競輪の神様と非実在の競輪予想師・スペシャル 並行世界で勝負する競輪GP編

鉄弾

第1話 あれ?このパターンって・・・?もしや・・・?

 十一月下旬。ニュースを賑わせていた紅葉の話題も目にすることが少なくなる時期。いよいよ師走がやってくる。十一月下旬に開催される競輪祭GⅠが終了すれば、その年の競輪GPを走るメンバーが決まる。

 一年に六回開催されるGⅠレース。全日本選抜、日本選手権競輪、高松宮記念杯、オールスター競輪、寛仁親王牌、競輪祭。この各GⅠの優勝者六名と賞金ランキングが上位の三名。都合、九名が競輪GPへの切符を手にする。その九名が翌年の競輪界最上ランク・S級S班として認定されるのである。


 時刻は二十三時を過ぎようとしていた。静所アリサは勤務先の飲食店を離れて、自宅への帰路に就く。

 アリサは立川市内に住む飲食店アルバイト従業員の魔女。今年、二十五歳。愛車は、ホンダのシビック・タイプR。趣味は競輪観戦。そんな彼女の勤務先は、立川市内のステーキハウス。オーナーは元競輪選手で、競輪ファンという理由だけで学生時代からアルバイトをしていた。


 今、住んでいるアパートから、勤務先までは徒歩で通う。愛車のシビックは通勤に使用しない。二十歳のお祝いに母から買ってもらったシビック。悪戯されたり、盗難されたりすると困るので、通勤には使用していない。もっとも、アパートから勤務先までは歩いて通える範囲内だが。

 夜遅くに女性が一人で歩くのも危険な気がするが、そこは魔法使いのアリサである。彼女の身柄を拘束するには、英国海兵隊が一個連隊必要になるだろう。そんじょ其処らの変質者では到底勝てないので、そんな心配をアリサ自身がしていなかった。


 夜道を行くアリサ。まだ、初雪にはならないだろうが、通勤の防寒対策は万全にしている。それでも、今夜はここ数日の中では一番寒い夜のような気がした。フワッと向かい風がアリサの顔を撫でる。

「寒いわね・・・」と身を縮めるアリサ。

 夕飯は勤務先での賄いで済ました。あとは帰宅して、遅めの入浴。そして、暖かいベッドで就寝。これに限る。

「早く帰ろう・・・」

 歩くテンポを速くしようとしたときだ。不意に足を止めるアリサ。前方、街灯が当たらない場所に何かの気配を感じたのだ。

 誰かいる・・・。アリサはそちらを凝視した。

「誰?」

 暗闇に問いかけるアリサ。すると、そこから一人の老紳士が姿を現す。


「アンタ・・・、何でここに?」

 街灯の下まで来た老紳士。アリサには見覚えのある男性だった。

「久しいな、小娘よ」

 人を舐めたような口ぶりは変わっていない。人違いをしようもない。アリサの目の前に、競輪の神様が現れたのだ。


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