第43話 青葉祭 学生会の手伝い
コーラスクラブの発表をマーガレット王女と聴く。
「午前中は初等科の学生だけなのね」
多分、コーラスクラブも騎士クラブの試合中は客の入りが少ないだろうと考えたのだろう。あっ、ルイーズも舞台に並んでる。
「まぁまぁね」
マーガレット王女の辛口の批評だが、私も同感だ。下手ではないが、取り立てて良い点もない。よく練習したコーラスだし、音も外してはいないが、ソロパートとかがイマイチだ。
「3年生だから選ばれたのかしら? それとも伯爵家だから? ヘレナはあまり声が伸びていないわ」
ソロはマーガレット王女の同級生みたいだね。コメントは控えておこう。
音楽クラブ2番目の新曲発表も素晴らしく、拍手喝采だった。
「新曲発表会は大成功だわ」
嬉しそうなマーガレット王女だけど、3番目の発表は少し不安だ。
「マーガレット、こちらだ」
リチャード王子が衝立の前で呼んでいる。衝立なんていつもは無いのに?
「保護者達がいちいち挨拶に来るから、衝立を出して貰ったのだ」
なるほどね、既にキース王子も席についていた。
「お兄様、学生会が忙しいのでは?」
メニューを見て「ステーキ」と即決したリチャード王子をマーガレット王女は心配する。普段より気が立っているのは明らかだ。
「いや、事前の調整の方が厄介だよ。当日は……まぁ、何件か苦情はきたが、何とか対処しているよ」
キース王子はそんな兄上の手伝いをしたいとそわそわしている。リチャード王子は、全く目に入ってないようだ。
「音楽クラブの新曲発表会はとっても素晴らしかったのですよ。キース、騎士クラブの試合はどうでした?」
キース王子は「前評判通りエリック部長が優勝しました」と少し不貞腐れた感じで答える。
ああ、リチャード王子の眉が上がったよ。今日、学生会長が忙しく無いわけがないじゃん。その上、衝立を出して貰わないと食べれない状態なんだよ。気が立っているのはマーガレット王女も分かって話をふったのに、雰囲気読めないよね。目の合図が来た。やれやれ
「学生会のお手伝いは初等科でもできるのでしょうか?」
キース王子がステーキを切る手を止めて、私を見る。いや、私じゃないですよ。
「そうか、ペイシェンスは午前中で発表会は終わったのだな。手伝って貰おう!」
キース王子がもろにがっかりしている。
「キースの騎士クラブも試合が終わってますわ」マーガレット王女のフォロー。
「そうだな。人手はいくらあっても良い。キース、手伝ってくれ」
おお、ご主人様にボールを投げて貰ったように尻尾を振っているよ。
「ええ、勿論です!」
ええっと、私は午後は自由時間だったんだよ。劇を観てから、錬金術クラブの発表を見に行くつもりだったけど……『キース王子の面倒を見ろ!』マーガレット王女って凄く目で合図するのが上手だ。断ってはいけないんだね。側仕えは辛いよ。
「では、さっさと食べて学生会室に行くぞ。デザートは結構だ!」
給仕に勝手に私達のデザートをキャンセルしてさっさと席を立つ。
「マーガレット様、よろしいでしょうか?」
1人で置き去りにする事になる。
「ええ、キャサリン達が居たから、一緒に劇を観るわ。さぁ、急ぎなさい」
リチャード王子とキース王子の後ろについて行く。歩くの早いね。コンパスの違いかな?
「あっ、ラルフ様やヒューゴ様も昼からお暇ですよね。キース王子、誘われたら?」
上級食堂サロンで見かけた2人を巻き込む。だって私はキース王子の側仕えじゃないもん。面倒はそっちで見てね。
「そうか、なら2人にも手伝って貰おう」
リチャード王子は簡単に許可を出す。あっ、私がキース王子のお守りをさせようとしたの分かったんだね。本当にできる王子だよ。
学生会室って広いね。その広い学生会室は苦情を言う学生とその相手をする学生会メンバーの喧騒で満ちていた。回れ右して出ていきたいよ。
「諸君、うるさいぞ! 冷静に話をしろ」
おお、鶴の一声だ。シーンとしたが一瞬だった。
「学生会長、第二グラウンドは我がラッフルクラブが終日使用する許可を取っている。なのに、乗馬クラブの馬が草を食べているのだ。そこの学生会メンバーに追い出すように言ったが、聞かない」
縦も横もでかい大男が吠える。うるさい!
「ジェフリー、ここで文句言うぐらいなら、乗馬クラブに直接言うんだな」
手であっちへいけとリチャード王子が命令する。
「何故、私が馬術クラブに頼まなくてはいけないのだ。許可は学生会が出したのだ。それを実行する義務もあるだろ」
ジェフリーは脳筋では無さそうだ。リチャード王子に論理立てて文句をつける。
「分かった。キース、乗馬クラブに行って、馬を第二グウンドから出させろ。あっ、ラルフとヒューゴも一緒に行け」
ふと3人を眺めてから「ペイシェンスも一緒に行け」と命じる。キース王子が暴走した時、あの2人では止められないと思ったのだろう。やれやれ
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