第13話高城と
「まぁ、これ以上俺が言っても意味ねぇんだろうけどさ」
僕が黙ったまま返事をしていないと、痺れをきらした高城が半ば諦めたように首をポキポキと鳴らし、天井を見上げて妥協気味に言った。
「そんなに家に帰りたくないなら、この後俺んちでゲームでもしようぜ。おすすめの奴があるんだ。明日は学校もねーし、姉貴も仕事で居ねー」
「何でいきなり……」
急な提案に困惑したが、高城はそのまま抑揚なく続けて――
「自覚ねーのかもしれねーけどさ。今のお前って見ているだけですげーハラハラして見てられねーんだわ。何か事件でも巻き込まれそうな危うい感じ。そんなら、ダチとして近くで監視しといた方がマシって訳。さ、分かったら、さっさと会計済ませといて行くぞ」
そして、ポケットに手を突っ込んだまま、レジで会計を僕の分まで済ませた高城。
その後家に着くまでの十分程、無言で僕の数歩先を歩いていた。
☆★☆
それまで高城の家に行った事は一度もなかったが、明らかに外観から高級そうな雰囲気が漂ってくるマンションだった。
上品なデザインで、エントランスに入っても床のタイルが大理石が敷き詰められていた。
「良い所、住んでるんだな……」
雰囲気に気圧されて、意識せず呟くと、オートロックのドアの暗証番号を入力しながら高城が言った。
「姉貴の稼ぎで住んでんだよ」
「へぇ…いいじゃん」
「何もよくねぇよ。あのクソ姉貴と暮らして良い事なんでこれっぽちもねぇからな。高校は地元だろうが、大学はぜってぇー上京する」
人差し指を上に突き立てて、舌を出す高城。
「お姉さんと仲悪いんだ」
「仲が悪いっつーか、姉貴の性格がゴミ」
「へ、へぇ……」
「衣食住の住を握られてるからな。文句言えねぇことを良いことに家事全部やらせるんだぜ?」
「……具体的には?」
「飯も全部俺が作ってるし、姉貴の服も全部俺が決めさせられる」
「……まあ、そんなもんじゃないか。普通じゃない?」
「女性の下着売り場で姉貴の分の奴を買いに行かされるのが普通か? え? 危うく店員に通報されかけたわ」
悲壮感を漂わせて、ブルッと肩を震わせた高城。
思い出すだけでも嫌そうだ。
「信頼されてるんだね、お姉さんに」
「……嫌味か?」
フォローするつもりで言ったが、高城の求めていた返しではなかったようだった。
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