Chapter 1.23 再来

Chapter 1.23


再来


「ここだよ、リア」

 ルクスは目の前の建物を指差し、ここが目的地である事を告げる。

 その建物には、冒険者集会所と書かれた看板が貼られていた。昨日ルクスが聞き込みで訪れた場所である。

「おう、案内ありがとうな」

 リアはルクスにそう軽く礼をいうと、示された建物を見据える。

「ん? なんかごたついてないか?」

 リアのその言葉を聞き、ルクスは冒険者集会所に目を向ける。

 リアの言う通り、集会所は昨日訪れた時よりどこか騒がしい雰囲気を醸し出していた。

「本当だ。昨日とは雰囲気が違うな」

「なんかあったのか?」

 二人は疑問を抱きながら集会所の扉を開く。

 受付には昨日ルクスが訪れた時と同じ受付嬢が立っている。

「ああ、ルクスさん。今日もいらっしゃったんですね」

 受付嬢は昨日と同じ笑顔をルクスに向ける。しかしその表情の中にはどこか陰りがあるように感じられた。

「どうも。ご無沙汰しています」

「隣の方は?」

「リアと言います。自分の同僚です」

 紹介されたリアは軽い会釈をする。

「同僚と言いますと、本部の遂行者オフェンサーの方ということですか?」

その通りです、とルクスは受付嬢にそう返答する。

「今日もちょっとお話を伺いたいと思いまして。一度ロイドさんに顔を合わせたいのですが、いらっしゃいますか?」

 そう質問された受付嬢はばつが悪いような顔をした。

「どうかされましたか?」

「いえ、実は、そのう・・・」

受付嬢はモジモジと言葉を濁す。明らかに困っていることが手に取るようにわかった。

「何かあるなら話していただけると助かります。もしかしたら何かの助けになれるかもしれません」

 ルクスはそういうと、受付嬢は困った表情を浮かべたまま、ルクスに向けて小さな声で声を発した。

「わかりました。とりあえず、昨日と同じ部屋にご案内します。お連れの方も一緒にいらっしゃってください」

 そういうと、受付嬢はカウンターを開き、昨日と同様に執務室へと案内する。

 その道中で、ルクスは奥にあるもう一つのカウンターを覗き見る。そこには冒険者と思わしき多くの人たちが長蛇の列をなしているのが見えた。

 列の後方にいる冒険者達は一様にどこか苛立っているようにも感じられる。

「今日は随分と冒険者の方が多いんですね」

 ルクスは受付嬢にそんな軽口を開くと、彼女は苦笑いしながら小さくそうですね、と返事をする。

 執務室前に来ると、受付嬢はコンコンとドアをノックする。しかし、奥から返事の声が聞こえなかった。

「失礼します」

 受付嬢はその事を気に留めず、ドアを開ける。開けた先には椅子に座っているロイドがいた。

 −−−なんだ、ちゃんといるじゃないか。

 ロイドが集会所にいることに内心胸をなで下ろす。受付嬢のあの顔から、もしかしたら今日はいないのかもと心配していたのだ。

「ロイドさん、お客様をお連れしました」

「・・・」

 受付嬢の言葉への返答はない。

「ロイドさん?」

 ルクスも名前を呼ぶが、先ほどと同じく返答が帰ってこない。

 ロイドは後ろを向いた状態で椅子に座っており、こちらを向く様子が微塵も感じられなかった。

 返事がないことに疑問を感じたルクスは、ロイドが座っている椅子へ足を向ける。そのすぐ近くまで行くと、ロイドの顔を覗き込むように体をかがめた。

「ロイドさん、どうかされたん−−−」

 そう口を開いて、ロイドの顔をみる。

 そして、驚愕した。

 そこには昨日の柔らかい雰囲気が嘘のような、青白い表情のロイドが佇んでいた−−−。

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