第4話ホラ、来た
「ちょっと待ってよ。着替えって何だよ。泊まる気なの?」
とんでもない事をさり気無く言った御堂に、思わず声が荒くなってしまった。
そういえば、さっきの恵美さんも
……恵美さん。やっぱり僕は苦手だ。
あの人、何考えているか本当に読めないんだよなぁ。
「違うって。お母さんが無理矢理持たしただけで、泊まらないって。ちょっと1時間ぐらいしたら帰るよ。本当だよ! でも、今帰ったらお母さん納得しないっていうか……」
「いいよ。入りなよ」
「え?」
僕がすんなりOK出したことに、御堂は目を見開いて、「本当にいいの?」と訴えかけてくる。
「ちょっとだけ、何だろ? ならいいよ。別にそんな目鯨立てて怒る事でもないし」
「う、うん。じゃあ……おじゃましまーす。久しぶりだぁ…」
やった、と小声でガッツポーズしているのが聞こえてきたが、僕は聞こえてないふりをした。
★☆★
「巧、食生活どうなっているの? カップ麺とか冷凍食品ばっかりじゃん。大丈夫? 学校でもコンビニ弁当しか食べているの見てないし」
「勝手に冷蔵庫を漁るな。それに余計なお世話だ。放っておいてくれ。関係ないだろ」
来て早々、御堂は廊下を突き進み、台所の冷蔵庫に直行した。
中を開け、およそ健康的であるとは言えない僕の食生活に苦言を呈してきたが、そんな事は言われなくたって僕だって分かっている。
まだ冷蔵庫を漁り続けている御堂を冷蔵庫から引き離して、閉めようとしたが、「ダメ。まだ見るから閉めないでよね」と言って、閉めさせてくれない。
学校でもそうだが、こうなると意地でも聞く耳を一切持たない。
一方的に、自分の言いたいことを吐き出すように捲し立てる。
その前には、必ず。
――ホラ、来た。
御堂は、息をスゥーと吸い込んで、
「後ね、関係ないことなんかないからね! こんな生活してたら、今は良くてもいつかぜーーったいに身体壊すよ? そんなんでいいの? その時になって後悔しても遅いんだからね?」
「生憎、僕は御堂と違って、健康オタクじゃないんだ。後悔なんかしない」
本心だ。
今更、わざわざ手間の込んだ料理なんて、やる気にならないし、やる必要もない。
「……バカ。もう知らない」
「知らなくていい。……僕は部屋に戻るから。帰るまで居ていいけど、帰る時はリビングの電気消しておいて。電気代がもったいないから」
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