第112話 運命の水曜日
いよいよ運命の水曜日だ。
今日の午後、オレが空売りした30000株は強制決済される。サクセスバイオの株価が暴落してれば助かるが、高値のままなら人生が終わる。
金曜日の夜から株価もニュースもチェックしてねえから、どうなってるかはまったくわからねえ。
9時になった。取引開始の時間だ。株価をチェックしようとしたが、スマホをタップする手がガタガタ震えやがる。クソッ! ビビってもしょうがねえ。もう祈るしかねえんだ!
頼む! 頼むから暴落しててくれ――
「――うおおおおお!!!!!」
来てる! とんでもねえ売りが来てる!!
ウソじゃねえよな!? ドッキリとかじゃねえよな!? そうだ! ニュースを調べりゃいいんだ!!
落ちてる! ガンの治療薬が審査に落ちてる!!
やっぱりオレの思った通りじゃねえか。オレは正しかったんだ……。やべえ。涙が止まらねえ……。
助かった! オレは助かったんだ!!
それにしてもすげえ売りの量だ。今は500万株ぐらいだがまだまだ増えてやがる。おまけに買いが全然入ってねえ。この調子なら本当に1000円ぐらいまで下がるんじゃねえか?
そしたら、オレの利益は1億越えだ! 大逆転勝利だ!!
いや、待てよ……。
たしか強制決済の注文ってのは、今日の午後に出されちまうんだよな。ってことは、ストップ安の5700円で買い戻されちまうじゃねえか! それじゃ全然ダメじゃねえか!!
オレの売値は平均4800円で30000株。ってことは……。
電卓アプリですぐに計算だ! って、5700円で強制決済されたら2700万の損になっちまうじゃねえか!
そんなのありえねえよ。これだけ超絶ストップ安なんだ。もっと安いとこで買い戻せるのは確実だ。なんでわざわざ損しなきゃならねえんだ!
そうだ! 証券会社に電話だ! 買い戻しのタイミングを遅らせてもらうしかねえ。これだけすげえストップ安なら、むこうも話を聞いてくれるはずだ。
すぐに電話番号を調べねえと!
ネットで検索しようとしたら、スマホに着信があった。知らねえ番号だ。誰だ、この忙しい時に!
「お忙しいところ失礼いたします。私、アサガオ証券第二営業部の
こいつはラッキーだ。証券会社の方から電話してきやがった。
「ああ。間違ってねえ。ちょうど良かった。実はちょっと相談したいことがあってよ。サクセスバイオの強制決済なんだけど、ちょって遅らせてもらえねえかな」
「失礼ですが、熊尾井様の
は……? なんだって……??
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