2.嫌われ者は成績最下位。
「あ、あの……。こんな豪華な食事、良いのでしょうか?」
「ん、パーティー結成祝いだから、良いと思うよ?」
少女――ベネットと共に、ボクはギルドに併設されている酒場にやってきていた。今日の戦果であるドラゴン二体。その魔素の欠片を売却し、そのお金でお祝いをすることにしたのだ。
しかしベネットは、どこか困惑したように視線を泳がせる。
「あ、あたし、こんな食事初めてなので……」
そして、そうポツリ。
ボクは納得して、こう少女に言った。
「遠慮しなくていいよ。ボクたち、もう友達なんだから」
「友、達……?」
「そ、友達」
こちらの言葉に、小首を傾げるベネット。
だがすぐに、どこか嬉しそうに瞳を輝かせてこう返事をした。
「あ、ありがとうございます!」
年相応に明るい表情で。
フォークとナイフを手に取って、大きな口で食事を頬張る。
「どう、おいしい?」
「は、はい!」
そんな彼女を見て、ボクは自然と微笑んでしまう。
まるで故郷の妹を見ているようで、懐かしい気持ちになったのだ。今ごろどうしているのだろう、と考えていると、ベネットが不意にこう訊いてきた。
「あの、アインさんはどうして冒険者に?」
「ん、えーっと……」
純真無垢な表情で。
ボクは思わず言葉を詰まらせて、しかし素直に白状した。
◆
「そんな、ヒドイです!」
ボクが学園で受けた仕打ちを聞いて、ベネットは憤慨した。
テーブルを叩きながら立ち上がる。そんな彼女の様子を見て、ボクは思わず苦笑いをしながら答えるのだった。
「いや、きっとボクにも落ち度があったんだよ。そうでないと――」
「そんなはずないです! だって、アインさん良い人ですから!!」
「――あ、ありがとう?」
しかし、それを遮るようにして。
少女は力強くそう言った。思わず苦笑い。
とりあえず座るように促すと、彼女は頬を膨らせ、こう口にした。
「きっと、アインさんの才能に嫉妬したんですね」――と。
ボクはそれを聞いて、首を左右に振った。
「それはないよ。だって――」
そして、否定の理由を告げる。
「ボク、魔法学園の成績――最下位だったから」
◆
「それじゃ、また明日!」
「今日はありがとうございました!」
アインとそう言葉を交わして別れ、ベネットは夜の街を歩き始めた。
そして夜空を見上げながら思い浮かべるのは、ダンジョンでの出来事。圧倒的な力で、強力な魔物であるドラゴンを倒したアイン。
彼の後姿を思い出し、少しだけ頬を赤らめた。
「かっこよかった、なぁ……」
そして同時に、彼への憧れを漏らす。
自分も駆け出しながら冒険者だ。しかし、あのような実力を持った人物を、ベネットは知らなかった。だから、改めて首を傾げる。
どうして――。
「アインさんの力は、認められなかったのかな」――と。
少女は考え込む。
しかし、その答えはちっとも出てこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます