第45話 この世界の真実④
────ヒトザル達が人へと成長する時間はとても長かった。それまでの生物種達が皆、たった数年で進化し続けたのとは違い、彼らの進化にかける時間は、万単位となった。
────平和だなぁ。
アランは、そんなゆっくり進む世界を少し退屈に思いながら見ていた。
──だが、そんな時にふと、彼らの声が再びアランの耳の中にそーっと入り込む。
「博士、今のままで行くと彼ら――ヒトザルが我々の領域に辿り着くまで、あまりに時間がかかり過ぎてしまう! もう少しスピードアップさせねば、ダメです!」
「…………ふむ。まぁ、確かになぁ。いくらなんでも遅すぎるかもしれぬ」
「そうです! 今からでも遅くはありません! 我々の手で、すぐに人間への進化を始めましょう! …………我々は、この数万年の間ヒトザルに武器の使い方を教えるという事しかしていません! これは、異常事態ですよ! なんせ我々は、この世界の頂点に立っているのですから!」
「…………君の言いたい事は、よくわかったよ。じゃがな。すぐに進化をするというわけにはいかんよ。それでまた、巨人や超人達のようなバランスが壊されたりでもしたら嫌だからね」
「ですが!」
「…………まぁまぁ、落ち着きたまえ。そんなに焦る必要はない。既に仕込みは出来ているからね」
「……ぐぬぬぬ」
「…………そういえば君、さっき”私達は頂点に君臨している”などと言っていたな」
「…………? それが何か?」
「…………いや、ただその……まさか、忘れたのではないかと思ってな」
「…………え?」
博士と呼ばれていたその姿の見えない老人の声の持ち主は、突然深刻そうに言った。――会話を聞いていたアランも博士の次の言葉をまだかまだかと待ち望んでいた。
――少しして、博士は語りだす。
「…………我々が、元は人間であったという事を……」
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