第159話 魔法的乗馬術
私じゃなくて、
サンダーやジニーの世話を受け入れる様になったんだ。これ、大事!
朝の運動はするけど、夜は行かなくて良くなったんだよ。
空き時間に身体をちょこちょこ休めて、なんとか体力の調整をしている。
今日も、昼からは本当はお休みしたいけど、ゲイツ様が馬術訓練にやってくるんだ。
「私も一緒に受けたいぐらいです」
パーシバル、本当に代わって欲しいよ。昼食を終えたら、寮に送って貰う。メアリーが来ている。
ゲイツ様は独身だから、侍女の付き添いが必要みたい。なら、学園は? 少し皮肉な気分になるけど、余計な事は言わないよ。
乗馬服に着替えて、特別馬房に行ったら、もうゲイツ様と何故かサリンジャーさんも来ていた。
「サリンジャー様、何故ここに? 仕事は良いのですか?」
にっこりと笑って「逃げ出されるより、見張っていた方が楽なのです」とサラッと言う。
ああ、中間管理職の悲哀を感じるよ。
ゲイツ様は、サンダーから
「かなり、人に慣れた様ですね。これなら、グレンジャー家に連れて帰れそうです」
あっ、まだ馬房は作っていないんだよ。ワイヤットに頼んではいるけどね。
「あれっ? もしかして馬房が狭いのですか? それなら、そうと言って下されば、魔法省に建てさせますのに! この特別馬房も、2日で建てたのですよ」
サリンジャーさんが頭を抱えている。きっと無茶をさせたんだね。
「いえ、冬休みまでには間に合う筈ですわ」
断っておくよ! 魔法使い達の恨みを買いたくないからね。
「それでは、乗馬訓練をしましょう!」
それが目的だからね。
「ここでは狭いので、馬場でしましょう」
簡単に言うけど、乗れないんだよ!
「ペイシェンス様、乗馬台まで引いて行きましょうか?」
ゲイツ様は、クスクス笑う。
「それでは、進歩がありませんね! 乗馬台がなくても乗れる様にならなくては」
うっ、なら跪いて貰うしか無いのかな?
「ペイシェンス様、空気で階段を作るのです。土でも良いですが、壊すのが面倒ですよ」
ゲイツ様が、
「先ずは、これで乗る練習をしましょう」
薄く見える空気の階段を1段、2段と登ったら、鐙に足が届く。
「ああ、もう1段必要みたいですね」
3段目が現れて、そこに登ったら、鞍に座れた。
「鞍壺に片脚を掛けて、片脚を鐙に置いて下さい」
貴婦人乗りは、家庭教師のカミュ先生に詳しく教えて貰ったからできる。
「ふぅ、乗るのはできましたね。では、馬場まで行きますよ」
えっ、いつの間にかゲイツ様とサリンジャーさんは戦馬に乗っている。
「素早いですね!」
私が褒めたら、サンダーとジニーが深い溜息をついたよ。これが普通みたい。
「
「ブヒヒン!」やっとか! って言われた。
馬場まで歩くのはできる。馬でも歩かせるのはできていたし、
「さて、これからは乗り降りの練習です。降りるのも、乗る時と同じですよ」
えっ、いきなり実践ですか?
「ブヒヒン!」早くやれ!
「空気の階段よ、出ろ!」
片脚を鞍壺から外して、鐙に体重を掛けて、外した片脚をエア階段に置く。
そして、鐙から外した脚を1段下へ、あとは降りるだけだ。
「できたわ!」
「ブヒン!」よし! と褒めてくれたよ。
「さぁ、何回もして、素早く乗り降りできる様になりましょう!」
うっ、厳しいね。
でも、一度やったら、簡単に乗り降りできる様になった。自分で、自分を褒めたい気分だったのに……。
「では、1人で走らせる練習ですね」
えええ、それは早いと思うよ。
「走るのは、パーシバル様がさせておられるから……」なんて言ったら、全員から睨まれた。
「ほら、乗りなさい」
渋々、乗ったら「ブヒヒン!」走るぞ! と
「身体を真っ直ぐに!」
横を並走しているゲイツ様から指示が飛ぶ。
「もう少し、ゆっくり走って!」
「ブヒヒン!」十分ゆっくりだ!
確かにパーシバルと2人で乗っているよりゆっくりな気がする。
30分ぐらい走らせたら、こちらが体力切れになった。
「もう降りるわ」
馬場の柵の横で、階段を出して降りる。
脚がガクガクしているよ。
「まぁ、今日はここまでにしておきましょう」
土曜のすき焼きパーティに呼ぶのやめたくなったよ。
「この調子で練習すれば、
うっ、それを言われると仕方ないかなって思ってしまう。主人としての方じゃなく、絆の方だよ。
馬房まで歩かせて帰って「綺麗になれ!」と掛けておく。
「ご褒美のニンジンよ!」
嬉しそうにニンジンを食べる。
「ブヒヒヒン?」
夜は来るのか? そんな事を言われると弱い。ヘンリーが明るくないと眠れないと言っていたのを思い出しちゃう。
「行くわ!」と答えるしかない。
「ブヒヒン!」待っているだってさ。
ゲイツ様は、私と
「信頼関係がつくられているようですね。これで、乗馬技術が身につけば、良いのです」
乗り降りはできるようになったけど、他は?
「
そんな事言われても、下手なんだから仕方ないよね?
「
えっ、やっと馬房に帰ったのに?
エア階段を登って鞍に座る。
「ああ、そこですよ! 椅子に座るのとは違います。
難しいね。エア椅子じゃなくて、エア鞍だよ。
また馬場まで歩かせるけど、揺れない!
「ブヒヒン!」その調子だ!
馬場に入ったら「軽く走らせてみてください」と言われた。
「
鞍の上の空気の層を意識して、軽く乗っている感じをキープしたら、あまり上下しないし、お尻も打たない。
「ブヒヒン!」良くなった!
なんて喜んだら、大暴走してくれました。
「
3周して止まったけど、あれ? お尻は痛くない。浮かせている感じだったからかな?
パチパチとゲイツ様とサリンジャーさんが拍手してくれた。
それにサンダーとジニーも嬉しそうだ。関係ないのに、バレオスまで見学に来て、手を叩いている。
「なかなか様になっていましたよ。この練習を毎日少しでも良いから続けましょう」
「ブヒヒン!」そうしろ! と
もう一度、馬房で「綺麗になれ!」と掛けて、レッスン終了だ。
「ゲイツ様、サリンジャー様、ありがとうございました!」
サロンの喫茶タイムは終わっているし、メアリーに持って来て貰ったチョコをあげて解散だね。と思っていたけど、学園長室にドナドナされた。
えええ、学園長って話が長いから苦手なんだよ。
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