無花果の花のひとりごと

奥森 蛍

眠れぬ夜に

静かな夜、眠れず、格子越しの空を見上げました

燦然と輝く月の尊さに息を飲み

自身の乖離してゆく心を嘆きます

この月夜は全ての者に平等に与えられたものでしょうか

月は何も教えてくれません


幸せな人 孤独な人 生きることに疲れ打ちひしがれた者

彼らの迎える夜は平等なのでしょうか


全てを失った者たちは静かにたたずむ夜を見つめ

私はまだ大丈夫と確かめるようにそっと指先を握りしめるのです

静かな意思と不敗の決意を胸にただ月を見上げて想いを馳せるのです


思えばわたしはたくさんの夢を失いました

仲間、尊厳、そして人生の宝物

それでもわたしは諦めたくないのです

たしかに生きているからです


夜のとばりに想いは消えて

全てを忘れ、ただ純粋に月に見惚れます

未来への不安も、霧散しそうな心も、貴方の孤独も

全て月は知っています


あの夜があったからわたしは立ち上がれたのです

今でも歩いていけるのです



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