第73話 ワイバーンの肉と飛竜の肉、どちらが美味しい?
次の日の朝は、ゲイツ様は女学生も一緒で良いと言って、ビッグバード狩りをしたよ。
まぁ、指導したのが一回だけでは、チョコレートバーを貰ったので拙いと思ったのかもしれないね。それはないか! 図々しいからさぁ。
ルーシー達は大喜びしていたけど、ビッグバードが飛び立つ前に討伐しなきゃいけないから、三箇所回る。だから、馬なんだけど、大丈夫かな?
うっ、ルーシー、アイラ、アイーシャ王女、私より乗馬が上手い気がする。
夏休み、ルーシーとアイラは、乗馬に熱心じゃなかったと思うんだけど……ちょっと悔しいな!
「ブヒヒヒン! ブヒブヒブヒヒヒン!」
『この気配は! あの馬鹿オオカミだ!』
あっ、
「大丈夫よ! 銀ちゃんに悪さなんかさせないから!」
そう言い聞かせたら、
私に護られるのではなく、護る! って言いたいみたい。
「お願いしておくわ!」と言ったけど、銀ちゃん大きくなっていそう。
大型犬ぐらいなら、領地で飼えるかもしれないけど、小屋ぐらいだったからなぁ。でも、もふもふしていて可愛かったな。
「ブヒヒン!」
「あっ、
機嫌を損ねたら大変だ! ご機嫌を取っておこう。
「今日の狩りが終わったら、ビスケットバーをあげるわね!」
あああ、喜んでスピードが上がりすぎているよ!
「ペイシェンス、
「やはり、ビッグバードが多いのは、ワイバーンから逃げているからでしょうか?」
岩場にびっしりと巣を作っているよ。
まぁ、ビッグバードは美味しいし、羽根はお布団にしたいから、大歓迎なんだ。すき焼きソースがあるから、焼き鳥も良いんじゃないかな?
「パーシー様も羽根を貰って下さいね!」
それは、パーシバルも承知しているから、頷く。
「グレンジャーホテルの布団が必要ですからね!」
あっ、女学生達に呆れられたかな?
「そうね! 羽根布団は、新しくしたいわ!」
「母から、姉の嫁入り支度に羽根を! と頼まれているのよ!」
では、頑張って討伐しなきゃね。
二箇所は、いつも通りゲイツ様が岩場にファイヤーボールを撃ち込み、飛び立ったビッグバードを討伐したのだけど、三箇所目で無茶を言う。
「ワイバーン戦の予行演習をしましょう! ルーシー達は、見学です。魔法を撃つのはやめて下さい。後ろからの攻撃に当たったら嫌ですから」
つまり、ファイヤーボールを撃ち込まず、飛んで上から攻撃をする作戦だ。
「いつもの遣り方で良いと思うのに……」
パーシバルに不満を言ったら、笑われた。
「ペイシェンスは、飛ぶの上手くなったではありませんか?」
「でも、人間は地に足をつけておいた方が良いと思いますわ」
飛べるけど、飛びたいとは思わないんだよね。ヘンリーは、凄く飛びたがっているけど。
あっ、ワインの蔵開きにはヘンリーも連れて行って、思いっきり飛ばしてあげたいな。王都だと人目があるから、低いところまでしか飛んではいけないと言い聞かせているんだ。
「ペイシェンス様、私の側にいるようにして下さい」
私的には、パーシバルの側に居たいけど、作戦でそう決まった。
「ペイシェンス、ゲイツ様の側なら安心です!」
パーシバルにそう言われると従うしかないけどさ。
空を飛ぶのはできる。でも、やはりちょっと怖い。
昨日の魔物は、地上にいたから攻撃し易いと実感できたけど、今朝のビッグバードはあちらも飛ぶんだよ!
