2.ベネットとお買い物。







「あ、あの! 本当に良いのですか!? こ、こんなこと――」

「買い出しの手伝いくらいで、大げさだなぁ。ベネットは」

「で、でも! その……」



 二人で街を歩いていると、何やらベネットが真っ赤になりながら言う。

 どうしたのかと思いながら首を傾げるが、口ごもってしまった少女から答えは得られそうになかった。というわけで、深く考えないことに決定。

 ボクは鼻歌交じりに、中間層の街をキョロキョロと見回す。


「えっと、買うのは食料と――」


 そして、指折りながら確認をする。

 今日はベネットの家の必要物資を買い出しにきたのだ。

 ガンヅさんは諸事情で来られない、とのことなので、結果的にボクとベネットの二人きり。なにか世間話をしようとするのだが、彼女は決まって小さくなった。


 そんなわけだから、ボクはアレコレと買い物をして荷物を運ぶ。

 そのたびにベネットは感謝を口にするが、どうしてそこまで畏まるのか、皆目見当がつかなかった。とりあえず、買うものは買ったな……。



「さて、思ったより早く済んだね。どうしよっか!」

「え、あ……。そ、そうですね……」



 ひとまず、王都の中央にある広場に移動。

 長椅子に二人で腰掛けて、ボンヤリと空を見上げてみる。雲一つないそこに、太陽が煌めいていた。隣に目をやれば、相も変わらずこじんまりとした女の子。モジモジとして落ち着かないのか、視線を色々なところに泳がせていた。



「…………あ」



 ――と、その時だった。

 ボクの目に、一つのお店が飛び込んできたのは。



「ベネット、少し時間良いかな?」

「ほへ……?」



 荷物を抱えて立ち上がり、ボクは呆けた表情のベネットの手を取る。

 そして、有無も言わさずに歩き始めるのだった。







「あ、あの……。このお店って!」

「うん、女性服のお店だね」



 そうして、辿り着いたのは可愛らしい衣服の並ぶお店である。

 女性服専門のここにきた理由は一つ。ベネットの服装が、気になったからだった。年頃の女の子であるにもかかわらず、彼女は着飾ることをしない。

 冒険者稼業で得たお金は食費と貯金に回しているらしいし、自分よりも周囲を優先している様子だった。


 そんなわけだから――。


「あの、すみません。この子に似合う服を見繕っていただけませんか?」

「はい、分かりました!」

「え、あの! アインさん!?」



 ボクは、そそくさと店員さんに声をかける。

 するとベネットはまたも、何も言う暇なく店の奥へと。ボクはそれを見送って、一つゆっくりと頷いた。これでいい、これで良いのだ。



「うん! あとは、待つだけかな!」

「お客様、よろしいですか?」

「ん?」



 ボクはそう思って腕を組んでいた。

 しかし、そこへ一人の店員さんが近づいてくる。そして、



「見たところ、お客様も磨けば光る原石とお察し致します」

「へ……?」







 何やら、不穏な気配がした。




 

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