第4話 教会に行く準備
「ペイシェンス、入りなさい」
書斎は落ち着いた雰囲気で、ここに籠る気持ちが理解できた。男の隠れ家というか、現実逃避するのにぴったりな空間だ。
「お父様、何か御用でしょうか?」
ペイシェンス変換されて、お上品な質問になった。
「そこに座りなさい。そろそろ、お前も教会で調べて貰わないといけないと思ってね」
ゲゲゲ……憑依がバレたの? 悪霊祓いとかされるの? 私は真っ青になった。
「そんなに緊張しなくても良い。魔法の能力を調べるのは簡単だから。きっとペイシェンスは生活魔法が使えると思うぞ。ユリアンヌも生活魔法が得意だったからな。学校に行く前に調べて貰っておいた方が良いのだよ」
にっこり笑う父親に、ほっとするが、生活魔法? ペイシェンス! 教えてよ。
「生活魔法って?」
ペイシェンスの記憶をググるつもりが、声に出ていたようだ。
「おや、生活魔法は生活に使う魔法だよ。多くの人が使えるけど、ユリアンヌは特別上手かった」
分かったような、分からないような父親の説明より、ペイシェンスの記憶の方が親切だ。
生活魔法とは、火をつけたり、水を出したり、灯りを点したり、お掃除したり、身体を清潔にしたりと、なかなか便利な魔法のようだ。
『お約束の魔法ですか!』
転生して、剣と魔法の世界へ! わくわく冒険物語みたいだけど、貴族なのに貧乏だし、どうも生活魔法は庶民でも使える人は多いようだ。というか、メイドとかに便利な魔法みたい。
「明日、教会で調べて貰おう。メアリーに言っておきなさい」
執事には父親が伝えるみたい。メアリーに言うのは、何故なのか? ググると、あれこれ分かった。
まず、外出着の用意。そして、侍女としてメアリーは付いて来なくてはいけないので、その準備。家にはメアリーしかメイドがいないから、出かけるなら他の仕事もあらかじめしとかなきゃいけない。
「メアリー、明日、お父様と教会へ行くの。魔法の能力を調べて貰うみたい」
掃除をしているメアリーは、大変だとバタバタし始めた。
「お嬢様、コートは……。着てみましょう」
部屋の箪笥に掛けてあったコートを着てみたら、ぱつんぱつんだけどどうにか大丈夫だった。
「学校が始まるまでに新しいコートを作らないといけませんね」
メアリーは深い溜息をついた。そんなお金ありそうにない。どうするのかな?
青い外出着は、何処かから持ってきた。今着ているのより生地もしっかりしているし、暖かそうだ。
「これを着てみて下さい。少し大きいかもしれません。サッシュで締めれば大丈夫だと思うのですが……」
どうやら親戚の女の子のお下がりのようだ。今のより暖かいので文句は無い。
「少し肩を摘んでおきましょう」
メアリーは、まち針を何箇所か止めて、注意しながら脱がせる。きっと、明日までになおすのだろう。
私は泥縄だけど、ペイシェンス頼みだけではなく、生活魔法を調べてみようと思った。それと、教会についても。
ペイシェンスの記憶をググっても教会についてはあまり出てこない。母親のユリアンヌの葬式をした悲しい記憶だけだ。
どうもグレンジャー家は信心深くなさそうだ。ローレンス王国の皆が信心深くないのかどうかは分からないけど、私的にはがちこちの信者とかは無理なので、そこは良いんじゃないかな。
信心深く無くても、能力チェックは教会でするようだ。
『ラノベとかの能力チェックでは、転生者は全魔法が使えたりするチート能力が見つかって大騒ぎになったりするけど……』
それで王子様のお嫁さんになったりするのは、肩が凝りそうで勘弁して欲しいが、ある程度のチート能力があれば、この現状を改善できるかもしれないと期待もしちゃう。でないと、餓死しちゃいそう。いや、それは大袈裟かも……
弟達にはもっと良い食事を取らせたい。勿論、私もだし、ガリガリの父親にも必要だ。なんてことを考えながら、貧乏なのに立派な図書室に着いた。
「ここの本を売れば……」なんて口にしたら『駄目!』と凄い頭痛がした。
「冗談だよ」とペイシェンスの記憶を宥める。これって本当に面倒。これから、グレンジャー家の為に何か令嬢がするべきじゃない事をする度に、止められるのかな?
『まぁ、その時は
どうやらペイシェンスもかなりのブラコンというか、母親が亡くなってからは愛情かけて面倒を見ていたようだ。ペイシェンスもまだ10歳なのにねぇ。
ちょこっと生活能力のない父親に文句を言いたくなったが、母親が亡くなる時に誓ったようだ。
「ナシウスとヘンリーの面倒をちゃんとみるわ」
悲しい記憶に胸が締め付けられる。そんな誓いがなくても、可愛い弟達の面倒はみるけどね。
「生活魔法……教会……」
窓がある面以外は天井まで本がびっしりだ。本の背を読みながら、生活魔法と教会について書いてありそうなのを選ぶ。
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