「さっさと上から攻撃しましょう!」
ファイヤーボールを撃ち込んでいないから、まだ巣でお休み中のビッグバードを上から討伐していく。
ただ、途中からはビッグバードも大人しく巣にはいない。当然だけど、飛び立ってこちらに向かってくる。
「攻撃を躱しながら、討伐する練習です!」
パーシバル、ゲイツ様、サリンジャーさんは、守護のマントを身につけている。私は、寒いのが苦手なので、薄いダウンコート。でも、守護のペンダントを常に身につけているけどね。
「私のペンダントは、魔法を反射するから、私の前は危険ですわ!」
ゲイツ様の横だけど、庇おうとして少し斜め前に位置しているから注意する。
「ははは、反射の魔法を避けれなくて王宮魔法師を名乗れませんよ!」
それなら、遠慮は要らないね!
こちらに向かってくるビッグバードの首をチョッパーしていく。
「あれ、凄く効率が良いような?」
地面からより近いから、簡単な気がするよ。
「当たり前です! ワイバーンも竜も魔法耐性が強いですが、近くなれば魔法の効力も強くなりますからね!」
パーシバルは、積極的に動いてビッグバードを逃さないように討伐する。
「なかなか良い動きですが、そろそろ討伐もお終いですね!」
うん、もうビッグバードは数羽しか残っていない。
「この方法の欠点は、岩場のビッグバードの死体を下ろさなきゃいけない事ですね」
そう言うけど、ゲイツ様はサッサと地面に降りて、私を手招きしている。
良いのかしら? と思ったけど、体力の限界だよ。
地面に降りたら、クタッと膝が崩れそうになった。ゲイツ様が支えてくれたから、雪混じりの地面に座り込まなくて良かった。
「やはり、魔力よりも体力が問題ですね。もっと魔素を身体に取り込まないといけませんよ」
そうなんだよねぇ。魔素を取り込んで、普通の令嬢並なんだけど、寒さでも体力は削られる。
「空を飛ぶ時の、身体強化が厳しい気がします」
ペイシェンスは、運動神経が鈍い。夏休みに身体強化を習ったけど、ヘンリーみたいな生粋の身体強化とは違う気がするよ。
「ふうむ、兎に角、こんな時こそ、チョコレートバーですね!」
ゲイツ様は、今日は茶色のチョコレートバーだ。ナッツヌガーのだね。
私は、
ルーシーにも手伝って貰って、ビッグバードを地面に下ろした。
今日もゲイツ様のは大山だね。サリンジャーさんも! 私とパーシバルが中山かな。
「ペイシェンス様は、体力強化をしなくてはいけないのが課題ですね! パーシバルは、もっと小回りができたら、より多く討伐できるでしょう」
それぞれ課題を貰ったけど、私の課題は解決できるのか不安。
キャンプに帰って、ルーシー達はハインツ様と討伐に向かったし、パーシバルもゲイツ様達と大物狩りに行ったけど、私はダウンしちゃった。
やはり、身体強化が上手く使えていないんだ。心配そうなメアリーにお茶を入れてもらう。
シュトーレンを食べたら、昼まで休もう。
討伐から帰ったら、ヘンリーに身体強化を教えて貰おうと思いながら寝たら、夢に愛しい弟達が出て来てくれて、めちゃくちゃハッピー!
✳︎
「お姉様、飛竜とワイバーンは違うのですか?」
勉強熱心なナシウスの質問だ。教えても良いけど、自分で調べた方が身につくよね。
「ナシウス、魔物辞典で調べてごらんなさい」
すぐにナシウスが重たい魔物辞典で、飛竜とワイバーンを調べている。夢だから、魔物辞典を探す時間は短縮だ。
「お姉様、飛竜のお肉は前に頂きましたが、ワイバーンとどちらが美味しいのでしょう?」
可愛いヘンリーの無邪気な質問だ。そろそろ、教えてあげても良いかしら?
「ワイバーンと飛竜のお肉、どちらも美味しいと思いますよ! だって……」
あらら、夢から醒めた。
「お嬢様……」
うっ、メアリーが令嬢らしくない寝言に呆れている。ベリンダは、爆笑している。
「違うのよ! 夢の中で、ヘンリーに質問されたから、答えようとしただけなの。南の大陸では飛竜と呼ばれているけど、ワイバーンと同じだとナシウスも魔物辞典で調べたら分かった筈だわ……ああ、夢なのよね」
寝ぼけていたみたいだけど、良い夢を見て体力も気力も回復したよ!
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