第5話関わりたくないのかな



「……ちょっと強引すぎたかな……。うぅん、そんな事ない、そんな事……ない」


食卓テーブルの上に放置されたカップ麺と割り箸を回収し、残っている汁を流しに捨てながら、ため息をついて反省した。


分かっている。


巧は家に入れてくれたけど、私の事を避けている。


別に、今日に始まった話じゃない。


半年ぐらい前からずっとあんな感じ。


私の事を見ているようで、見ていない。


視野に入っていない。


関わりたくないんだろうな、っていうのは嫌でも伝わってくる。


でも、私は巧からしたら余計なお世話なんだろうけど、諦めない。


だって、また目を離したら、巧はもうどこに行っちゃうか本当に分からなくなるから。


私と巧は幼稚園――物心ついた時から互いの両親が家族ぐるみの付き合いをして、家にもしょっちゅう行っていたこともあって、ずっと一緒にいた。


色白で、線が細く、塩顔で、整った顔立ちをしていた巧は、繊細な性格をしていたことからも、よく周りから女の子と間違われて、女子から人気があった。


私もその一人


初恋は巧で、それは今も変わってない。


だから、巧を紹介して欲しいと友達に言われても、適当に誤魔化して手を貸さなかった。



私達はもう中3。しかももう11月。


秋から冬へと移行するこの時期は、当然のように周りの子も、段々進路を固めてきている。


私も決めた。


県で2番目ぐらいに難しいと言われている東雲ヶ丘高校。


模試はB判定とC判定を反復横跳びしているぐらいで、少し不安もあるけどココに行きたい。


理由は……不純なのかもしれないけど、って聞いたから。


巧は「なんでそんなに?」ってぐらいに頭が良い。


必死に勉強している私と違って、巧は授業を聞いているだけで、自習をしている場面をほとんど見たことがない。


せいぜい、試験が始まる30分ぐらい前からだ。


だけど、試験では学年で一桁台。


スポーツも出来る。


あの下手したら女子よりも細い身体のどこにあんな脚力が、腕力があるか信じられないぐらいにある。


どうなってんの……。


十分、東雲ヶ丘のワンランク上にも行ける成績だけど、半年前に起こした事件が原因で内申点の関係上、無理らしい。


――その事件。


私達に微妙に溝が出来始めるきっかけを作ったソレ。


事の一部始終をお母さんから聞いた時、私は巧にどう接していいのか分からなかった。


だって、私の前では何事も無いように振舞っていた巧が、裏であんなどん底にいたことに気が付けなかったから。





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