最底辺のドクズだが、異世界召喚みたいなのされた。んなのはどうでもいいんだけど、タバコある?
鴉杜さく
第1話 異世界召喚ねぇ...あ゛〜煙草吸いてえ〜
「リンちゃん、またね〜」
ニコニコと誰にでも好かれそうな顔をしながら手を振り彼女が見えなくなると真顔に戻った男。
名前を
超のつくクズである。
顔はいいが、如何せん中身がドクズの為女を釣るための道具としか思っていない。
そして、時には面倒な女や男に絡まれる。
「アキ!! どうして違う女の子といたの......?」
彼は何も答えずにあらぬ方向を向いていると、そばに居た厳つい男共が罵声を浴びせてきた。
「リオ様がそう言ってるんだ!! 何か答えろや!!!!」
紫呉は懐から煙草を出すと吸い始めた。
紫煙を吐き出しながら彼は彼女が最も傷つくであろう言葉を放った。
「1、2回程度寝てあげただけの女にとやかく言われる筋合いないし。大体彼女でもないリオちゃんが何かを俺に言うのはお門違いだろ」
それを言われた『リオちゃん』は涙をこれでもかと言うほど貯めた。
「アキくんは、そんなこと言わない!! 元のアキくんに戻って!!!」
それを鼻で笑い飛ばす男。
それが秋雨 紫呉である。
「ふっ。ふふふっ。
これが元々の俺だよ。君が初めてだって言うから優しい方がいいと思って猫被ってたの。どう?愉しかったでしょ?」
今まで貯めていた涙は頬を伝い、流れ落ちていた。
「あ〜。俺、五月蝿い女、嫌いなんだよね......慰めてもらえば? そいつらに」
カッとなって殴りかかってくる男たちを彼は、急所を狙い直ぐに倒していった。
倒された男たちが積み重なる上に座った彼は、カチリとライターで煙草に火を付けた。
先程、殴り合いが始まったが故に吸いきれなかった紫煙を吸い込んだ。
「で? リオちゃん? この状況でキミはなにをする?」
ヒッと短く悲鳴をあげ、喉を痙攣させると彼女は這うようにして逃げていった。
「つまんな」
彼はそれだけ言うと、彼らから降りて吸っていた煙草を近くのゴミに投げ入れた。
「はやく逃げないと死ぬよ」
艶やかに笑い、彼は去っていった。
残されたそこには、燃え盛る炎だけだった。
そんなクズ男である、秋雨 紫呉だが数日後に失踪する。
探偵は困っていた。
ひっきりなしに、今日は依頼がくる。
それ自体はとても嬉しいことだ。
依頼料だってみんな高額なのだ。
嬉しくないはずがない。
依頼主はみな若い女の子だった。
それぞれがある一人の男を探せと、依頼してくるのだ。
「アキくんを探してください。連絡が数日前から取れないんです」
捜索願を警察に出せとは言えない。
出したくない事情が彼女らにはあるのだから。
彼女らの姿はみな、似たり寄ったりだ。
共通しているのは、軽そうで夜遊びをしている。
もしくは、し始めたばかりのような女の子たちだ。
「探せと言われましても、ねぇ。そのアキくんとやらは多分この間の新聞に載っていた突然失踪した青年でしょう? どうやって探せと言うのですか?」
スクラップブックを取り出し、最新のページを依頼主の目の前に置く。
そこには『突然の光 青年と学生が巻き込まれたか』
などという見出しから始まる新聞があった。
数日前、社会科見学をしていた高校生と丁度同じ道を歩いていた青年が突如現れた眩い光に巻き込まれその場から忽然と姿を消した。
幸いにも、巻き込まれた学生の身元は特定が済んでいる。
親御さんたちにも説明が終了している。
しかし、問題は青年の方だ。
彼は身元が未だに特定できてはおらず、未だに誰なのかが全くもって分かっていない状態だ。
しかし、ここ数日の依頼のおかげで誰なのかは想像が着いた。
夜の街では、誰もが知ってるいる。
通称、『アキ』。
喧嘩の腕もたつ。
そして、女の子を食い物にしている男だ。
