よりるれろ

エリー.ファー

よりるれろ

 涙を拭いて欲しい。

 この物語は完全に終了する。

 多くの人の喜びと悲しみを含んだ起承転結は一瞬だけ星のように輝いた。けれど、そこから先には一切の闇が続いている。

 君と同じだ。

 この物語は息をしていて、そして、それはいつか過去になり。

 死へと落ち着く。

 悪いことじゃない。

 どんなものだって、そうなる運命だ。

 これは命というものが持つ、特徴ではない。逃れることはできない。そんな単純で当たり前の事実だ。

 良い物語だと思う。多くの人の心を虜にしたし、簡単に読み解けるものではないからこそ、深い思考、濃密な解釈、圧倒的な快感を描き出した。

 すべてが正解だ。

 もう、これ以上はない。


 物語の完結は新たな物語の幕開けでもある。

 私たちは、常に更新されることを望んでいる。そして、それは世界もだ。

 多くのことを失っている。多くのものも失っている。

 手に入れたものはそれ以上に大きく、失わせるのもまたその手に入れたものなのだ。

 私たちには多くの回答がある。それは、一つの質問でも、全く存在しない質問についてもそうだ。

 立ち向かうのではなく、ここにあり続ける。努力によって維持されるのではなく、存在そのものが証明をしてくれる。

 失ったと気づかせて、失わずにはいられない自分の人生を憂い、失い続けるのかと落胆する。

 死ぬ以外に残らないその道を、その目に焼き付けさせるのが私たちの仕事なのだ。


 


 物語は、間もなく終わる。

 私たちが、私たちの知る存在になることでしか利益を手にできない結論は消えてなくなる。

 完全である。これ以上の問題は発生しない。

 繰り返し行われた始まりと終わりは、永遠に続く人々の欲望を乗せている。いずれ、神にも近い存在だと勘違いをしはじめる頃に物語は語り継がれるようになる。忘れられなければならない物語は、この世に多く存在する。人間は、その違いを見分けることができなくなってしまった。

 これが、物語と人間の乖離である。

 物語の価値を見失ったという文化そのものである。

 言葉を失っているのは、私だけではない。言葉を使う者たち、すべてに関係する問題である。

 問いではない。

 答えではない。

 物語から始まる一種の催眠である。

 煩わしさから解放されるために、簡略化された世界では真実など分かるはずもない。しかし、口当たりの良さだけが優先されることによって、物語はその形を徐々に失っていくのである。

 物語を作り出さなければならない。

 物語にならなければならない。

 物語を生まなければならない。

 物語を忘れてはならない。

 語る必要はない。残せばいい。

 手放してはいけない。

 そして。

 新たなものだけに興味を持つべきである。

 物語に終わりはない。いずれ、誰かが紡がなくなるまで終わりはない。

 読み続けるべきである。

 読まずに生きることはできない。

 読み飽きることはない。

 読むほどに進む世界である。




「最近、本を読んだんだ」

「何を読んだの」

「何を読んだと思う」

「分からないな」

「君も、本を読んでいたよね」

「うん」

「読み終わったかい」

「いや」

「結構、長く読んでいるね」

「最後まで読んだら、次の物語があったんだ」

「じゃあ、一冊、もしくは一作は読み終わったんだね」

「いや」




「まだ、読み終わっていないんだ」

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