第13話 空売りのチャンス

「クソッ! しくじった!!」


 オレはバカだ。買いで儲かって浮かれて空売りのチャンスを見逃してた。

 儲かった2000万にレバレッジかけて空売りしてりゃ、ポンジコインの暴落でさらに大儲けできたはずだ。


「もっと早く、あんたに会いたかったぜ」

「そうですね。でもチャンスはまだまだあります。相場は常に動いてますから」

「でもよ、ポンジコインだけじゃねえ、仮想通貨はみんなそろって暴落したんだ。こっから空売りするのは危なくねえか?」


「株やFXがあるじゃないですか」

「そうか。株やFXでバカみてえに上がったのを探して、空売りすればいいのか」

「そのとおりです。こちらをご覧ください」

 女がスマホの画面を俺にむける。


「これは今日の東京株式市場の値上がり率ランキングです」

「へえ、今日だけで10%以上も上がってる銘柄がけっこうあるんだな」

「はい。ちなみに日本の株式市場に上場している会社の数、ご存知ですか?」

 考えたこともなかったな。まあ、有名な会社はみんな上場してるとして……。


「だいたい500ぐらいか?」

「残念。正解は3000社以上です」

「さ、3000? そんなにあんのか!」

 驚きだぜ。でもこれはビッグチャンスだ! 3000以上も会社があるなら、なかにはバカみてえに上がるのだってあるはずだ。そいつを空売りで叩けば大儲けだぜ!

 タイミングならきっと大丈夫だ。なにせオレは、暴落の雰囲気をポンジコインで経験してるからな。


「そしてそのほとんどが、信用取引での売りが可能です」

「信用取引?」

「株の世界では売りから入りたい場合は、株券を借りてきてそれを売ることになります。いわゆる空売りとはちがうんです」

 信用? 株券を借りる? なんだかよくわからねえな。


「ぶっちゃけ相場が下がる方に賭けるってのは同じだろ? まぎらわしいから、呼び方は空売りでいいよな?」

「ええ、かまいませんよ」

「よっしゃ! これからは株の空売りでガンガン攻めるぜ!」


 気合が入るぜ。このうまくいきそうな感じは、ポンジコインを買ったときと似てる。これはチャンスだ!

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