と思い上がって東京へと突撃した。


 結果は玉砕だ。

僕はこの世界の主人公ではなかった。


 自分という存在は、広い空の下で、どうしようもなく矮小で、下らなくて、意味のないものだった。

 そんな取るに足らない事実の中で現実を立て直す事なく、日々を右から左へと受け流すうちに、気がつけば周りの誰もが子供用マウンテンバイクを漕ぐのをやめていた。僕だけが一人、終わりの見えない坂を登っていた。いや、それは終わらない下り坂だったのかも知れない。


 三年ほど前まではまだ年老いるのが怖かった。外見じゃなくて、感受性の事だ。

毎日のルーチンに、アイデンティティと信じていたはずの醜い炎が希薄になっていく。

 早く認められたかった。何者かになりたかった。そう焦りながらもベッドで寝耽って、価値のないネットの情報を貪っては日々を浪費した。

フワフワとして、真っ白の化け物に追いかけられているような、そんな捉えどころのない恐怖だ。


 十年前頃は幸福そうな人が憎かった。

 薄っぺらい器が満たされる事を幸せと呼ぶ人たちを、くだらねぇと見下していた。


 いつからだろう僕の一部だった『あたりまえ』へ軽蔑と妬みが消えてしまっていたのは。


 十六年前は本当にこの苦しみから自由になりたかった。

 僕は断崖のどん底で苦痛と希死念慮の荒波に打たれていた。

軋む心臓をむしり取って、投げ捨ててしまいたかった。絶望に支配された魂ごとマグマに身投げしたかった。


 それなのに今は自由に伴う虚しさに向き合えずに、その苦しみにすらしがみついている。

とっくの昔に僕なんて絞りカスなんだ。無価値な虚ろだけが散らかった部屋に薄らぼんやりと空いていた。


 夢の中に死んだお爺ちゃんが出てきて、僕は死んだお爺ちゃんだと分かりつつも「百万くれへんか」と言った。「隠した年金のヘソクリとかあるんやないか」と言った。

 お爺ちゃんが居るのは何故か薄暗い教室の中で、お爺ちゃんは無表情のまま、意味のない言葉で答えた。まるでそれは、呪詛の様に感じた。

 目が覚めた後で、僕は無性に怖くなって、仏壇に線香を添えて、お経を唱えた。僕はアホだ。間抜けだった。酷い人間だった。


 死にたい切望と、生きることへの無気力ならば、どちらが深刻なんだろうか。


 まあ、もうどうでもいい事だ。


 金が空から降ってくれば良いのに。万札があふれる部屋で溺れてみたい。


 世に溢れる嘲笑や怒りの発信にいちいち傷付いて、丸まって死んだふりして何年たった?

 こなすべきタスクの数だけ足枷が増えて、バグった脳みそが動作を停止した。


 僕は平凡で退屈な人間にすぎないのに、真っ当になれない。 


 きっと上手くいかないのは、ブルーアイズホワイトドラゴンのキラカードが、矮小な僕の持てる幸運の全てを吸い取ったせいだ。


 みんなに自慢なんてしなければ良かった。僕よりしっかりしていて、優しかった友達達。本当にごめんね。もうほとんど名前も思い出せないけれど。

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