第24話 懲りない侍女たちとその上司
「そういう事なら、わしよりもラリーに頼みなさい」
お茶の席でギルおじ様にお願い事をしようとした私だったが、その願いはあっさり却下されてしまった。今はこの屋敷の主はラリー様で、二人は夫婦になるのだから、頼み事はラリー様に言うべきだと言われてしまったのだ。そう言われてしまうと、私もそれ以上言う事は出来なかった。確かにその通りなのだ。
仕方なく部屋に戻ってから私は、ローラにラリー様と面会したい旨を伝えた。別にユーニスに頼んでもよかったのだけれど、この侍女たちやスザンヌがどう動くのか、試してみたかったのもある。
「辺境伯様にですか?どのようなご用件で?」
「あら、妻になると決まっているのに、用がないとお会いしたいと言ってはいけないのかしら?」
「し、しかし、辺境伯様はお忙しく…」
「そうなの?おかしいわねぇ…ギルおじ様はそのようには仰っていなかったけれど…」
「…っ!」
「既に婚約者なのですもの。ラリー様ももっとお互いを知り合おうと仰っていたわ」
「し、しかし…」
「私達の結婚は王命よ。歩み寄らなければ叛意ありと受け止められる可能性もあるのですもの。仕方ないでしょう?」
ここまで言ってしまえば、ローラが異を唱える事など出来なかった。渋々と分かりましたと応えて出て行った。
「まだ反抗する気のようですね」
「そうね。どう出るかしらね?」
既にギルおじ様からもお墨付きを頂いているから、私は遠慮するつもりはなかった。まぁ、それにお願い事と言うのは私個人の希望ではなく、この辺境伯領にとってメリットがある事なのだ。ギルおじ様も大層喜んでくれたから、ラリー様も反対はされないだろう。
それから一刻程すると、今度はスザンナがやって来た。
「失礼します、お嬢様。ラリー様とお会いしたいと伺いましたが」
「ええそうよ、ラリー様からのお返事かしら?」
「いえ、そうではありません」
「そう、じゃ何の用かしら?」
「…ラリー様はお忙しい方なのです。お嬢様の気まぐれで仕事の邪魔をするのはおやめください」
「別に私、仕事中に会わせろなどと言っていませんわ」
「…っ!しかし!」
「それに、お忙しいと思うからこそ事前にお伺いを立てているのよ。いきなりやってきて面会を求めるような不作法な真似など、恥ずかしくて出来ませんもの」
「…な…!」
前回、突然やってきて一方的に話を始めた事を揶揄ってみたら、笑えるくらいに顔が赤くなった。一応自分がやった事がまずい事だと理解はしているみたいね。それならもう一押し、と…
「それに…私達の結婚は国王陛下がお決めになったもの。歩み寄る姿勢を見せておかなければ、叛意ありと受け取られてしまうのよ。そうなって困るのはラリー様だわ。あなたはラリー様に無用な疑いを持たせたいの?」
「そ、そんな…」
「それに…お互いを知り合おうと仰ったのはラリー様ですし、そう提案されたのはギルバート様ですわ」
国王陛下の命令であり、二代の主が決めた事に異を唱えるのか?と暗に示すと、スザンナはそれに反論するだけの材料は持ち合わせていなかったらしい。ラリー様はお忙しいので!と捨て台詞にもならないような事を言ってスザンヌは去っていった。全く、あまりにも単純すぎてつまらない…もう少し手ごたえがないと暇つぶしにもならないのだけれど…
「アレクシア様、物足りないとか思っていらっしゃいませんか?」
「あら、さすがはユーニスね。さて、ラリー様は何時お会いして下さるかしらね?」
スザンヌがどのような態度に出るか、私達は楽しみにしていた。
私がラリー様とお会い出来たのは、翌日の午後だった。ビリーの話では、今日は外せない公務が入っていたらしく、翌日の午前中は比較的暇だったらしい。半日の遅れは、スザンナが出来る最大の抵抗なのだろう。さすがに国王陛下からの謀反ありの発言と、ギルおじ様とラリー様の提案に異を唱える方法を見つける事は出来なかったらしい。たったそれだけとは…つまらないと思いながらも、私は指定されたラリー様の私室に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます