第72話 飛行隊、結成!
結局、ブラウニーは皆で食べることにした。全員、バテバテだったからね。
女子テントには、男の人は入れないから、メアリーにお茶を食事場所に持って来て貰う。
それと、ブラウニーの残りと、ブランデーケーキと、ゲイツ様に渡すチョコバー三本もね。これ、私が何故、女学生達の指導料を払わなきゃいけないのか、疑問だよ! でも、そうなるんじゃないかと思っていたんだけどね。ゲイツ様に洗脳されちゃっているのかも?
ゲイツ様は、負けたのでブラウニーを二つ持って来たけど、私の提供したブランデーケーキを食べている。まぁ、そうなるだろうと思っていたけどさ。
「ブラウニーも美味しいですが、ブランデーケーキは絶品です!」
干し葡萄も良いアクセントになっているよね! パーシバルも気に入ったみたい。
「ペイシェンスのケーキは、どれも美味しいです」
そんな事を言われたら、デレデレしちゃうよ。つい、いちゃいちゃモードになるのは仕方ないよね。婚約中なんだもの!
「サリンジャー、王宮魔法使いで飛びながら魔法攻撃ができるのは何人でしょう」
それ、ゲイツ様知らないの? 本当にサリンジャーさんに丸投げなんだね。
「ほぼ全員が飛べるようにはなりましたが、飛びながら魔法攻撃できるのは、まだ数人です」
指導が甘い! と叱っているけど、書類仕事も全部怠けて、サリンジャーさんに任せているからじゃん! あっ、秋の食事会の材料を集める事に熱中していたのでは?
「サリンジャー様もブランデーケーキをどうぞ」
ブラウニーは女学生達に大人気で無くなっちゃった。仕事を丸投げされているサリンジャーさんが気の毒だよ。
「ペイシェンス様には、是非とも魔法省に来て頂きたいです」
あっ、ちょっと甘い対応をすると、サリンジャーさんもぐいぐい押してくる。
「私は、ロマノ大学を卒業したら、パーシー様と結婚致しますもの!」
これ、キチンとNO! と言っているよね! 全く聞く耳を持たない二人は、ほっておいてパーシバルとお茶とブランデーケーキを食べよう。他の人がいなかったら、アーンしたいよ。
「騎士で飛びながら攻撃できるのは、何人いるのでしょう」
仲良くブランデーケーキを食べているのに、ゲイツ様を
パーシバルは騎士関係に弱い。まんまとゲイツ様の話に食いついてしまった。
まぁ、そこらへんの青さも好きなんだよ。
「飛べる方は増えていますが、飛びながら攻撃できる方は少ないです。サリエス卿、ユージーヌ卿、ガブリエル騎士団長ぐらいでしょうか?」
ガブリエル騎士団長、スレイプニルも手に入れているし、やはり実力者なんだ。まぁ、第一騎士団長なんだから、当たり前だよね。
「ユージーヌ卿は、女学生達の指導役ですか? ジェニーとリンダは、飛べるけど攻撃はできない感じだし、ハナは飛べませんね。もっと強化が必要です」
それって、竜の脅威に備えてなんだよね。思わず身震いしちゃう。パーシバルが抱きしめてくれたので、少しホッとした。
「ペイシェンス様、そんな呑気な事では、王宮魔法師になれませんよ!」
いや、なる気は無いし、何回も断っているよね! さっきも断ったばかりじゃん!
それなのに、ルーシーやアイラは「女性の王宮魔法師、素敵です!」と喜んでいる。
「ゲイツ様、もしかして……」
パーシバルは、討伐初日からゲイツ様が北の空を見ていたのを気にしていた。
「ペイシェンス様が銀ちゃんと言われたので、そちらを気にしていたのですが……どうやら、空の方が怪しいです。だから、飛行しながら攻撃できるメンバーを鍛えなくてはいけないのに、ペイシェンス様は呑気に婚約者といちゃつく事しか考えておられないし!」
「いちゃついていませんわ! それに……やはり銀ちゃんの気配を感じます。今日、空を飛んでいたら、銀ちゃんの鳴き声を聴いたような気がしたのです」
ガッと肩をゲイツ様に掴まれた。真剣な顔だと、綺麗な顔なんだよね。パーシバルが、手を放させてくれたよ。
「ペイシェンス様、それを早く言って欲しかったです。もしかして、銀ちゃんが今年はワイバーンを追いかけて遊んでいるのかもしれません」
ワイバーンって、準竜だよね。魔物図鑑で見たけど、前世のプテラノドンみたいな魔物。
「ワイバーンらしき魔物の群れが、あちら、こちらに移動していて、変だと思っていたのですが……銀ちゃんは、ペイシェンス様に会いに来るのですね! ワイバーンと一緒に!」
全員が緊張しているけど、ゲイツ様は謎が解けたと笑っている。
「ワイバーンなんて、ビッグバードの親方みたいなものですよ。ただ、魔法耐性が強いし、魔法攻撃も物理攻撃もバンバンしてきます。竜討伐の練習に良いでしょう!」
サリンジャーさんは、ゲイツ様を信頼しているから、さっさと飛行隊メンバーの選出に取り組んでいる。
「ゲイツ様、ペイシェンス様、パーシバル様、サリエス卿、ユージーヌ卿、ガブリエル騎士団長、それと私と上級王宮魔法使い三人ですか……アルーシュ王子はどうしましょう?」
ゲイツ様は、少し考えて「参加して貰いましょう。私の守護魔法のマントを貸しても良いですしね」と笑う。
「ああ、私は参加なんですね……銀ちゃん、スレイプニルの方が良かったよ! それと、魔物で遊ばないように言い聞かせなきゃ……」
何故か、全員に爆笑されちゃった。アイーシャ王女は、銀ちゃんのことは知らない筈なのに? あっ、アルーシュ王子に聞いたんだね!
えっ『わかった!』って銀ちゃんの鳴き声がした気がしたんだけど?
「ペイシェンス様! 銀ちゃんと話せるのですか? そんなに近くまで来ているのに、私は全く気配を感じ取れないのです。去年は、遊んでいる無邪気な幼いフェンリルの気配が分かったのに……修練を怠っているのかもしれません」
修練はしたら良いと思うけど……ハッキリしていない。これで、銀ちゃんが来なかったら、毎日食事を要求されそう。
「いえ、気のせいですから……でも『わかった!』と返事があったような……いやいや、スレイプニルも要りませんから!」
力一杯叫んだのだけど、銀ちゃんの返事はない。その上、スレイプニルの単語に反応して、オーディン王子がやって来た。はぁぁ……疲れる。
明日の午後からは、飛行隊の訓練開始だ。昼からは、女学生達は、またお爺ちゃん王宮魔法使いのハインツ様の指導に戻るけど、ワイバーンが来ると聞いたので指示に従う。勝手な行動をしたら、死んじゃうからね。
そこら辺は、こちらの世界はシビアだから、皆、ちゃんとしている。
約、何人かが騒いでいるけどさぁ。スレイプニル愛が激しいのは理解できるけど、先ずはワイバーンを討伐しないといけないんだ。
リチャード王子は、スレイプニルを貰ったみたいだけど、キース王子は貰えなかったみたい。まだ王立学園の学生だし、スレイプニルが増えてからだよね。
「「スレイプニルを捕獲したい!」」
ああ、キース王子とオーディン王子がダブルで騒いでいる。オーディン王子には
ああ、良かった! リチャード王子が喝! を入れてくれた。
「魔物討伐の秩序を乱すような行いをするなら、王都に戻りなさい!」
二人の王子を、ラルフとヒューゴが連れて行ってくれた。やれやれ!
学生会長のラッセルも厳しく注意しているから、王子達は大丈夫だよね。
今年もテントに侵入したりしたら、ベリンダがぶん殴りそう。ユージーヌ卿も手厳しかったけど、一応は配慮していたけどさ。
でも、お偉い様のテントに、私とパーシバルもドナドナされちゃった。
疲れたから、食事をして寝たいんだけど……まぁ、ブランデーケーキで空腹じゃないけどね。
「サリンジャー、飛行できるメンバーを集めて下さい。明日から、特訓です。ワイバーンは、ちょっとコースを逸れてはいますが、二、三日中にはシュヴァルツヴァルトに到着するでしょうし、空にワイバーンがいると魔物が暴走するかもしれません」
それって、スタンピートじゃん。銀ちゃん、怒るよ!
リチャード王子、ガブリエル騎士団長も厳しい顔だ。
「飛行部隊と他の部隊の連携を取らないといけないが……ワイバーンは討伐できるのでしょうか?」
ゲイツ様は、笑っている。
「リチャード王子、ワイバーンごとき討伐できないでどうするのです! あれは、ビッグバードをちょっと強くした程度です。ただ、空を飛んでいるから、厄介なだけですから、こちらも空で迎撃します」
おお、流石、王宮魔法師だ! パチパチと拍手したい気分だ。リチャード王子もホッと息を吐く。
「それと、キース達がスレイプニルについて騒いでいたが、あれはどういう事なのだ?」
えっ、ゲイツ様が説明したら良いじゃん! 駄目なの? リチャード王子とガブリエル騎士団長の圧が強い。パーシバルの影に隠れたいけど、前に押し出されてしまった。
「ええっと……ゲイツ様が銀ちゃんがワイバーンと遊んでいると言われたので、そんなの迷惑だから『銀ちゃん、スレイプニルの方が良かったよ!』と叫んだら『分かった!』と返事があったような気がしただけです。慌てて、否定したのですが……返事がなくて……」
ゲイツ様がゲラゲラ笑っている。
「まぁ、銀ちゃんが追いかけ回さなくなったので、疲れたワイバーンも羽根を休めています。あのままだと、明日にもシュヴァルツヴァルトに着いていたかもしれませんが、二、三日の余裕ができましたね! ワイバーン戦の後で、魔物の暴走も到着しそうではありますが、スレイプニルを得る良い機会です!」
ううう……これって、私のせいなの?
「そうだな! ワイバーンは、竜の討伐の良い訓練になるし、魔物討伐も皆の実戦になる。スレイプニルは、もっと欲しかったのだ!」
リチャード王子、前向きだね。ただし、厳重注意されちゃった。
「ペイシェンス、銀ちゃんに魔物で遊ばないように言い聞かせなさい!」
これは、全員から凄い圧を感じたよ。
「それもちゃんと叫んだのですが、無視されちゃったのです」
ゲイツ様に「テイマーとしての訓練が足りていませんね! だから、ロマノ大学では魔法学科を選択するべきなのです」と叱られたけど、魔法学科にもテイマーの教授はいないんじゃないかな?
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