軽薄で、軽い。
でも、優しい。
そんな彼に落ちる女の子も少なくないという。
「で? これはどういうこと? 国王様?」
首元に手をかけられ玉座から引き摺り下ろされた豪華絢爛がまさにこの事かという服装をした男。
それは、この国『エルマンド王国』の国王その人だ。
その男の首に手を掛けているのは、制服を来た女子生徒だ。
彼女の長い爪が首に突き刺さり僅かに傷を作り始めていた。
「杏里ちゃん、その辺にした方がいいんじゃないかな?」
「お前は私に指図すんな。
そんな緊張した場にカチリとライターを押す音が響く。
その音源の方へと向くと、周りの騎士たちをノシた後にその上に座り煙草を吸う男がいた。
秋雨 紫呉。
そう名乗った彼だ。
なぜ、このような状況になっているのか。
それは、些か説明が必要だろう。
時は遡り、彼がリオちゃんの男どもを倒した後にまで遡る。
アイツらもつまらなかった、と彼は独り言を呟きながら勤務先であるバーへと向かっていた。
信号で横断歩道のところで止まったとき、前に小さな集団がいた。
高校生らしかった。
毎年恒例の地域について知るやつかと思いながら、信号を待っていた。
周囲には彼と高校生の集団しかいないのが不思議だったが、特に気には止めていなかった。
信号が青に変わろうかというとき、地面から光が漏れだし彼らを呑み込んだ。
叫ぶ暇もなく呑み込まれた。
しかし、打ち上げられた景色は周囲一体が星空だった。
地面は遥か先。
急速に迫り来る地面。
彼はこんな高所から落ちて受け身を取っても意味無いと理解しながらも癖で受け身を取った。
身体強化が施されたのか、一切の怪我もなく地面を転がる羽目となった高校生らと違い彼はその場に着地した。
ここどこなどと言うのは高校生らしいね、と思いながらも彼は何故か箱が沢山の場所を眺めていた。
すると、どこからかとたとたとした走る音が聞こえてくる。
姿がやがて見えてきたが、異世界ものに出てくる修道士の格好をした若い女と騎士だった。
見た目だけ見れば、かわいい部類に入ると思われる顔をしていた。
その一言目には笑ったが。
彼は箱の上に座り、彼らの動向を観察しどちらに着くかを決めるようだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!! 一応成功したみたいだけどよ、なんだよこの芋臭い連中はよ」
修道女はどうも面食いらしかった。
「どうも〜、はじめましてぇ〜。修道院で聖女やってます〜。カルミナです。覚えないでください〜」
「質問だ!」
「質問とか受け付けてないんでぇ〜。アンタらは異世界に召喚されたのぉ〜。魔王倒したら帰れるからよろ〜。ステータスの合わせしなきゃだから、ステータスって言って、オープンって言ってぇ〜」
彼もそれには従った。
オープンは公開という意味だと勘づいてそれは言わなかったが。
職業:機巧操形
「機巧操形?」
「あぁ、はずれ枠ですね。まぁ、一応対策はあるのですてませんよぉ。ご安心ください〜」
捨て駒などにされるだけだろう。
と考えた彼はそれを鼻で笑い飛ばした。
タンッと地面を蹴る音がしたと思うと彼は既に先程までいた場所には居らず、カルミナの前まで移動していた。
周囲の男どもも反応することが出来ない速度だった。
「ッ! それでレベル1? あなたの身体能力値、狂ってるの?」
「確か、カルミナって言ったっけ? 俺、国に殺される気は毛頭ないからな、覚えておけ」
そういうと、彼は煙草を再び吸い始めた。
異質なほど彼の歩く音だけが響いていた。
彼が元いた箱の上に戻ると、安心したように息を吐き出す者もいた。
「え、えっとそれではステータスをオープンさせて私のところまで持ってきてくださいぃ〜」
当然、彼は持っていかない。
