2.ベネットとお買い物。
「あ、あの! 本当に良いのですか!? こ、こんなこと――」
「買い出しの手伝いくらいで、大げさだなぁ。ベネットは」
「で、でも! その……」
二人で街を歩いていると、何やらベネットが真っ赤になりながら言う。
どうしたのかと思いながら首を傾げるが、口ごもってしまった少女から答えは得られそうになかった。というわけで、深く考えないことに決定。
ボクは鼻歌交じりに、中間層の街をキョロキョロと見回す。
「えっと、買うのは食料と――」
そして、指折りながら確認をする。
今日はベネットの家の必要物資を買い出しにきたのだ。
ガンヅさんは諸事情で来られない、とのことなので、結果的にボクとベネットの二人きり。なにか世間話をしようとするのだが、彼女は決まって小さくなった。
そんなわけだから、ボクはアレコレと買い物をして荷物を運ぶ。
そのたびにベネットは感謝を口にするが、どうしてそこまで畏まるのか、皆目見当がつかなかった。とりあえず、買うものは買ったな……。
「さて、思ったより早く済んだね。どうしよっか!」
「え、あ……。そ、そうですね……」
ひとまず、王都の中央にある広場に移動。
長椅子に二人で腰掛けて、ボンヤリと空を見上げてみる。雲一つないそこに、太陽が煌めいていた。隣に目をやれば、相も変わらずこじんまりとした女の子。モジモジとして落ち着かないのか、視線を色々なところに泳がせていた。
「…………あ」
――と、その時だった。
ボクの目に、一つのお店が飛び込んできたのは。
「ベネット、少し時間良いかな?」
「ほへ……?」
荷物を抱えて立ち上がり、ボクは呆けた表情のベネットの手を取る。
そして、有無も言わさずに歩き始めるのだった。
◆
「あ、あの……。このお店って!」
「うん、女性服のお店だね」
そうして、辿り着いたのは可愛らしい衣服の並ぶお店である。
女性服専門のここにきた理由は一つ。ベネットの服装が、気になったからだった。年頃の女の子であるにもかかわらず、彼女は着飾ることをしない。
冒険者稼業で得たお金は食費と貯金に回しているらしいし、自分よりも周囲を優先している様子だった。
そんなわけだから――。
「あの、すみません。この子に似合う服を見繕っていただけませんか?」
「はい、分かりました!」
「え、あの! アインさん!?」
ボクは、そそくさと店員さんに声をかける。
するとベネットはまたも、何も言う暇なく店の奥へと。ボクはそれを見送って、一つゆっくりと頷いた。これでいい、これで良いのだ。
「うん! あとは、待つだけかな!」
「お客様、よろしいですか?」
「ん?」
ボクはそう思って腕を組んでいた。
しかし、そこへ一人の店員さんが近づいてくる。そして、
「見たところ、お客様も磨けば光る原石とお察し致します」
「へ……?」
何やら、不穏な気配がした。
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