第12話

あともう少しだけ、そう何回も自分に言い訳をしていたら何時間もいた。

店のはずなのにお客は誰一人来ないから集中が途切れない、不意に近くを誰かが通った気配がした。その正体はサリーだった。

「あれ、サリーどこ行くの」

「ちょっとお買い物、気にせずに絵描いてていいよ」

「うん、じゃあもうちょっと続けてるね」

気を取り直して絵を仕上げようとすると、サリーのお気に入りの財布が視界に入って来た。サリーは財布を忘れていたのだ。

「届けに行かないとサリー困っちゃうよね」

サリーは店出たばっかりだ。追いかければ追いつくだろう、薄い上着とサリーの財布を掴んで飛び出した。

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