しかし、それとは別にある一人の女の子も持っていかなかった。
気が強そうな女の子だ。
クラスメイトたちは彼女に対してどうするべきか判断し損ねているようだった。
「ねぇ、あなた。あなたって交差点にいた?」
その子は彼に話しかけに言った。
聖女は内心、無駄な争いだけはしないでくれと思いながらその動向を見守った。
「いたけど? 何?」
「いや、やっぱなんでもない。姉さんが言ってた『愛しの彼』に似てたから、つい」
それだけで話しかけるのは凄いなと思いつつも彼は、彼女に興味がわいたのか話をしていた。
「お前って、クラスで浮いてんの?」
「は? なんでよ。……ああ、見せに行かないし、あいつらが私の動向を伺ってるからか」
「そうそう。こんなに顔色伺ってるの見てる方としては面白いけどな」
そういって、この世界にきて初めてにへら~と笑った彼。
「少し前に友達だったやつにいじめられたから、退学させてやった。そしたらああなった。私は何もしてないのにね。あ、あと少しだけ校外で暴力したことがあるからかも……」
「かもって、お前。んふふふふふっ!! お前気に入ったわ、なんかあったら手伝ってやるよ」
「それは珍しいの? あなたにとって」
それを聞くと彼はにやりと笑った。
「珍しいぜ。俺は、強いけどどこにも普段は手を貸さないからな」
「あら、そうなの? だったら、有効活用させてもらおうかな」
二人がなぞの友情をはぐくんでいたころ。
聖女はギリッと歯を軋らせた。
「どうしてこんなにも反抗的な芋が多いのよぉ~」
小声で言うと、途端に笑顔になった。
(そうだ。国王様になんとかしてもらいましょ)
なぜ、国王様かというとこの国は彼女の洗脳で動いているからだ。
だから、傀儡の国と他国から呼ばれていたりもする。
その洗脳は、ステータスを彼女に見せると発動する。
つまり、彼女に見せていない二人以外は洗脳がもう既に始まっている。
洗脳は何度もかけることによって効果を増大させ、より洗脳をとくまでにかかる時間も増大していく。
そんな聖女のジョブは、『魅了士』
名前の通り、魅了を得意とするジョブだ。
聖女はその中でも危険度が高い、『洗脳』をレベルマックスにしている超危険人物だ。
他国では指名手配や入国禁止令など、超危険人物として危険視されている。
彼女には懸賞金もかけられている国もあるぐらいだ。
「今から、夜おやすみになるところへこの騎士たちが案内するからぁ~よろしく」
そう言って、彼女は転移魔法のようなもので一瞬で姿を消した。
そして、騎士たちはどこからか馬車を出しそれに乗せられた。
その馬車で体感3時間ぐらい揺られると、王宮みたいなものが、見えてきた。
「あれが、王宮だ。貴様らが今夜生活をする場所だ。警備はしっかりとしている。安心して使うがいい」
馬車から降りる時、後ろからカサっと音がした。
腰あたりに、紙が挟み込まれていた。
少し尖った字で、
《少し、協力してほしいことがある。今夜、そちらの部屋に行く。窓を開けておいて欲しい》
と書かれていた。
あぁ、少しは面白いかもなと思いながら彼は案内された自室に入っていった。
自室に入ったところで、煙草を移動の間吸っていなかったのを思い出して、ポケットから出して吸おうと箱を見ると、残りが0本だった。
反対のポケットから棒付きキャンディを取り出すとラベルを一気に剥がし、口に放り込む。
くそったれな甘い味が口に広がり、鼻腔から抜けていく。
苦い香りが、味が恋しく、ため息を吐いた。
「異世界召喚とか、どうでもいいわ。あ゛〜煙草吸いてえ〜」
最底辺のドクズだが、異世界召喚みたいなのされた。んなのはどうでもいいんだけど、タバコある? 鴉杜さく @may-be
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